No.780 承継

先日、千年経営研究会恒例の研修旅行がありました。今年は安政元年(1854年)創業の茶商、宇治市の株式会社 中村藤𠮷本店にお伺いさせていただき、六代目当主の代表取締役会長 中村藤𠮷様のお話をお聞きすることができました。

お話の内容は、これまで当会にて皆さんにお伝えしてきたエッセンスが丸ごと詰まったもので、私たちが研究してきたことに間違いなかったと確信できるものでした。

特に秀逸だったのは、

「承継とは、今までやってきたことを再解釈して、未来を再構築すること」

との言葉。“再解釈”という認識に大いに共感すると共に、事業承継を語る際の定番キーワードにさせていただこうと思いました。

また、虎屋さんの言葉として紹介された

「変えてはいけないことはない。ただ忘れてはいけないことがある」

との言葉も、実に味わいのある言葉でした。その忘れてはならないものとして中村会長が挙げられたのが“祖業”。そして、「初代から受け継がれる品質のこだわり」と続けられました。

ここに円滑な事業承継の本質があるのだと思います。

その会長が会社を継がれたのが40歳の時。それまで商売のやり方で衝突ばかりしていたとのことでしたが、譲られた後、先代は何も口出しをされなかったとのこと。

「口を出されないプレッシャーは大きかった。でも認めて欲しかった。認めてもらうためには頑張らんとしょうがない。最後は数字。マイナスでも自信をもって説明できるようにやってきた」

これもまた理想の承継の姿だと思います。

後日、「何で40歳だったのか?」と尋ねられたときの先代の答えは、

「40歳なら失敗しても誰も笑わん。50過ぎて失敗したら笑いもんや。」
「40代は一番脂が乗り切ってる。何でもやれる」

だったそうです。

そしてご自身もご長男が40歳になられたときに譲られた。

「36歳を過ぎたらいつでもOK」「一番ダメなのは“老-老承継”」とお伝えしてきたことの裏付けにもなりました。

ほかにもたくさんの知恵をいただきました。ぜひ月例会にお運びください。より深い話をさせていただきます。