No.741 責任
先日、業績が悪化しているという飲食店の社長からの相談を受けました。
わずか10数年で10件を超える店をもち、かなり羽振りの良い生活をしていたようですが、コロナ禍で3店舗にまで縮小。ここ数年で1億円を超える債務超過となってしまったとのこと。
現在は銀行が支援してくれているようで、すぐに何とかなるということはないようですが、問題は原価率が悪化していること。以前は28%だったものが、今は35%まで上がってしまっていて、結果として赤字体質になっているのだと言います。
その主たる理由は、従業員の原材料の持ち出し。店舗数が10店舗を超えたところから現場から離れ、店長任せにしていたところ、徐々に原価率が上昇。原因がつかめないまま、それでも利益が出ていたので、根本的な改善策を打たずにいたのだとか。
ところがコロナ禍で業績が悪化する上に、さらに上がる原価率にしびれを切らして現場に入り込んだところ、その実態を初めてつかんだのだそうです。それは全店舗に及び、なおかつそれを指摘してもまったく悪気が感じられず、それどころか不貞腐れるばかり。「どうしたらよいでしょうか」という相談でした。
皆さんは既に分かっておられると思いますが、この原因は、すべてトップである彼にあります。
「現場に任せている」という声はよく聞きますが、これは「任せている」のではなく「放置している」のであり、トップマネジメントとしての責任放棄、職務怠慢に他なりません。
彼には、まずは現場巡回を徹底すると共に、創業時の思い、お客様やお店に対する思い、そしてお店がよくなることが従業員にとってどんな喜びをもたらすのかを改めて言語化して、何度も何度も伝えることを指導しました。
結果として、何割かの従業員は辞めてしまうかもしれません。それでも「そういう従業員にしてしまったのは自分である」ことを自覚し、伝え続けていかなければなりません。
中には、心から反省し、「この社長と一緒によい店を作っていきたい」を思ってくれる従業員も出て来ることでしょう。それらの人と共に改革を進めていくことこそが、業績向上につながっていくものだと確信します。
従業員に向かっていたベクトルが自分に向けられたことに、当初は不満な顔をしていた彼ですが、最後には心から反省し、新たな行動をとっていくことを誓っていただきました。
お店に何度か顔を出し、変化を楽しみに眺めてみたいと思います。