No.686 傾聴

2023.12.18 Monday 09:00

みなさんは、『グリーフケア』という言葉をご存じですか?

『グリーフ』とは、「喪失による悲嘆」を意味し、その『ケア』として、「大切な存在をなくした人が喪失に適応するための過程を促進し、喪失によるさまざまな問題を軽減するために行われる援助」のことを指します。

当社では、多くの相続手続、ならびに相続税申告等のお手伝いをさせていただいていますが、ときに、遺族の方の心情や言動を理解することができず、担当者が心理的に辛く苦しい思いをすることが少なくありません。

今回、遺族の方の心情をより一層理解しようと、当該テーマに関わる専門家のお一人である一般社団法人 日本グリーフケアギフト協会 代表理事 加藤美千代さんをお招きし、所内研修を実施しました。

お話によると、遺族によくみられる“通常”の反応として、以下のものがあるそうです。

□感情面の反応:抑うつ/絶望/悲しみ/落胆/不安/恐怖/罪悪感/自責の念/怒り/敵意/いらだち/孤独感/思慕/切望

□身体面の反応:食欲不振/睡眠障害/活力の喪失・消耗/故人の症状に似た身体愁訴/免疫力の低下/病気にかかりやすくなる

□行動面の反応:動揺/緊張/落ち着かない/過活動(活動に過剰に打込む)/探索行動/涙を流す/社会的な引きこもり

□認知面の反応:故人を想うことへの没頭/自尊心の低下/自己非難/無力感/絶望感/記憶力や集中力の低下

出典:坂口幸弘氏『増補版 悲嘆学入門』(昭和堂 2022)より講師抜粋

この説明を受けた職員は、「最初からイライラされていて怖いことがある」「突然怒り出されて戸惑った」「何をお聴きしても黙り込んでしまわれる」「何度お願いしても書類が揃わない」などの“通常”に見聞きする言動の理由がわかり、大きく頷きながら聴いていました、

今回の研修では、このような状態にある遺族の方々に対して、どのような接し方をするとよかを、具体的に教えていただきました。聴講した職員は、今後の対応の方向性を見出すことができ、少し安心できたようです。

詳細はまた月例会でお伝えしたいと思いますが、最大のポイントは、上記の傾向をきちんと理解した上で、“積極的な傾聴”をすることだそうです。

ポイントは、「話を遮らない」「相手の言葉を黙って待つ」「逃げずにそこにいる」ことで、加えて、「自分には何もできなくて申し訳ない」という謙虚さが必要なのだとか。

「解決を目指すと逆効果になることが多い」とのことで、私が最も気を付けなければならないことだと感じました。

実は、この研修を受けた2日後に義父が亡くなりました。妻は今、気を張って手続等に奔走していますが、もしかすると、遺族としての“通常”の反応が出てくるかもしれません。

また、配偶者を亡くした場合はより顕著に表れ、かつ「死の受容」までに通常2年はかかるとのこと。義母も含め、急がず、焦らず、じっくりと寄り添っていきたいと思います。