「千年」バックナンバー No.601~674

No.601 波長

1000nen

2022/04/11 09:00:00

「彼は間違ってます」「どうやったら変えてあげることができますか?」

よくある質問です。

もちろん、「その通り」と思える内容もありますから、その場合は、具体的な対処法をアドバイスさせていただきます。

ただ、それとは別に考えておかなければならないことがあります。それは“波長”です。

そもそも、波長が合ってなければ、そういう人と出会うことはないでしょう。さらには、同じ人に会い、同じ言動に触れたとしても、気になる人とそうでない人がいます。「気になった」ということは、その人、その言動と「波長が合っている」といえます。

周波数を合わせなければ、見たいテレビは見えず、聴きたいラジオを聴くことができないのと同じです。

要するに、そういう人と出会い、その言動が気になるということは、

「自分の中に、同じような問題を抱えているのではないか?」

「その人、その言動を通じて、気づかなければならない問題があるのではないか?」

と疑う必要がある、ということです。

もちろん、まったく同じであることはないでしょう。しかし、表面的には違っていても、根っこは同じ。

この疑問は、意外に当たります。要するにその人は、その問題に気づくために目の前に現れ、その言動をしてくれた、そう考えることが必要なのです。

特に「大嫌い!」と思える人や言動こそ、その可能性が高いものです。

人に対して「間違ってる」と感じたら、「自分にも変えるべき点はないだろうか?」と疑ってみましょう。自分をよりよく変えられるヒントに気づくことができるかもしれません。


No.602 感性

1000nen

2022/04/18 09:00:00

先週、当名南コンサルティングネットワーク全体の「中間検討会」なるイベントが開催されました。

ネットワークを構成するすべての法人が9月決算ですので、この4月が下半期の始まりです。そこで、上半期の振り返りをするとともに、今後の取り組みのおさらいをした上で、各法人の代表がその内容を発表するのです。

年初に立てた計画については、毎月その実践状況を確認し、計画通りの内容については引き続き、そうでないものについては改善策をうつことによって、目標を達成し続けるようにしているのですが、やはり、一定時点で全体を振り返る機会をもつことは大切です。

日々は、立てた計画の確からしさを信じて実践していくのですが、状況は刻々と変化していきます。よほどの大きな変化であれば、その時々に気づくことができますが、徐々に変わっていくような内容であれば、ときに見逃してしまうことがあります。

また、月々においては部門ごとに進捗状況をチェックすることが多いものですが、渦中にいると、その変化には気づきにくいものです。

そこで、ある一定時点において、全社的な計画の進捗と、今後の展開の確認をすることは、とても大切なのです。

このとき大切なのは、単に計画通りいっているかどうかを検証するだけではなく、その前提となる環境予測や経営判断に間違いがないかを確認することです。

ときに、「計画通りに進んではいるけれど、なんだかおかしい」と感じることがあります。この感性はとても大切で、そのようなときには、多少時間はかかっても、全体像の見直しから行わなければなりません。

計画は、計画通り行う中で、その確からしさを確認し続けることが大切なのです。

ぜひ月々に加え、一定期間ごとに計画の進捗状況の確認を行うことによって、経営者としての感性を磨き続けていただきたいと思います。


No.603 三残し

1000nen

2022/04/25 09:00:00

先日、久しぶりに親子二代が同席する、生前対策の打ち合わせの現場に同席しました。

70歳になる現社長と奥様、40代の後継者の三人が同席され、社長が持たれている財産を、どのように相続していくかの話し合いがされる場です。

実は、先代の相続の際、後継者兄弟3人に株や土地が分散されており、かつ社長も「できれば子供に均等に持たせてやりたい」とおっしゃいます。

奥様も後継者も大反対。もちろん、私も「あり得ない」と思いながら、三人の話に耳を傾けていました。

いろいろお聴きする中でわかってきたのは、社長が問題を先送りしようとしている姿でした。「俺が死んだら、お前たちでよく話し合って決めればいい」との言葉に、譲る者がもつべき責任から逃げようとする気持ちが集約されていました。

先日、ちょうど倫理研究所の先生からお聴きしたお話がありました。その話とは「“三残し”のない、悔いのない人生を送りなさい」。三残しとは、「やり残し」「言い残し」「思い残し」の3つです。まさにこの社長は、人生をかけて「やり残し」をしようとされている。

社長には、「事業の用に供する財産は後継者に残し、かつ、財産の分け方で“争族”が起こらないようにするのが、譲る者の最大の責任」とお伝えした上で、本の紹介をさせていただきました。多分、読まれるのは奥様と後継者だけだと思いますが・・・。

先生の話には続きがありました。それは、「今日残す人は、明日も残す。クセだから」。ドキリとしました。

私も改めて“三残し”をしていないかを考えながら、日々を過ごしていきたいと思います。


No.604 真実

1000nen

2022/05/09 09:00:00

先日、人生で初めて、プロフィール用の写真を、プロのカメラマンの方に撮っていただきました。

撮影はものの3分程度。子供の七五三などのときを思い出しながら想像していた時間のおよそ1/10で、少々驚いたのですが、「こんなに短時間で使える写真が撮れる人はそんなにいないですよ」と、お褒めの言葉をいただき、ちょっと嬉しく思いました。よほど素材がよかったのかもしれません(笑)。

それ以上に驚いたのが、修正の技術です。こちらも5分とかからず、しわを消したり、白髪を黒くしたり、はみ出したお肉を閉じ込めたり・・・。「笑えない人の口角をあげたり、目尻を下げたりすることもできるんですよ」とのこと。「それは既に別人なのでは?」と思いながらも、人の手によって、どんどん表情を変えていく修正画面を見ながら、驚きっぱなしの時間でした。

同時に思ったのは、「与えられる情報は、そのままでは信じることができない時代になってしまったのかもしれない」ということ。このところフェイクニュース(虚偽の情報でつくられたニュース)が問題となっていますが、まさに、その作成の現場に立ち会ったような気持ちでした。

そういう時代だからこそ私たちは、これまでの常識や経験にとらわれず、真実を見極める目を磨いていかなければならないと感じました。なぜならば、このようなフェイクがまかり通るのは、情報を受け取る側の、「こういう情報を与えれば、こういう行動を起こす」という特性が利用されているからにほかなりません。

一方で、結局のところ真実は、たとえば人となりは、その人の行動から見極めていくしかありません。「目に映るものが信じられない時代であっても、目に映るものからしか見極められない」ということです。よって、意思決定を委ねられている私たち経営者・管理者は、より注意深く見極めていこうという姿勢が、何より大切です。

今回のことを通じて私は、心の色眼鏡を外し、素直な心で目の前の事々をとらえ、正しい判断をしていく力を磨いていきたいと思いました。


No.605 極意

1000nen

2022/05/16 09:00:00

先日、「以前、亀井さんが契約された会社のサポートができていないので、連絡を取って連れて行って欲しい」との依頼を受け、7年ぶりに社長にお電話をさせていただきました。ところがなんと、昨年10月に亡くなられたとのこと。とても驚くと共に、不義理をしてきたことに大変申し訳なく思いました。

コロナ禍でもあり、本当に近しい方々しかご連絡されていなかったとのことで、逆にお詫びをいただいた上で、跡を継がれたご子息との面談を取り次いでいただきました。

「ちょっと行ってくる」くらいの感覚で手術を受けられたのち、その際に入り込んだと思われる細菌に侵され、あっという間に亡くなってしまったとのこと。東京の同業他社に修行に出られていたご子息は、「何の準備もないまま、家内と二人で敵陣に放り出された感じ」の状態で戻られたのだとか。

実家には年に数回戻られていたものの、5年前に新築された社屋も「引っ越しの時初めて見た」ほど、会社に関しては何の引継ぎもなかったそう。「父とは考え方もかなり違っていたので、ぶつからないよう、経営の話はほとんどしてなかった」とのことですから、この半年間のご苦労は、大変なものがあったと思います。

「引退するまでは好きにやってもらって、そのあとゆっくり自分のやりたいようにしていけばいいと思っていた」との話に、先代にちゃんと“千年経営の王道”の話をしておくべきだったと、さらに後悔の念が募りました。

一方で、ご自身のこだわりがかなり強く、いろいろご提案させていただいても、なかなか受け入れられなかった先代に比べ、ご子息は非常に柔軟に私どもの話を受け入れていただくことができ、新たなご提案もさせていただくことになりました。

「これで、先代の叡智が加わっていたら、鬼に金棒だったに違いない」と思われ、失われた引継ぎ期間をできるだけ埋めさせていただけるようにしていきたいと感じました。

人の命は人知で測れるものではありません。よって、予測できないそのときがいつ来てもよいように、きちんと引継ぎの準備をしていかなければなりません。今回の出来事は、この当たり前のことが、あまりにも理解されていない現実の証左であり、私たち千年経営研究会の意義を、改めて問われているのだと感じています。

私たちが当たり前にしていることを、世の経営者・後継者の方々にとっても当たり前にしていただけるよう、努力をしていく肚括りしました。どうぞ皆さんも、多くの会社、ならびにそこに関わるすべての人たちの幸せのため、私たちが学んでいる千年経営の極意を伝えていっていただければと思います。


No.606 明るさ

1000nen

2022/05/23 09:00:00

先週、名古屋市南区倫理法人会主催の講演会が開催されました。おふたりの講師に登壇いただいたのですが、そのうちのおひとりがとてもインパクトのあるお話でしたので、皆さんにも少し御裾分けしたいと思います。

その講演のテーマは、「苦難に見初められた男~倒産がどうした!不渡りがなんだ!~」で、講師は、東京の大田区議会議員で、株式会社 日本自動車流通機構 代表取締役 犬伏秀一氏。

氏は、3歳で両親が離婚、その後、育てくれたお父さんも10歳で死別。その後、叔父、そして生母に引き取られるも、折り合いが悪く、飛び出すように15歳で航空自衛隊に入隊。

その後、22歳で旅行会社を起業し、6店舗、年商20億円にまで発展させるも、同時多発テロの影響で借金3億円を抱えて倒産。

連帯保証人になっていた奥様と一緒に、自己破産を考えるも、奥様の「もうこれで、普通の人間ではなくなってしまうのね」の一言で、一念発起。毎月2万円ずつ、300年月賦で返済するという無茶なリスケを債権者に拝み倒し、借金を抱えたまま生きていくことを決意。現在、残り116年の9,800万円とのこと。

まさにジェットコースターのような波乱万丈の人生を面白おかしく語っていただき、1時間があっという間で、とても楽しく充実した時間を過ごさせていただきました。

今回の話を通じて、いろいろな学びと気づきをいただきましたが、お話に通底していたのが、「どんなことも、明るく前向きに受け入れる」ことでした。

もちろん、自分が原因で起こった事態であれば、自分事として受け止めることは当然ですが、どう考えても自分には原因がないと思われるようなことであれば、人のせいにし、状況や環境のせいにして、落胆、怒り、悲しみ、不平不満、妬み、恐れなどの負の感情が生まれるのは、致し方ないことかもしれません。

しかし、氏はおっしゃいます。「落ち込んでいて事態がよくなるんだったら、いくらでも落ち込みますよ。でもね、どんなに落ち込んでたってよくはならない。だったら明るく前向きに受けきってしまった方がいい」確かにその通りですね。

「3億円の借金を背負ったって、こんなに明るく生きていけるんだ」そんな安心感(?)をいただけたお話でした。

私たちにも、多くの苦難・災難が付きまといます。しかし、どんな状況にあっても、明るさと前向きさを失うことなく、力強く生きていきましょう!


No.607 確認

1000nen

2022/05/30 09:00:00

名古屋市南区倫理法人会では、私が会長を拝命して以降、毎月1回、新入会員さん向けのオリエンテーションを実施しています。

倫理法人会のことをあまりよくわからないまま入会された方も多いため、会の目的や取り組み内容、またはそれによって得られる成果や価値などについて、1時間ほどかけてお話させていただいています。

初回は私がインストラクターを務めさせていただきましたが、2回目以降は、会員さんにやっていただくこととし、毎回、開始3時間前に来ていただいて、みっちりとリハーサルを行っています。

先週の土曜日に今月分を行いましたが、私にとっても、とても充実した時間となっています。

今回は2回目の方でしたが、前回はなかった違和感を覚えたり、前回修正した内容の本質があまり理解されていなかったことが発覚したりと、「一度できるようになったら大丈夫」というわけにはいかないことを痛感しています。

一方で、私自身があいまいにしていたことや、見逃していた大切なことに気づかせていただくことも多く、今回インストラクターを務めたくれた会員さんや同席してくれた方も、「やってよかった」「来てよかった」と言ってくれていて、とても充実した時間となっています。

倫理には「役を知り、役に徹し、役を超えない」という不文律がありますが、もし「役を超えない」という認識がなければ、多分私がインストラクターをし続けていたと思います。そうしたら、今回のような気付きは、間違いなく得ることができていなかったでしょう。

改めて、人に任せていく価値を感じています。

一方で、一度任せたことであっても、ときにその内容を確認することの大切さも感じます。どんなにロングランを誇る公演でも、必ずリハーサルが行われるように、本業においては、プロとしての報酬をいただいている以上、常にベストな状態をキープし続けることが必要です。

□事前確認を怠ってはいないか?

□「任せた」が、単なる他人依存、責任放棄になっていないか?

□お客様に最高の喜びと満足を提供し続けることができているか?

など、改めて足元を見詰め直してみようと思います。

よろしければ皆さんも、一度覗きに来てください。お待ちしています。


No.608 祭り

1000nen

2022/06/06 09:00:00

このところ、各地でお祭りが再開しつつあるようです。

元来、お祭りは、「祀る(まつる)」を語源とし、神様に感謝することを目的としています。そして、「何に感謝するか」から転じて、「天下泰平」「五穀成就」「疫病退散」などをお祈りするためのものになっています。

よく考えてみれば、「疫病退散」がその目的の一つであるならば、本来、こういう時だからこそお祭りを行うべきといえるでしょう。いつの間にか、神様への感謝の気持ちを失い、お祭りを自分たちの楽しみのためだけ、観光収益の獲得のためだけに行ってきた結果が、お祭りの開催が悪いこととの認識が当たり前となり、自分たちの首を絞めてしまっているのかもしれません。

さて、昨日、私が住む名古屋市南区内田橋の商店街において、「第1回 まきわら祭り」なるイベントが開催されました。

“まきわら”とは、多数の提灯が半球状の屋根のような形につるされた神輿で、熱田まつりの際に奉納されるものです。目的はやはり「無病息災」。内田橋地域からも献灯する慣習があり、いつもであれば、地元の神輿が熱田神宮に担がれていくのですが、熱田まつりは開催されたものの、各地からの献灯はなし。

その心の隙間を埋めるため、かどうかはわかりませんが、商店街の若手経営者の皆さんが、商店街の活性化も目的の一つとして、企画・開催されたようです。

初めての試みということもあり、主催された方々は、とてもご苦労されたことと思います。その甲斐もあって、普段の数十倍、数百倍の人出があり、大成功だったと思います。関わられた方々に、心からお祝いと労いの気持ちをお伝えしたいと思います。

一方で、開催には否定的な意見もあったようです。現に、単に飲んで騒いでいる集団に、苦虫を潰したような顔をされている方も散見されました。「まきわら祭りはこんなんじゃない!」と思われた方も多くいたのだろうと思います。

この世の中の正しさは、70億通り以上あるといわれます。要するに、「人の数だけ正しさがある」ということです。何事においても、この認識に立って議論を尽くしていく必要があるということでしょう。

いずれにしろ、お祭りにおいても、改めてその意義と価値を見直す時期が来ているのかもしれません。


No.609 感恩

1000nen

2022/06/13 09:00:00

先日、4カ月に亘って開講された「第1回愛知県倫理経営実践塾」なる講座が終了しました。これは「倫理を学んで本当に経営に役に立つのか?」という、多くの方の疑問に答えるため、

愛知県倫理法人会の40周年記念事業として企画されたものです。

倫理を縦糸とした、倫理研究所・名誉研究員である川又久万先生と、経営を縦糸とした私のダブル講師で、かつ、倫理経営の実践により、多大な成果と社会貢献を現実のものとされた、当会の総会講演会にもご登壇いただいた、ブラックサンダーで有名な株式会社 有楽製菓の河合伴治会長をはじめとした、3名の強者経営者による体験報告を三本柱にした講座です。

初めての企画ということもあり、産みの苦しみを感じながらの開催でしたが、とても素晴らしいものに仕上がったのではないかと自負しています。詳しい内容につきましては、当会事務長の株式会社 ユニケミー 代表取締役 濱地清市さんに、ご自身の倫理体験と共に、ぜひお聴きください。

私も一講師として登壇していましたが、自分の出番が終われば一受講生。とても多くの気づきと学びをいただくことができました。

川又先生が4回に亘ってお伝えいただいたテーマは、“感恩”、すなわち、「恩を感じる」ことの大切さでした。

繰り返し、繰り返し、何度も何度も耳にするうちに、私の脳裏にある方の顔が浮かんできました。創業者・佐藤澄男の右腕であり、私を名南経営に採用してくださった前社長で私の元上司です。

3回目が終了した時点で、どうしても会ってお礼がしたいとの思いが募り、ご連絡させていただいたところ、快く食事に付き合ってくださいました。

思い起こせば、採用してくださったのもこの方、若くして主任・マナージャー・取締役と、重要な役割を与えてくださったのも、豊田支店や福岡事務所の立ち上げを任せてくださったのも、この方。どんなことがあっても、何があっても最後は許してくださり、今もこうして名南にいられるのもこの方のおかげ。プライベートでは仲人も引き受けてくださった。感謝してもし尽くせない方です。

しかし、この講座がなかったら、そのことを忘れ、不義理をし続けることになっていたのだと思います。「助かった!」これが今の素直な気持ちです。

こちらからお誘いしましたので、「食事代は私が」とお伝えしたら、怒られました(苦笑)。この関係は、変わることがないのだと思います。覚悟を決めて、お世話になり続けようと思います。まずは、定期的にお会いいただくことをお願いさせていただきました。

皆さんも、忘れてしまっている恩人はいらっしゃいませんか?これを機に、“感恩”の実践をしていただければと思います。


No.610 使命

1000nen

2022/06/20 09:00:00

先日、名古屋市南区倫理法人会のセミナーに、株式会社 ティア 代表取締役社長 冨安徳久氏をお招きし、お話をお伺いしました。

大学入学直前の春休みにアルバイトをした葬儀社での仕事に感動を覚え、山口県の葬儀会社に就職。お父様の病気のために愛知県に戻って、冠婚葬祭互助会に入社したものの、生活保護者の葬儀を切り捨てる会社に納得できずに独立を決意され、株式会社 ティアを設立。

業界で初めて葬儀価格を完全開示し、明瞭な価格体系を打ち出した結果、さまざまな嫌がらせを受けたものの、10年後には葬儀社として中部圏初の上場を実現。現在は、直営・フランチャイズ・葬儀相談サロンを合わせて137店舗を展開され、業界シェアNo1を目指されています。

そのような取り組みの中で、さまざまな学びと気づきがあったとのことで、今回の講話において、いくつかをご紹介いただきました。今回は、その一部をお裾分けしたいと思います。

□出会えた奇跡、すべてが意味のある出来事であると自覚する。

□仕事の原点は世の中をよくすること。納税できない経営者は、退場すべき。

□認知能力(学力)よりも、非認知能力(やり抜く力、自制心、誠実さ、好奇心など)を養う。

□何かの「せい」にした時点で経営者は終わり。社員が不幸になる。

□ビジネスの前に人生がある。社長の最大の責任は、社員を幸せにすること。

□教育は繰り返し。何度も、何度も同じ話をする。

□「やらなければならない」ことを、「やりたい」に変えるのがリーダーの役割。

いかがでしょうか?実務の中から絞り出された言葉に、深く納得できるお話ばかりでした。

今現在、冨安社長は、小・中・高校生を対象に、命の尊さや感謝の大切さを伝える「命の授業」と題した講演を、全国でお引き受けになっているとのこと。会社の枠を超え、社会のために自らできることに全力を尽くす。見習いたいことです。

私自身、千年続く経営のお手伝いに、精いっぱい務めさせていただこうと、改めて決心することができました。


No.611 もったいない

1000nen

2022/06/27 09:00:00

先日、ある会合で「もったいない」という言葉が話題に上がりました。

「もったいない」・・・日本語としてはかろうじて、「金に執着するケチな人間の口癖」として残ってはいるものの、その本質は、どんどん失われているように思います。

以前、環境分野で初のノーベル平和賞を受賞したケニア人女性、ワンガリ・マータイさんが、この「MOTTAINAI」を、世界共通語として広めることを提唱されたのですが、少なくとも、言葉の母国・わが日本では、一時の盛り上がりで終わってしまった感があります。

MOTTAIキャンペーンオフィシャルサイト:https://www.mottainai.info/jp/about/

私が子供のころ、茶碗についた米粒一つ食べ残すことはあり得ない話でした。私はあまり記憶がありませんが、ある参加者によると、「一粒のお米には、七人の神様がいる」などと言われていたそうです。

さらに、一粒のお米どころか、食後には茶碗にお茶を入れ、何も残らないように漬物できれいにぬぐい、お魚が出れば、茶碗に骨を入れ、残っている身をお茶できれいにそぎ落とし、飲み干すのが普通でした。今、それをやったら、「汚い」「貧乏くさい」といわれるのでしょう。

食事に限らず、衣服も、調度類も、生活のあらゆるものに対する「もったいない」行動は、以前は当たり前にあったように思います。残念ながら、その大切な文化が、今失われつつあることに、改めて悲しさと危機感を覚える時間となりました。

そんな思いで「もったいない」検索をしていたところ、先のマータイさんのメッセージが出てきましたので、共有させていただきたいと思います。

「私が初めて「もったいない」という日本語とその意味を知ったときに、国際社会への重要な意味が込められていると感じました。

私はまず、「もったいない」という言葉のルーツに感銘を受けました。

長年、私が取り組んできた環境問題への活動の中、合い言葉としてきた 「3R(リサイクル・リユース・リデュース)」ということを、たった一言で見事に言い表しているからです。

私たちの住む地球を破壊に追い込もうとしている深刻な驚異を減らすには、資源の無駄遣いを無くし、使える物は再利用し、それが出来ない物はリサイクルをすることしかありません。

この「3R」は実用的であり先見性のあるものです。

この「3R」は政府や企業だけではなく、皆様の地域や都道府県だけのものでもありません。誰もがこの当事者であり、私たち一人一人の生活の全てにあてはまるのです。

「私には何ができますか?」と聞かれたとき、いつもこのように話しています。

「一人一人に変化を起こす力がある」と私は言います。

「3R」こそ、次の世代へとつなぐ健全で美しい世界を作ることに欠かせないのです。」

【参考】日本記者クラブ会見動画:https://www.youtube.com/watch?v=B0miILksrEY

今一度、「もったいない」精神を呼び起こし、私たち一人ひとりができることは何かを考えてみる機会にしたいと思います。


No.612 ほめる

1000nen

2022/07/04 09:00:00

先週の名古屋市南区倫理法人会のモーニングセミナーにて、「日本ほめる達人協会」所属の講師の方のお話をお聴きしました。

以前、池上彰さんの番組で取り上げられ、ちょっとした話題になったのだそうです。そこでは、民事再生になったスカイマークを、わずか2年で定時運航率NO1の会社にした要因の一つになった取り組みとして紹介されたのだとか。

私たちもこれまで、「ほめる」ことの有効性はお伝えしてきたところです。しかし、これがなかなか難しい。

ほめるとは、通常、相手が正しいことをしたとき、あるいは立派なことをしたときに、それを認める行為と言われています。よって、正しくほめるためには、相手の行動が真に正しいものであるかどうかを見抜かなければなりません。要するに、ほめるとは、「価値判定行為」であり、ここにほめることの難しさがあります。

しかし、当該協会では、ほめることを、「目の前の人やモノ、または出来事などに“価値”を見つけ出すこと」と定義付けています。「ほめることの達人」通称“ほめ達”とは、『価値発見の達人』ということ。確かに、良し悪しの判定は難しくても、発見であればできそうですね!

また、見出すべき価値は、「感謝する」「認める」「共感する」「尊敬する」「労う」「応援する」という6つの視点でとらえると、見つかりやすくなるのだとか。その中でも最上級の視点は、「ありがとう」。この点については、私たちがこれまでお伝えしてきたことと変わりはありませんでした。

人は元々、「誰かに貢献したい」「感謝されたい」という感情をもっていますから、「ありがとう」には、ほめることと同等以上の価値があります。さらには、相手に何かを頼んで、相手がそのことをやってくれたら感謝する、というように、感謝できる状況を意図的に作ることができるのですから、最強です!

一方で、「どうやってほめたらいいかわからない」という声もよく耳にするところです。その疑問に対して、今回、“ほめ達”の口癖を教えていただきました。それは、「すごい!」「さすが!」「素晴らしい!」の3S。これに、「最高!」「素敵!」を加えたら5S。確かに、これを言われたら、気恥ずかしいながらも、ちょっと嬉しいですよね(笑)。

これまでも、できるだけほめようとは思ってはいたものの、なかなか実践できていない自分がいました。今回いただいたヒントをもとに、“ほめ達”になれるようにしていきたいと思います。


No.613 確認

1000nen

2022/07/11 09:00:00

先週、ある講座を初担当することになったという入社3年目の社員から、「指導して欲しい」という依頼を受け、リハーサルの場に立ち会うことになりました。

とりあえず通しでやってもらったのですが、途中であることに気づきました。ほどなくして福岡に単身赴任となり、関わりがまったくなくなっていましたので思い出すのに少し時間がかかったのですが、その講座は、10数年前に私が少しだけお手伝いをさせてもらった講座だったのです。

気づくのに時間がかかった理由は、もう一つありました。内容がだいぶ変わっていたからです。若手社員の登竜門的位置づけの講座であることもあり、彼女で講師は6人目。歴代の担当者たちが、自分の話しやすい表現方法に変えたり、自身の体験に基づく事例を加えたりしてきた結果、原型になかなか辿り着けなかったのです。

講座の内容を変更していくことは、決して悪いことではありません。目的を果たすために、より分かりやすく、より深く学んでいただけるのであれば、どんどんすべき取組みです。

しかし、若手が工夫を凝らした場合、得てして新しいことば(特に横文字)を取り入れたり、細かいところにこだわったりするなど、少々アカデミックになっていく傾向があります。

今回の新任講師が私にSOSを送ってきたのは、それに違和感を覚えながらも、自分では修正できずに悶々としていたところ、上司から「亀井さんに相談してみたら」との助け舟を出してもらったのだそうです。その上司も、私がその監修に関わっていたことは知りませんでしたが・・・

そこで、10数年前の原点に立ち返りつつ、お互いに考えを出し合いながら、内容の見直しを行いました。3時間を要しましたが、最後にはお互いすっきりして、数日後に見直された内容に基づくリハーサルを改めて行うことにしました。

今回の事例を通じて、2つの大切なことに気づかせてもらいました。

ひとつは、任せたことであっても、その内容が目的に合致し続けているか、適時適切に状況確認をしなければならない、ということです。

もうひとつは、10数年の間に積み上げられてきた事例や説明方法の中には、私自身、多くの学びがありました。若手からも教えてもらえるところはたくさんあり、素直に学び続けていかなければならないと、改めて気づかせてもらいました。

今回の件に限らず、任せたことであったとしても、ときにはその変化と進化を確認する価値と必要性を感じました。

みなさんも、任せた仕事を振り返り、ときにその変化と進化を確認してみてはいかがでしょうか。


No.614 発表

1000nen

2022/07/19 09:00:00

先週、愛知県倫理法人会主催の2つの研修の実践報告会がありました。ひとつは後継者対象の「第11期後継者倫理塾」、もうひとつが経営者対象の「第1期倫理経営実践塾」というものです。いずれも講師を務めさせていただきましたのでお招きを受け、楽しみにして参加させていただきました。

正直なところ、受講生によって実践状況には差がありましたが、発表の内容はいずれも素晴らしいものでした。

特に後継者倫理塾は、11回目ということもあってか、かなりの徹底ぶりで、多くのサポーターの支援を受けながら、当日の朝5時過ぎまで準備をしていたという塾生がいるほど熱がこもっていて、その溢れる思いと熱いメッセージから、涙が自然にこぼれ出てしまった発表もありました。

また、倫理経営実践塾には、我が千年経営研究会のメンバーもいたのですが、参加者のほとんどが「一番良かった」と言ってくださるほど、実践もその成果も大変素晴らしいもので、私も誇らしく、少し鼻が高くなりました。

いずれにしろ、活動の発表の場があるということは、とても大切なことだと、改めて感じさせてもらいました。

もし発表の場がなかったら、「いつまでにやらなければならない」もあいまいになりやすく、また、その内容も「この程度でいいか」になる可能性が否めません。発表というゴールが設定されているからこそ、満たされるレベルというものがあるのだと思います。

もちろん、夏休みの宿題のようなやっつけ仕事では、その価値は下がってしまいますが、その姿勢そのものが日頃の取り組みを反映しているものですから、結果も自ずと正比例するもの。やはり、内容の素晴らしい発表者ほど、多くの成果を獲得されていたように思います。

さらには、本人の成果のみならず、他者への影響も正比例しているものです。それがまた、多くの信頼を生み、さらなる成果を挙げていけるようになるのだと感じました、

通常の仕事においても、期限と期待レベルを明確に示すこと、そしてそれを公の場において明らかにすることは、とても大切な取り組みだと思います。

ぜひ皆さんの会社においても、該当する業務を棚卸し、然るべき発表・公表の場を検討されてはいかがでしょうか。


No.615 内因

1000nen

2022/07/25 09:00:00

お恥ずかしい話ですが、先日遂にコロナウィルスに感染してしまいました。発症日には熱が39.8度まで上がり、翌日は喘息のような症状が出て、大変苦しい思いをしましたが、昨日には、何とか常と変わらない状態になっています。

それより苦しかったのは、やはり多くの方にご迷惑をおかけすることになってしまったことです。訪問予定だったお客様5件、依頼を受けていたセミナー2件、参加予定の会議2件、企画していたいベント2件に穴をあけてしまいました。特に申し訳なかったのはセミナーを企画いただいた方々で、代役を立てられるのに、大変苦労されたことと思います。二度とあってはならないことと、大いに反省致しました。

もちろん、罹患する可能性は誰にでもあり、かつ、100%回避する術があるわけではありません。しかし今回の場合、明らかな原因がありました。それは、断酒。実は、ある願掛けから、その目標達成までの間、断酒をすることを決断し、2カ月弱、お酒を断っていました。

もちろん、断酒をしたことそのものが罹患の原因、というわけではありません。その心持ちに原因があったと感じています。

東洋医学に「内因」という考え方があります。疲れて体力が落ちていたり、悩みやイライラで心のバランスが崩れると、病気になりやすいといわれますが、まさにその内因が、コロナウィルスという「外因」を呼び込んでしまったと思うのです。

本来であれば、願掛けのための断酒なのですから、達成の日を思い、喜んで実践しなければなりませんでした。ところが私は、「早く飲みたい」「飲めない方が健康に悪い」などと、愚痴ばかり。心の免疫力を自ら低下させてしまっていたのです。「心と体は繋がっている」などと、偉そうなことを言っていたのに、ああ、情けない・・・

目標を定めたのも自分、断酒を決めたのも自分、別に途中でやめることもできたのにやめなかったのも自分。すべて自分の意思決定であるにもかかわらず、愚痴・ぼやき。それでは、心身のバランスが崩れても、当然といえば当然のことですね。

一方で、この罹患には、まだ明らかになっていない他の意味があるのかもしれません。療養期間は、しっかりと体を休めつつ、その意味を見出しながら、このような状況にしかできないことを考え、実践していこうと思います。

いずれにしろ、一度やると決めたことは、とことん喜んでやる!如何なることに対しても、心がけていきたいと思います。


No.616 信頼

1000nen

2022/08/01 09:00:00

先日、とある会社の設立20周年記念式典に参加してきました。

本来は、一昨年に創立20周年を祝う予定がコロナ禍で延期、気を取り直して昨年、本来の設立20周年を行う予定だったものが、これもコロナ禍で延期となり、今回、1年遅れでの設立の式典開催となったとのこと。

創業は、バブル崩壊の傷跡がまだ癒えぬ2000(平成12)年。誰からも「やめておけ」といわれる中での強硬創業。結果は、他の予言通り、また、多くの創業者が経験される「仕事がまったくない」状態で、「やることがなくて、毎日草むしりをしていました」とのこと。

また一時期は、「あと200万円の売上がなかったら倒産する」ほどの経営危機に見舞われました。そんな苦難を乗り越えての22年目の式典に、当時の社長をよく知る私としては、とても感慨深いものがありました。

同日、社長交代式も執り行われました。「どうしてもこの日にやりたかった」というその理由は、「新社長の誕生日だったから」とのこと。そんなこだわりに、譲る者の優しさを垣間見ることができました。

実は、創業社長は私と同じ年の57歳。ご存じの通り、創業社長は、自分が譲られたことも、譲ったこともありませんから、そのタイミングは遅くなるのが通例です。創業社長のこの若さでのバトンタッチは、稀なことだと思います。

なぜ、譲る気になったのか。それは、新社長に対する“信頼”にあったようです。

後継者は、生え抜きの社員さん。我が子であれば、なんだかんだといって、“血の繋がり”という、これ以上ない信頼関係があるものです。生まれてくれたそのときには間違いなくあった“無償の愛”が、年が経つにつれ、子に明確な意思が生じるにつれ、「あれが足りない」「これがだめだ」とダメな理由に尾ひれ背びれがついて、信頼から遠ざかってしまうのも、また事実であり、もったいない話ではありますが・・・

一方、親族でなければ、その持って生まれた信頼はありません。互いに創り上げていくしかないのです。その点、このお二人には、強烈な信頼関係が構築されているようです。

来賓の方によると、「あなたの一番好きなものは何?」との問いかけに、間髪入れずに「〇〇社長!」と、満面の笑みで答えられたとのこと。それほどの信頼と愛情が、譲る者に確信をもたらしたのだと思います。

また、そう言わせるだけの信頼が、譲る側にあったことは、間違いないことでしょう。

事業承継において最も大切な要素は、譲る者と継ぐ者の信頼である。そのことを強く認識できた一日となりました。


No.617 歴史

1000nen

2022/08/08 09:00:00

先週、私が所属する愛知県倫理法人会の設立40周年記念式典がありました。ちなみに、本来の40周年は昨年であったところ、コロナ禍によって1年延期しての開催でした。

今回式典に参加して、事業承継においてとても重要なことに、改めて気づかせていただきました。

私は、昭和20年9月3日に、創始者丸山敏雄先生が、戦後の荒廃した世の中を立て直すべく、純粋倫理に基づく社会教育活動を始められたこと、昭和55年に、「教育の最後の砦は職場」との信念から、千葉の経営者・滝口長太郎氏の熱烈な要請によって、経営者の自己革新を図ることを目的とした、倫理法人会が設立されたこと、そして、翌昭和56年、全国5番目の法人会として、愛知県倫理法人会がスタートしたこと、などは知っていました。

しかし、倫理活動の始まりから、愛知県倫理法人会設立までの間に、大変重要な歴史があったことについては、今回初めて知りました。

倫理運動が始まった日から2年半後の昭和23年3月、当時の碧海郡高岡村(現豊田市)出身の青年からの熱望により、当地で4日間、合計11回に及ぶ講演会が行われ、その内容に強く感銘を受けた人達によって、昭和25年に「朝の集い」が始められたこと、さらにその1年後に、愛知県で最初の倫理運動の拠点(碧海支部)が設立されたこと、などです。

このことを会社にあてはめれば、会社設立以降の歴史は知っているものの、それ設立に至るまでの歴史、たとえば創業者の生い立ちなどを知らなかった、ということだと思います。設立以降の話を知ったかぶりをして自慢げに口にしていたことを恥ずかしく思うと共に、「片手落ちだった」と、大いに反省させられました。

皆さんの会社ではいかがでしょうか。まずは、事業創業ないしは会社設立以降の歴史は明確にされていますか。さらには、創業者が事業を始められたいきさつ、それ以前の、創業者生誕以来の生い立ちなどは、明らかにされていますか。

私は、今回紐解かれた設立までの歩みの説明を受ける中で、改めてその大切さを痛感しました。

そしてもう一つ、事業創始の歴史には、必ず誰かの“熱い思い”があるものだ、ということにも思い至りました。

皆さんもこれを機に、自社の歴史を明らかにする取り組みをしてみてはいかがでしょうか。


No.618 満足

1000nen

2022/08/22 09:00:00

先日、ある経営者の方から相談を受けました。

「先のことが見えなくなってしまって・・・」という彼は、“今の延長”に将来を見出せず、「とりあえず、ホームページを閉鎖しました」とのこと。

彼との出会いは7年前。「この業界でNo1になります!」と言っていたころの輝きは、少々影を潜めていました。

事業の拡大を志向し、お客様の数を求めていた彼は、ここ数年、お客様の期待と、自分がやりたいことのギャップを感じ始めたとのこと。「それって、本当に当社がやるべきことなんだろうか?」お客様の数が増えれば増えるほど、その思いが大きくなってきたのだそうです。

いろいろ話をお聴きした上で、私は次のようにお話ししました。

「お客様と一口に言うけれど、中には今後もお付き合いしたいと思えるお客様はいるでしょ?(「たくさんいます」との返答を受けて)まずは、その人たちにどういう共通点があるか、考えてみて。そのうえで、そのお客様たちが本当に望んでいることは何で、その期待に応えるために自社が提供できる喜びや満足は何かを明確にすること」

数を増やすことに執着し、あらゆるお客様のすべての期待に応えていこうとした結果、「何をやっているのかわからない」状態に陥り、最終的には「文句や無理難題、不平不満ばかり口にする人に辟易」し、「もうやめたい」になってしまっていたようです。

経営資源に乏しい中小企業では、「何でもかんでも」は難しいもので、それを追求することは、疲弊につながりやすいものです。

もちろん、将来的にその世界を目指していくことを否定はしませんが、物事には順序・手順というものがあります。持たざる者は欲張らず、一定の絞り込みが必要なのです。

私の話を聴いた彼は、何か気づくところがあったようで、「ちょっとやってみたいことがあります!」と、かつての笑みを浮かべてくれました。

経営の基本は、お客様に喜びとご満足を提供することにあります。そのためにもまず、「お客様は誰か?」との問いに、明確に答えられるようにしなければなりません。そのうえで導き出される、「お客様に喜びと満足を提供するための自社の強みは何か?」その解が明確で、自分と社員さんの喜びや満足につながるものであれば、どんな状況下にあっても、探求し続けることができるものになるでしょう。

皆さんもこれを機に、その解をさらに鮮明にされてはいかがでしょうか?


No.619 成長

1000nen

2022/08/29 09:00:00

先日、4月入社の新入社員の育成担当をお願いしている中堅社員とのミーティングの時間を設けました。

最初のうちは、「成長意欲がない」「ミスや間違いに対して反省の気持ちがない」「気づかない(鈍感)」などなど、不平不満のオンパレード。小一時間ほど、「私たちのころは〇〇だったのに」という話で、大いに盛り上がっていました。

一通り、出尽くしたところで、「彼らがどう思っているかは別にして、やってもらわなければならないことは、やってもらわないといけない。どうしたらいいだろう?」と問いかけてみました。

多少「言い過ぎた」との思いもあったのか、それ以降は、前向きかつ実効的な改善策がいくつか提示され、「これをやれば、よくなるよね」というレベルの改善策がまとまりました。

それを受けて、次のような話をしました。

「私たちが他人を評価するのは、その人が取っている行動から。その行動を、どんな気持ちで取っているかはわからないし、気持ちを直接的に変えることも難しい。できることは、行動を変えることだけ。」

「ただ、行動を変えるといっても、「やれ!」と言って変わるものでもないし、やらされ感でやることは、常に見てないと続かない。だから、「やりたい!」と思ってもらえるようにすることが大切。」

「人がやる気になる要因はいくつかあるが、その中でも大切なのが“達成感”。何か指示・指導をするときは、達成感を得られるように意識をすること(実際に、提示された改善策は、達成感を得られるようなものでした。何となく気づいていたのでしょうね)」

「また、“承認欲求”も大きな要因。もちろん、何かよいことをした、または、成果を挙げたときは、大いに褒めてあげてくださいね。褒められたことは、忘れずやり続けてくれるものです。」

「ただ、何もなかったとしても、身を止め、見止めて、常に声をかけてあげるようにしてください。中でも一番大切なのは、「ありがとう」という声掛け。「ありがとう」には褒めると同等の力があるし、何か頼んで、やってくれたら「ありがとう」というように、こちらが意識して「ありがとう」と言える状況を作ることが出来るもの。「気付かない」「意識が低い」と嘆くのではなく、「〇〇してくれる?」と気軽に頼み、やってくれたら「ありがとう」。これを繰り返せば、いろいろな問題が解決すると思うよ。」

翌日、ミーティングに参加したひとりのメンバーから、次のようなメールが届きました。

「最近の私の行動を振り返ると反省する点が多々あり、だめだなと思っていたところだったので、すごくいいタイミングで受けられたなと嬉しく思います。」

人を育てる場と役割は、育てる側の成長の大きな機会となります。今回の内容が、その機会を最大限に活かすための参考になれば幸いです。


No.620 成長

1000nen

2022/08/29 09:00:00

先日、4月入社の新入社員の育成担当をお願いしている中堅社員とのミーティングの時間を設けました。

最初のうちは、「成長意欲がない」「ミスや間違いに対して反省の気持ちがない」「気づかない(鈍感)」などなど、不平不満のオンパレード。小一時間ほど、「私たちのころは〇〇だったのに」という話で、大いに盛り上がっていました。

一通り、出尽くしたところで、「彼らがどう思っているかは別にして、やってもらわなければならないことは、やってもらわないといけない。どうしたらいいだろう?」と問いかけてみました。

多少「言い過ぎた」との思いもあったのか、それ以降は、前向きかつ実効的な改善策がいくつか提示され、「これをやれば、よくなるよね」というレベルの改善策がまとまりました。

それを受けて、次のような話をしました。

「私たちが他人を評価するのは、その人が取っている行動から。その行動を、どんな気持ちで取っているかはわからないし、気持ちを直接的に変えることも難しい。できることは、行動を変えることだけ。」

「ただ、行動を変えるといっても、「やれ!」と言って変わるものでもないし、やらされ感でやることは、常に見てないと続かない。だから、「やりたい!」と思ってもらえるようにすることが大切。」

「人がやる気になる要因はいくつかあるが、その中でも大切なのが“達成感”。何か指示・指導をするときは、達成感を得られるように意識をすること(実際に、提示された改善策は、達成感を得られるようなものでした。何となく気づいていたのでしょうね)」

「また、“承認欲求”も大きな要因。もちろん、何かよいことをした、または、成果を挙げたときは、大いに褒めてあげてくださいね。褒められたことは、忘れずやり続けてくれるものです。」

「ただ、何もなかったとしても、身を止め、見止めて、常に声をかけてあげるようにしてください。中でも一番大切なのは、「ありがとう」という声掛け。「ありがとう」には褒めると同等の力があるし、何か頼んで、やってくれたら「ありがとう」というように、こちらが意識して「ありがとう」と言える状況を作ることが出来るもの。「気付かない」「意識が低い」と嘆くのではなく、「〇〇してくれる?」と気軽に頼み、やってくれたら「ありがとう」。これを繰り返せば、いろいろな問題が解決すると思うよ。」

翌日、ミーティングに参加したひとりのメンバーから、次のようなメールが届きました。

「最近の私の行動を振り返ると反省する点が多々あり、だめだなと思っていたところだったので、すごくいいタイミングで受けられたなと嬉しく思います。」

人を育てる場と役割は、育てる側の成長の大きな機会となります。今回の内容が、その機会を最大限に活かすための参考になれば幸いです。


No.621 成長

1000nen

2022/08/29 09:00:00

先日、4月入社の新入社員の育成担当をお願いしている中堅社員とのミーティングの時間を設けました。

最初のうちは、「成長意欲がない」「ミスや間違いに対して反省の気持ちがない」「気づかない(鈍感)」などなど、不平不満のオンパレード。小一時間ほど、「私たちのころは〇〇だったのに」という話で、大いに盛り上がっていました。

一通り、出尽くしたところで、「彼らがどう思っているかは別にして、やってもらわなければならないことは、やってもらわないといけない。どうしたらいいだろう?」と問いかけてみました。

多少「言い過ぎた」との思いもあったのか、それ以降は、前向きかつ実効的な改善策がいくつか提示され、「これをやれば、よくなるよね」というレベルの改善策がまとまりました。

それを受けて、次のような話をしました。

「私たちが他人を評価するのは、その人が取っている行動から。その行動を、どんな気持ちで取っているかはわからないし、気持ちを直接的に変えることも難しい。できることは、行動を変えることだけ。」

「ただ、行動を変えるといっても、「やれ!」と言って変わるものでもないし、やらされ感でやることは、常に見てないと続かない。だから、「やりたい!」と思ってもらえるようにすることが大切。」

「人がやる気になる要因はいくつかあるが、その中でも大切なのが“達成感”。何か指示・指導をするときは、達成感を得られるように意識をすること(実際に、提示された改善策は、達成感を得られるようなものでした。何となく気づいていたのでしょうね)」

「また、“承認欲求”も大きな要因。もちろん、何かよいことをした、または、成果を挙げたときは、大いに褒めてあげてくださいね。褒められたことは、忘れずやり続けてくれるものです。」

「ただ、何もなかったとしても、身を止め、見止めて、常に声をかけてあげるようにしてください。中でも一番大切なのは、「ありがとう」という声掛け。「ありがとう」には褒めると同等の力があるし、何か頼んで、やってくれたら「ありがとう」というように、こちらが意識して「ありがとう」と言える状況を作ることが出来るもの。「気付かない」「意識が低い」と嘆くのではなく、「〇〇してくれる?」と気軽に頼み、やってくれたら「ありがとう」。これを繰り返せば、いろいろな問題が解決すると思うよ。」

翌日、ミーティングに参加したひとりのメンバーから、次のようなメールが届きました。

「最近の私の行動を振り返ると反省する点が多々あり、だめだなと思っていたところだったので、すごくいいタイミングで受けられたなと嬉しく思います。」

人を育てる場と役割は、育てる側の成長の大きな機会となります。今回の内容が、その機会を最大限に活かすための参考になれば幸いです。


No.622 継

1000nen

2022/09/05 09:00:00

昨年9月に拝命した名古屋市南区倫理法人会の会長職も、今月から2期目に入りました。一時期は、会員の減少や、幹部との意見の相違など、いくつかの問題はありました。しかし、143社から135社にまで減った会員も150社までに増え、また、幹部は一人も欠けることなくその役割をまっとうしていただくことができ、何とか無事に乗り切ることができたと思います。

これも、支えていただいた多くの方々のおかげと、心から感謝しています。

そして、先月末には、新たな役職者を集めた方針発表、先日は会員向けの所信表明を行いました。その中で、前期の振り返りを行ったのですが、とても感慨深いものがありました。

正直私は不良会員で、行事にもほとんど参加していませんでしたから、運営の「う」の字もわからないまま会長になりました。それでも、会の問題だけはよく見えるものですから、「あるべき姿」に向けて、いろいろな提案をし、実行に移してきました。

その姿勢が、「俺が正しい」とばかりに現状を否定する、修行先から帰ってきたばかりの後継者のように映ってしまったのか、さまざまな確執が生まれました。

それでも根気よく、常に目的や原点に立ち返りつつ話し合いを続けてきた結果、このごろは、阿吽の呼吸も生まれてきたように思います。振り返りの中で、それまでの日々が思い出され、安堵と喜びの気持ちが湧いてきたのです。やはり、話し合いこそ、問題解決の鉄則なのだと痛感しています。

一方で、当会の会長には最大3年という任期があります。2期目に入り、そろそろ次代も見据えなければならなくなってきました。現に、「次は誰?」との声も漏れ聞こえてくるようになっています。

その問いに対して、今期方針の一環として、次のような視点をもって専任・育成していくことにしました。

□周りをあまねく照らす、底抜けの“明るさ” 

□周りを前向きにさせる、究極の“プラス発想”

□周りを納得・安心させる、人一倍の“勤勉さ”

この基準に照らし合わせたとき、数人の候補者が頭に浮かびます。それもまた、幸せなことだと思います。

しかし、まだまだ不足する点もありますから、この1年、気合を入れてご指導させていただきたいと思います。

みなさんの後継者に期待する要件は何ですか?一度、ご自身の思いを整理されてはいかがでしょうか?


No.623 儀式

1000nen

2022/09/12 09:00:00

先日、東京の税理士事務所からお誘いを受け、20周年記念パーティーに参加してきました。 

代表挨拶では、創業の歴史から、さまざまな苦労話や失敗談、そして、そこから学んだ成功秘話、さらには次の10年の意気込みまでを赤裸々に語っていただきました。そのバイタリティーと飽くなき成長意欲に、改めて、創業者の凄みを見せられた気がしました。

また、お話の中で、後継者をダブル代表にすること、それに合わせて法人名を変更することが発表されました。スタッフ以外の方は、誰もご存じなかったようで、驚きと感嘆の声の後、会場は万雷の拍手で満たされました。その反応にご満悦の笑顔にも、創業者らしさがにじみ出ているように感じました。

最後には、これまでついてきてくれたスタッフと、支えてくださった方々へ、心からの感謝の気持ちを伝えられ、周年の本来の目的をきちんと果たされました。椿山荘という、とても素晴らしい会場おいしい食事、そして、心づくしのもてなしも相まって、東京まで足を延ばした甲斐があったと、大満足で帰ってきました。

翌日は、9月からスタートした、愛知県倫理法人会の令和5年度役職者辞令交付式がありました。対象者は1,000人以上いるとのことですが、参加したのは、その4分の1ほど。県の役員は全員一人ひとりに、29ある単会(支部のようなもの)の役職者分は、その会長が代表して受け取ったものの、それでも50人以上に手渡しで辞令を交付されました。リハーサルや祝辞などを含めて、なんと約2時間!過ぎ去るのをひたすら待つ、卒業式の延々と続く祝辞の嵐と卒業証書授与を彷彿する時間を過ごさせていただきました。

しかし、終わってみれば、確かに、「認められた!」という承認欲求が満たされ、「やらなければならない!」という責任感が醸成されている感覚、時間に代えがたい価値を感じました。

効率が重視される現代において、このような“儀式”は、どんどん廃れ、なくなってしまっているように思います。

しかし、その価値や目的を吟味することなく、ただ面倒だとか、時代遅れだとかという認識で消えていくのは、とてももったいないことだと、改めて感じました。特に辞令交付式は、時間をかけてでも、ぜひ実施されることをおすすめ致します。

儀式には、それぞれに価値や目的があります。それを十二分に考え、必要なものは、どんなに面倒であっても継続していく、そういう姿勢が経営者には求められるのではないかと思います。


No.624 承継

1000nen

2022/09/20 09:00:00

先日、ご子息に会社を譲られた二代目社長のお話をお聴きしました。その内容は、「これ以上完璧な二代目はいない!」と言わざるを得ない内容でした。

その中でも、「二代目経営者として心すべきこと」という内容は、うなるしかないものでした。二代目に限らず、後継者の方にはぜひ知っておいていただきたい内容が詰まっていましたので、ご紹介させていただきたいと思います。

1.会社の無形資産で最大なものは、「創業者精神」である。

2.二代目の功績は、創業者の偉業の中に含まれる。

3.二代目は「守成の経営」に徹すべし。

4.継いだ三代目の良し悪しで、二代目の評価が決まる。

5.創業者を全面受容し、自らは謙虚に。

6.絶えず創業者と比較される運命。先輩・年長者から認知されねば舞台はない。

二代目風を吹かすな。周囲が二代目風を吹かす。

7.周囲の嫌がること、創業者の尻ふきは二代目の仕事。 

8.周囲は二代目の顔を見ながら、後ろの創業者の顔を見ている。

9.二代目は、創業者より良くて当たり前。実力で這い上がれ。

10.創業者の失敗事象の解決は、二代目だからこそできる。

11.責任をとることが出来る。特に社員の失敗の責任を取る。

12.世間は二代目の金を目当てに集まる。ひそかに二代目の失敗を待っている。

いかがですか?すごい内容ですよね!

中でも、これまで私があまりお伝えしていなかった内容について、おさらいしておきたいと思います。

「4」は、「後継者の良し悪しで、譲った者の評価が決まる」と読み替えてください。代々の経営者にこの意識があれば、好ましい事業承継を続けていくことができるでしょう。

「6」は、特に見事な表現だと思います。後継者のうちから経営者風を吹かそうとする人がいますが、よくよく気を付けなければいけません。周囲に担がれるようになって初めて経営者であることを、忘れてはなりません。

「12」も、本当にその通りだと思います。後継者は、周りからの良い評価は「先代のおかげ」「社員さんのおかげ」であることを忘れないようにしていただきたいと思います。

ぜひ、すべての内容を自らにあてはめながら、改めるべきを改める機会にしていただければと思います。


No.625 感恩

1000nen

2022/09/26 09:00:00

先日、ある友人から「会社を辞めたい」という相談を受けました。

以前から、社長との確執については耳にしていましたので、正直なところ、辞めること自体は「致し方なし」という感覚で、違和感はありませんでした。そもそも、「相談がある」と言われた時点で、そのことだろうと、思っていました。ただ、辞めた後の考えについては、承服しかねるものがありました。

彼曰く、「もうすっかり疲れ切ってしまった。妻に相談したところ、「遅いわ」と言われた。子供も手が離れ、「生活費くらいは私が何とかするから」と言ってくれている。自分も少しゆっくりしたい。余生は、無理をせず、食えるだけのお金をもらえる仕事に就きたい。」

私は、次のように伝えました。

「お前の苦労は知っている。だから、辞めること自体、止めはしない。ただ、今後の身の振り方については、承服しかねる。」

「確かにお前はこれまで頑張ってきた。それは認める。でも、「だから、もういい」わけではない。命ある限り、自分のなすべきこと、自分にしかできないことをやり切らないといけない。」

「社長という雲に隠れて、大事なものを見失ってはいないか?お世話になってきた人たち、自分にしかできなかった経験や出来事、そこから得られた気づきや学び。それを思い出せば、残りの人生で、自分が何をなすべきかが見えてくるはず。」

「少なくとも、亡くなったお父さんやお母さんが、誇りに思える息子であり続ける、そんな人生を送ることが大切だと、俺は思う。」

私に相談する時点で、自分の身の振り方が正しいものではないと思っていたのでしょう。当初は、混乱の渦の中にいたようですが、最後には、晴れやかな顔で、「少し考えてみる」と言ってくれました。

人は、困難に出会うと、そこから逃げることばかりを考えてしまうものです。そして、それを肯定する理由を探すのに一生懸命になり、凝り固まっていく。

そこから脱出するためには、何より「恩の自覚」が大切だと思います。人から受けた恩、境遇の恩、経験や出来事に対する恩。私たちは多くの恩に囲まれて生きています。

その恩を自覚すれば、必ずその恩に報いたいという気持ちが生じるものです。「自分が何をなすべきか」を考える際に、一番大切なアプローチだと思います。

みなさんも今一度、自分を取り巻く“恩”を見つめ直してみてはいかがでしょうか。


No.626 責任

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2022/10/03 09:00:00

先日、承継後1年になる新社長から、「管理職を降格させたい」という相談を受けました。その方は、社長就任と同時に彼自身が課長に任命した人。「信頼していたのに、期待外れだった」と言います。

直接の原因は、採用環境が厳しい中、やっと雇い入れた期待の新人を、半年で辞めさせてしまったこと。その原因調査をする中で、他の社員からの彼の評判を初めて耳にし、「このまま続けさせてはいけないと思った」のだとか。

「降格するのはいいけど、任命したあなたはどう責任を取るの?」という私の質問に黙り込む彼に、私は次のように続けました。

「まず、任命した責任を取らないといけない。ここでいう責任を取るとは、任命したその役職に相応しい人材に育てること。」

「一口に課長といっても、課長になりたてのひよっこ課長もいれば、課長らしい課長も、また、部長に近い課長もいる。その方は、まさにまだひよっこ。これから課長としての信頼を積み上げていく段階。期待外れも何もない。これから信頼するに値する課長に育てていく、それが任命したあなたの責任。降格させるのは、責任放棄に他ならない」

「信頼していたというが、それは信じていたのではなく、単に自分が楽をするために、頼ろうとしていただけじゃないか?だから、周りの声を聴かずに、自分の都合のよさそうな人間を役職に就け、そのくせ、ちょっとのことで降格なんて言葉が簡単に出る。その心根が変わらない限り、彼を降格させたとしても、第二、第三の彼を生み続けることになる」

「さらに、「周囲の声を聴いて判断した」というが、人の言葉ほどはかないものはない。昨日まで「あの人が課長なら私は辞めます」なんて言ってた人が、降格させた途端「うちの会社はすぐに降格させる冷たい会社」と言い出すもの。人の言葉を判断基準にしてはいけない。自分の五感で判断することが大切」

最後に、「まずは、どうやって育てるかを考えてみて」とお伝えしました。苦悶の表情を浮かべながら「わかりました」とはいうものの、納得できた感じではありませんでしたので、別れてから会長にご連絡をし、状況を説明させていただきました。まずは、新社長を育てる責任を十二分に感じておられる会長にお任せしようと思います。


No.627 後継

1000nen

2022/10/11 09:00:00

先日、人生3度目の「知覧特攻平和会館」(https://www.chiran-tokkou.jp/)に伺ってきました。

この場所は、今から15年前、私たち千年経営研究会が産声を上げたところであり、また10周年記念行事としても足を運んだ場所です。

今回は、「まだ一度も行ったことがない」「千年経営研究会の原点を知りたい」と熱望する、後継者会メンバーの企画・運営での訪問となりました。

3度目というものの、毎回新たな気づきを得られます。また、他のメンバーと一緒に行くことにより、自分では気づけなかったことを学ばせてもらうこともできます。特に、千年経営研究会メンバーと訪ねることの意味と価値を、今回も感じさせていただきました。

今回は、もう一つ嬉しいことがありました。それは、セットでお邪魔した「冨屋旅館」(https://www.chiran-tokkou.jp/)さんでも、きちんと事業承継がなされていたことです。

15年前に伺ったときには、「特攻の母」と言われた鳥濱トメさんのお孫さんのお嫁さん(三代目女将)に、トメさんから託された思いを語っていただいたのですが、今回はそのお子さんが、心を込めてお話してくださいました。

どこかにトメさんの面影を感じる女性で、話をお聴きするうちに、どんどん引き込まれていきました。また、「15分で」とお聞きしていたのですが、気づいてみれば30分近くもお話しくださいました。真剣に耳を傾けるメンバーに、思いが溢れたのだと思います。嬉しさがひとしおとなりました。

お話をお聴きする中で、

「この国を守るために、この地から飛び立った方々の思いに応えるために、私には何ができるだろうか?」

と、問い直すことができました。そして、その内容が“事業承継”にあるのだということに、改めて確信を得ることができました。この問いを命題として、また新たな時を刻んでいきたいと思います。

詳しくは次回お伝えしますが、今回は、1598年創業の薩摩焼宗家「沈壽官窯」(http://www.chin-jukan.co.jp/history.html)にもお伺いし、第十五代当主のお話もお聞きしてきました。とても有意義な2日間を過ごさせていただきました。

今回の研修旅行を企画・運営してくださった後継者会のメンバー、ならびに、二日間にわたり、マイクロバスを運転してくださった松野会長に、この場を借りて、心より感謝致します。ありがとうございました。


No.628 後継2

1000nen

2022/10/17 09:00:00

先週、ご紹介した知覧への研修旅行の際、薩摩焼沈壽官窯に伺い、第十五代当主にお話をお伺いしてきました。

ご当主は、当会の主旨と、今回の参加者のほとんどが後継者であることを踏まえて、冒頭、次のようなお話をしてくださいました。

「自分の子だと思うから苦しい」

「人の子だったら、「好きなようにすればいい」と言えるが、自分の子だと、心配のあまり、自分のいいような型にはめてしまおうとする」

「個性の違いを受け入れるのが、一番難しい」

“親の立場”からの話を聴くのは多分初めてのことで、驚きと共に、大きな気づきを得ることができたのではないかと思います。

また、ご自身が後継者の立場であったときのお話は、とても共感できることではなかったかと思います。それは、次のようなお話です。

「自分は、創業家の家に生まれ、それだけで後継者として会社に入った」

「社員は、数多ある職業の中から、他の仕事を捨てて、わざわざ選んでやってきた」

「自分は本当に焼き物が好きなのか、本気で悩み、進退に窮したことがあった」

「そんなとき、ある社員が、「自分たちは、30㎝前の物を見て仕事をしている。でも、お客様は、1間先から物を見る。あなたが離れたところから見ていてくれるから、僕たちは安心して仕事ができる」と言ってくれた」

「俺には俺の役割があるんだと、肚が座った」

この話は、後継者にとって、とても大切な内容だと思います。後継に対する迷いが消え、より一層の肚括りができたのではないかと思います。

そして最後に、

「経営は、夜道を明かりなしで歩いていくようなもの。自分を信じるしかない」

と締め括っていただきました。本当によいお話をしていただくことができました。

それ以外にも、たくさんお話をしていただきました。その内容については、月例会でお伝えしたいと思いますので、ぜひご参加ください。お待ちしています。


No.629 思い

1000nen

2022/10/24 09:00:00

先日、『松下政経塾』の元塾頭で、現在、志ネットワーク代表を務められている上甲晃先生のお話をお伺いしました。https://www.mskj.or.jp/

その中で、松下幸之助翁が、齢84歳にして、私財70億円を投じて松下政経塾を立ち上げられた際の「やむにやまれぬ」思いをお伺いしました。

それは、「日本の政治には経営がない」という、強烈な危機感に基づくものだったそうです。翁が考えられる経営とは、

①将来のあるべき姿を指し示す

②実現の段取りを考える

③その上に立って、今日から実現していく

ことであり、中でも日本の政治に決定的に欠けているのは①、すなわち「日本には国家百年の計がない」という認識だったとのこと。

「20世紀の老人が、自分が見届けることができない21世紀のことを本気になって考えていた」との説明に、廃れていく日本的な事業承継のありように危機感を感じ、千年経営研究会を立ち上げた者として、心打たれるものがありました。と同時に、自分の甘さ、至らなさを痛感させられました。

また、今回のお話の中で、ドキリとした言葉がありました。それは

「世を救おうと思うな。世の救いとなれ」

周囲を変えようとするのではなく、「暗闇の中の一本のろうそく」のように、自らの言動によって周囲を照らしていきなさい、というメッセージです。ともすると、私は前者になりがちですので、その点も留意していきたいと思います。

それ以外にも、「一流の人間は、決して弁解しない」「苦難も、見方を変えたらチャンスやで」「人生は、長所に足をすくわれやすい」「“難有”をありがたいにする」「聴く力は心の力」など、多くの学びと気づきをいただきました。

その内容は、また月例会でご紹介させていただきます。ぜひ多くの方のご参加をお待ちしています。


No.630 結果

1000nen

2022/10/31 09:00:00

先日、当千年経営研究会主催の伊勢神宮正式参拝に行って来ました。晴天にも恵まれ、大変素晴らしい一日となりました。

特に今回は、公益財団法人 修養団の寺岡賢先生に同伴いただき、丁寧なご説明を受けながら参拝させていただけたことは、とてもありがたいことでした。

伊勢神宮には何度も伺わせていただいていたのですが、寺岡先生から、これまで完全に見逃していた場所をご案内いただいたり、日本人としてのあるべき生き方と照らし合わせた解説をいただいたりと、とても充実した時間を過ごさせていただきました。

先日の「今日の学び」にて配信させていただいた、「形が心を正し 心が形を美しくする」は、寺岡先生から教えていただいた言葉です。これ以外にも、本当にたくさんの学びと気づきをいただくことができました。

とても素晴らしい企画でしたが、一つ残念なことがありました。それは、定員割れであったこと。伊勢神宮の正式参拝には、最低15名必要であることが事前にわかっていたにも関わらず、2名足りない状況での催行となってしまいました。そんな中、寺岡先生が、お宮の方お一人おひとりに頭を下げて回られる姿を見て、本当に申し訳ない気持ちになりました。

確かに、正式参拝といえども、伊勢神宮であれば、少し時間を作れば行けなくはない先です。さらに平日での開催に、正直私も、定員の話を聴いていなければ、理由をつけて休んでいたかもしれません。

それでも私たちは経営者の集まり。人にご迷惑をおかけするようなことがあってはなりません。中には、会社には「研修旅行と行ってくる」と伝えておきながら、実際には参加しなかったメンバーもいたとのこと。まさに経営者失格であり、蒔いた悪因が、どんな苦果をもたらすか、心配でなりません。

救いだったのは、散会の際、会長から「すべては私の責任。今後このようなことがないようにします」との言葉をもらえたことです。ぜひこれを学びとして、経営者の集まりに相応しい結果を出せるようにしていただければと思います。

定員の問題はありましたが、企画自体は、滅多なことでは経験できない、とても素晴らしいものでした。企画運営をしてくれたメンバーに心から感謝すると共に、会員諸氏においては、このような機会を損失することがないよう、今後の会の企画に対しては、万難を排して参加していただくことを、切に願います。


No.631 承継

1000nen

2022/11/07 09:00:00

先日、久しぶりに揉めに揉めている事業承継の現場に立つことになりました。

その会社では、創業社長にしては珍しく、早期に社長の座をご子息に譲られると共に、議決権株のすべてを同時に譲渡されていました。

ところが、譲って安心したのも束の間、コロナ禍で業績が悪化。それまではうまくいっていた親子関係にひびが入り始めました。

問題が起こるたびに意見が対立、それまでは、毎年家族旅行に行かれるほど仲の良かった関係は、わずか2年で崩壊してしまいました。

その原因は、親側の貪欲といえるほどの執着と、息子側の感謝の気持ちの欠如にあることだけは確かでしたが、正直なところ、そこまで悪化するような内容は見当たらず、両者の話をお聴きしても、真因はよくわかりませんでした。

ただ、「一旦こじれたら、ここまで酷いことになるのか」と、事業承継問題の根の深さと怖さを、まざまざと見せつけられたように思います。

一方で、これまで当会で研究してきた内容を実践さえしていれば、間違いなく起こらなかったことだけは、確信が持てました。やはり、当会の活動に間違いはなく、より一層、進めていく必要を痛感しました。

この会社も、多少時間はかかるでしょうが、ゆっくりと、でも確実に、当会の考えをお伝えし続け、素晴らしい事業承継の完結に向かっていただこうと思っています。

みなさんの周りにも、手助けが必要な会社はありませんか。もしあるようでしたら、ぜひ月例会にお呼びください。事業承継分野における社会貢献に邁進して参りましょう。


No.632 選考

1000nen

2022/11/14 09:00:00

先週、10数年ぶりに、新卒採用の二次選考に審査員として参加しました。当社の二次選考はグループワークとグループ面接です。

グループワークは、3~4名程度のグループに分かれ、一つの設問に対してメンバー全員で意見をまとめていくのを、10数名の審査委員がぐるぐる回りながら審査をする、という形式です。受験生からすると、かなり圧迫感のあるものだと思います。

それでも、短い時間の中で、それぞれの役割を演じながら、一つの回答を導き出そうとする取り組みは、私の好きなものであり、楽しみながら審査させていただきました。

グループワーク終了後のグループ面接では、私からは次の3つの質問をさせていただきました。

1.あなたは運がいい方だと思いますか?悪い方だと思いますか?また、そう感じる理由を教えてください。

これは、定番ですね。基本的には「運がいい」人が採用対象となります。「運が悪い」という人は、他責傾向にあると思っておいた方がいいでしょう。

2.あなたの身近な人を3人頭に浮かべてください。その方が「〇〇って、こういう子だよね」とあなたを評価するとしたら、どんな表現になると思いますか?

この質問によって、人間関係が見えてくるものです。その回答を深堀していくと、その人となりがよくわかります。

3.これまでの人生の中で、一番感謝している人は誰ですか?また、その理由を教えてください。

「尊敬する人」は、準備してきていることが多いものです。しかし、「感謝している人」は想定していないことが多く、本当の姿を垣間見ることができます。特に、完璧な受け答えをしている人を一番に指名するとよいでしょう。

また、この質問の回答は身内になることが多く、通常タブーとされている家庭環境について、自然と、かつ相手から話をしてくれるようになる質問でもあります。

もちろん、これだけでその人となりがわかるわけではありませんが、これまでの経験則の中で、有効性が高いものだと感じています。もしよろしければ参考にしてみてください。


No.633 朝礼

1000nen

2022/11/21 09:00:00

先週、愛知県倫理法人会主催の「朝礼基本マスター研修」なるものに参加してきました、とても分かりやすい内容で、朝礼の意義・目的にとても共感させてもらいました。今日は、その一部をご紹介したいと思います。

まず、朝礼の目的ですが、大きくは2つに整理されると思います。

□社員の精神的なバックボーンを築くと共に、社員一人ひとりの気を交流させ、風通しの良い職場を作ること。

□企業の心・意思を徹底し、人間力をさらに向上させ、社員一人ひとりが生きがいをもって朗らかに働ける職場を作ること。

正直なところ、これまでは、朝礼にそこまでの意義を感じていませんでしたから、まさに目から鱗の話でした。

今、改めて読み返してみても、もし朝礼にそれだけの意義を持たすことができたとしたら、とても素晴らしい一日のスタートになることは、間違いないと思います。

そして、そのような朝礼にするためのポイントとして、次の項目が示されました。

①仕事に向かう心身の準備

②情報の共有と徹底

③自社の目的・理念・未来の共有

④基本動作の習得と質的向上

 (爽やかな笑顔、元気で大きな声、美しい姿勢、機敏な動作など)

⑤人間性の向上(倫理では、『職場の教養』という読み物を輪読します)

⑥チームワークの向上・一体感の醸成

確かに、これだけのポイントを押さえた朝礼であるならば、先の目的は、間違いなく果たされるだろうと感じます。

私どもも、会社としては月1回、私が主催する有志による朝礼が週1回ありますが、今回の内容に照らし合わせれば、足りないことばかり。ぜひ見直しをしたいと思います。

いずれにしても、このような朝礼であれば、間違いなく組織の活性化につながると思います。皆さんも一度、朝礼の実施、ないしは見直しを検討してみてはいかがでしょうか。

実施、見直しにあたって、不明な点があるようでしたら、遠慮なくお声がけください。


No.634 理想

1000nen

2022/11/28 09:00:00

先日、何年かぶりに、『SIP研修』なるものの講師を務めさせていただきました。SIPとは「Self Innovation Program」の頭文字をとったもので、日本語訳をすれば『自己革新研修』となります。

具体的には、ご自身と、上司3名、部下3名に対して、組織のリーダーとして必要な5つの要素に関する事前アンケートを実施し、その回答結果のギャップから、参加者の日頃の問題行動を明らかにし、そのような行動を起こしている原因を突き止め、根本的な自己革新を試みようとする研修です。

なかなか言葉では説明することが難しいのですが、組織のリーダーとして相応しい言動を阻害している要因を見つけて、改善を促すことが目的です。そして、そのゴールは、ご自身が組織のリーダーとして幸せな人生を送ることに確信をもっていただくことにあります。

先週は、1泊2日の研修を2回、合計6名の方にご参加いただきましたが、みなさんすっきりした面持ちでお帰りいただくことができました。

そのうちのおひとりの問題行動の原因は、「ぬるま湯につかっていた」ことでした。

彼は、以前はとても厳しい上司の下、胃に穴が開くくらいの環境の中で、まさに獅子奮迅の活躍をされておられました。

その努力と実力が認められ、4年前に業績の悪化が著しい現在の職場に異動。3年間改革を断行し、とても素晴らしい職場に変革されました。アンケート結果でも、上司・部下のいずれからもとても高い評価を得られていました。

しかし、将来の話になると、なかなか具体的な内容が出てきません。「やるべきことが決まればやります」とは言うものの、やるべきことを提示しても、歯切れが悪い。

その点に着目して議論を進めたところ、先の原因が明らかになったのです。以前のとても厳しい環境から出て3年、自分らしい組織を作り上げて、安心し切ってしまっていたのです。

その点に気付いた彼は、「プライドをズタズタにされました」とはいうものの、実に爽やかな笑顔で、「プライドを取り戻し、会社一番の部門にします!」と力強く宣言していただけました。

“幸せ”とは、「理想とそうでない現実とのギャップが埋まった達成感や充足感」であるといわれますが、何よりも、「~したい」「~ありたい」「~なりたい」という理想が明確になっていることが必要です。彼の晴れやかな顔は、まさにご自身の理想が明確になった証左であったのだと思います。

人にはそれぞれ、自分の成長や幸せを阻害する要因を持っています。それに気づき、その阻害要因を排除した上で、あるべき姿を明確にしたとき、力強く前進することができるものです。

皆さんもぜひ、自分の成長阻害要因と理想の明確化に取り組まれることをおすすめします。


No.635 承継

1000nen

2022/12/05 09:00:00

先週、ある会社の承継問題の相談に乗ってきました。

24歳で創業されたその社長は、来年70歳。創業時から、「俺が認めた奴」を社長にすることを決められており、候補者は3名に絞られていました。しかし、どの方も「帯に短し たすきに長し」で決めきれず、選考基準は、「会社を守っていく覚悟がある奴」に変化していました。

実は、その中には、ご子息もいらっしゃいます。しかし、残念ながら第三候補。「天から授かった会社を、息子だからと言って渡せない」とおっしゃいます。

いろいろお聴きしていくと、お客様からは「ご子息が後を継がれるものと思っていた」「彼がなるなら支えていくよ」といった話も出ているとのこと。さらに、第一候補者からは、「〇〇さんがいいじゃないですか?」と、ご子息を推薦されたのだとか・・・

それに対して、「そんな甘い考えだからだめなんだ」と息巻く社長に、私は「社長にはもう一つ、天から授かったものがあるじゃないですか」とお伝えしました。もちろん、ご子息のことです。

「うまいことを言うねぇ~」と、打って変わって笑顔をなられた社長に、さらに次のようなお話をしました。

「優秀なNO2が優秀なNO1になれる保証はどこにもありませんが、優秀なNO2であることは保証されています。すなわち、ご子息を押した第一候補者が、ご子息にとっての最高のNO2になってくれるということが保証されているということです」

「他人が社長になったとしても、周囲が支えてくれる保証はありませんが、お客様がおっしゃっているように、「世話になった社長の息子なら助ける」と思ってくださっている方は多いのではないでしょうか」

一言一言にうなり声をあげながら聴かれていた社長も、最後には、「やっぱり息子しかないかなぁ~」とぼそり。ご自身も、何となくその解しかないことを感じておられたのでしょう。しかし、これまで自分が言ってきたことを覆すことができずに、苦しんでおられた。そんな社長にとって、私の話が免罪符になったのではないかと思います。

創業社長の事業承継では、よくあるケースです。しかし、適切なアドバイスをするひとが周りにいないために、出口のない迷路にはまり込んでしまうのです。このようなケースに、最適な解を示すのが、まさに私たち千年経営研究会の務めだと思います。

千年経営の極意を学び、全員が好ましい事業承継を実現し、苦しんでおられる方々を救って差し上げることができるようになって参りましょう!


No.636 他責

1000nen

2022/12/12 09:00:00

先日、ある新入社員から相談を受けました。「先輩によって指示が異なっていて、困っている」というものでした。

具体的には、ある人は「ここまでやって当たり前でしょ」と言うし、別の人は「それはあなたの仕事ではない」と怒られるのだそうです。よくある話だと思います。

そこで、どんな時にそういう状況が発生しやすいかをヒアリングしたところ、たとえば、先輩の仕事を手伝っていて、別の人のチェックを受ける際、「①チェックに出す」「②結果を受け取る」「③お客様に確認する」「④修正する」という一連の流れがあるのですが、「先輩によって、当たり前が違う」とのことでした。

確かに、先輩からすれば「私が担当者なんだから、チェックを出すのは当然私」と考えることもできますし、「あなたに任せたんだから、チェックに出すのも当然あなた」と考えることもできます。

また、同じ先輩であったとしても、期限が迫った仕事であれば「私がやる」になるでしょうし、ある程度時間があれば、「ちょっと任せてみようかな」となるかもしれません。

さらには、①~④で、その都度、どちらがやったほうがよいかが変わることもあるでしょう。

要するに、どちらも正解であり、そのときそのときで、役割を明確にすれば済む話です。

そこで、①~④の項目について、その都度、先輩がやるのか、自分が受け持つのかを明確にすることを習慣付けるように指導しました。

このような、「話せばわかる」ことで、仕事の接続がうまくいかないということは、何も新人だから発生するのではなく、誰との間でも起こる話です。

その根本には、“他責”の心があるのだと思います。先輩からすれば「それくらいのことがわからない新人が悪い」、新人からすれば「ちゃんと教えてくれない先輩が悪い」。

どのような内容であっても、人と人との間の接続不良においては、相手に対する“思いやりの心”が大切であり、かつ問題が起こったときには“自責”で考える習慣をつけることが大切です。今回の問題も、お互いにこれらの心があれば、起こらなかったことでしょう。

このようなことは、多かれ少なかれ、皆さんの会社にもあるものだと思います。現場に内在しているこのような接続不良を棚卸して、それぞれが思いやりと自責の心をもって、あるべき姿を明確にできるようにしていただければと思います。


No.637 能力

1000nen

2022/12/19 09:00:00

先日、ある方から質問を受けました。

「とても能力の高い社員がいるんだけど、ルールを守ってくれない。辞められても困るので、厳しくもできない。どうしたらいいのでしょうか?」

みなさんなら、どうお答えになりますか?

私は、次のようにお伝えしました。

「両立した先に、真に信頼され、称賛される人材になるのでしょうね。」

「人は、AorBで考える習慣があります。その方が楽だからです。それぞれの長所短所を考えれば済みますし、内容によっては、相手の間違いを指摘すれば済んでしまうからです。ある意味、“他責思考”といってもいいかもしれません。」

「でも私は、A&B、すなわち、相反するものを両立させる道を考えた先に理想が見えてくるのだと思います。今回の場合は、ルールを守りながら、活き活きと働き、能力を最大限に発揮してもらえる道を探る、ということです。」

「ちなみに、組織のルールが守れないのであれば、その組織にいてはいけないと思います。」

「その上で、ルールを守ることを厭う人が、ルールを守ってでもその組織で働きたいと思える組織にするのが、リーダーの役割だと思います。」

深く唸り声をあげながら数分後、「やっぱり、ルールは守らせなければなりませんね・・・」とつぶやかれ、「それでも辞めないようにするために、何ができるか、考えてみます。」と言って、帰って行かれました。

かのジャック・ウェルチは、「能力の高い人間は必要だ。ただし、理念が共有できている者に限る」と言っています。理念どころか、ルールも守れないようでは、論外です。その点は、揺るぎない信念をお持ちいただきたいと思います。

この悩みは、多くの企業で存在するものであるように思います。これを機に、ぜひ皆さんも、両立の道を考えてみていただければと思います。


No.638 後継者

1000nen

2022/12/26 09:00:00

先日、帝国データバンクから、「後継者不在率」が全国・全業種平均で57.2%になったとのデータが発表されました。

日本政策金融公庫の調査では、60歳以上の経営者のうち、50%超が将来的に廃業を予定していて、そのうち「後継者難」を理由とする廃業が約3割に迫るといいますから、この不在率の改善は、大変重要な課題であるといえるでしょう。

そんな中で、2018年に69.3%と、全国平均を上回る不在率だった三重県が、今年は30%を初めて切って29.4%となり、2年連続全国最少だったとのこと。

第2位が茨城県の42.7%であることを考えても、三重県の不在率の低さは、群を抜いているといえます。

これだけの成果を出している理由は、2017年に、県の外郭団体である県産業支援センターが、商工会、銀行や信用金庫などの窓口を一本化して、後継ぎ探しに取り組んでいるからとのこと。

愛知県や関西圏といった大きなマーケットに近いという地の利はあるものの、やるべきことをやりさえすれば、きちんとした成果が出せる課題であることがはっきりしたものと思います。

一方で、後継者の内訳は、同族承継が50%、社内昇格が28%、M&Aなどが17%と、同族承継の割合が少ない点が気になりますが、これも対策次第によって増やしていけることでしょう。

実は、全国的にも不在率は5年連続で改善しているとのこと。その理由はM&Aが浸透してきていることであり、2011年の調査以降、後継者候補は「子供」の割合が最も高い状態が続いてきたものが、今年初めて「非同族」が首位となったのだそうです。その点でも、三重県は頑張っている方だといえそうです。

いずれにしても、きちんとした手を打てば、改善できるテーマであることがはっきりしました。私たち千年経営研究会は、正しい事業承継が多くの企業で実現できるよう、これからも邁進して参りましょう。

これが、今年最後のコラムとなりました。ご精読ありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願い致します。よいお年をお迎えください。


No.639 干支

1000nen

2023/01/10 09:00:00

みなさん、新年明けましてお目出度うございます。旧年中は本コラムをご笑読いただき、ありがとうございました。今年もどうぞよろしくお願い致します。

本日は、本年初のコラムですので、例年通り、干支の解説をさせていただきます。

今年の干支は『癸卯(みずのと・う)』です。

『癸』は、「みず」の「と(弟・陰)」ですので、霧や露、または小川といった、静かで穏やかな大地を潤す恵みの水を意味します。また『癸』は、十干の最後にあたりますので、生命の終わりを意味すると共に、新たな生命の芽生えの意味を含んでいます。

『卯』は、左右に開いた門の象形で、すべてのものが冬の門から飛び出すことを意味します。また『卯』は、十二支の四番目で、草木が地面を覆うようになった状態、すなわち春の芽生え、草木の萌え出る様子を意味しています。

また、『癸』と『卯』の関係は、水が木を育みという「水生木」の“相生”と呼ばれる組み合わせで、『癸』が『卯』を補完し活かすという関係を意味しています。

これらのことから、「寒気が緩み、萌芽を促す」「厳冬が去り、春の兆しが訪れる」(歴史学者・村上瑞祥氏)年となりそうです。

もちろん、これまでの準備をきちんとされてきた方には、大きな芽が、そうでない方にはそれなりの芽となることは間違いないでしょうが、自社にはどんな芽が育っているのかを見極め、それを伸ばし、育てていく、そういう姿勢が必要です。

ぜひ皆さんも、萌え出る芽を見出し、育てていっていただければと思います。

みなさんの会社のますますのご発展を、心よりお祈り申し上げます。


No.640 朝礼

1000nen

2023/01/16 09:00:00

先日、半年前から朝礼を導入された会社の営業所に訪問してきました。

私の所属する倫理法人会では、毎週のモーニングセミナー開催前に朝礼を実施すると共に、各企業での朝礼の実施を推奨しています。

2年前に会員となったその営業所長は、ある問題から、組織全体に覇気がなくなってしまっていたことに危機感を覚えていました。

その状況を何とか打開したいと、倫理法人会に入会され、朝礼によってその場の雰囲気が激変することを実感された彼は、藁をもすがる気持ちで朝礼を始めたのだそうです。

その強い思いがあってのことでしょう。まだまだ磨きをかけられる部分はありましたが、押さえるべき点はきちんと押さえられ、私の評価では80点。わずか半年ながら、その内容はとても素晴らしいものでした。

そもそも朝礼は、企業の縮図であり、社風や会社の質などが端的に現れるものです。「始めた頃は酷かった」とのことでしたが、間違いなく良い社風が構築されつつあることを感じました。

朝礼は、職場の風通しを良くし、人間力をさらに向上させる大きな力を秘めています。また朝礼は、企業の心や意思を浸透させる場でもありますから、職場に精神的なバックボーンを築き、社員さん一人ひとりが生きがいをもって朗らかに働けるようにもなるものです。

「企業は人なり」と言われるように、そこで働く人の心が変わったとき、その効果は絶大なものとなります。

たとえば、10分の朝礼すら一所懸命にできない人が、まともな仕事ができるはずがありません。朝礼を教育の場と捉え、働く人々の人間性向上を図る場として、毎日繰り返し行うことにより、大きな効果があるものなのです。

いずれにしろ、もしまだ朝礼を導入されていないのであれば、活気あふれる職場をつくるためにも、一度検討されてはいかがでしょうか。


No.641 承継

1000nen

2023/01/23 09:00:00

去る1月13日、東京商工リサーチから2022年の後継者不在による『後継者難』倒産(負債1,000万円以上)が422件(前年比10.7%増)で、3年連続前年を上回ったことが報告されました。調査開始の2008年の1.8倍(234件)で、400件を超えたのは初めてのことだそうです。

その上で、代表者の高齢化(平均年齢2020年62.49歳→2021年62.77歳)と、後継者不在率の増加(2022年59.9%)が、事業継続の大きなリスクになっていると伝えています。

さらに、コロナ関連支援の下支えで抑制されていた倒産が、支援効果の希薄化と共に増え、2022年4月から12月まで9カ月連続で前年を上回りっているとのこと。後継者難倒産を後押しする原因になりかねません。

コロナ対応で右往左往し、十分な事業承継準備に手が回らないうちに、代表者に不測の事態が発生した場合、事業運営にも支障をきたし、破産を選択せざるを得なくなる可能性があるからです。

実際に要因別を見てみますと、代表者の「死亡」が52.8%(223件、前年比13.7%増)、「体調不良」が32.7%(138件、同14.0%増)、合計で85.5%を占めていますから、仮に後継者がいたとしても「間に合わなかった」ケースも十分考えられます。

そんな記事を目にして嘆息しているところで、一本の電話がかかってきました。声の主は72歳の現役社長。その内容は、「息子に譲るのをやめた。次の手について、相談に乗って欲しい」というものでした。

その理由は、我執からくる、とてつもなくつまらない内容。息子への不満に憤る的外れな発言を黙ってお聴きしながら、とりあえず一度お会いしてお話しすることになりました。

今回の記事を読みながら、改めて後継者が存在することそのもののありがたさを痛感しました。後継者がいるという幸福を自ら踏みにじることなく、さらに幸せな道を見出していけるような社会にしていきたい。そう強く感じた出来事でした。


No.642 傾聴

1000nen

2023/01/30 09:00:00

先日、ある企業の管理者研修の講師を務めてきました。

終了後、そのうちの一人の方から「お時間をいただけませんか?」と声を掛けられました。彼は、事前に行ったアンケート調査で、参加者12名中、部下からの評価が一番低い方でした。一方で、自己評価は、誰よりも高い・・・。

「自分は、誰よりも部下のことを考え、声掛けもしている。でも、部下が話を聴いてくれない。どうしたらよいかわからない」とのこと。

しかし、10分ほどお話した時点で、その理由が明確にわかりました。「人の話をまったく聴いていない」

私が話し始めると、私の話を理解しようとするのではなく、それに対してどう答えるかを考え、終わった瞬間に「でも」「しかし」などと、何でも否定から入り、その後、怒涛の如く、持論を展開する。

部下の方々の「話す気にもなれない」お気持ちと、アンケート結果の意味がよくわかりました。

彼には、「まずは、人の話を最後まで聴きなさい。トコトン聴いて、相手が何を言いたいのかを確認して、その上で言いたいことがあれば言う。そういう習慣をつけてください。」

「じゃあ、私が話しているときに相手が途中で話をしてきたら、止めてもいいんですね?」と、的外れな答えをする彼に、「もしそうだとしたら、あなたがまだ人の話を聴いていない証拠。部下は自分の鏡だから、部下はあなたと同じ行動をする。部下があなたの話を聴かないのは、あなたが部下の話を聴いていないから。もし部下が、途中で割り込んできたとしたら、まだあなたが途中で割り込む癖が治ってない証拠。部下を鏡として、自分のありようを確認してください。」

「部下が笑顔であなたの話を聴くようになってくれたとき、あなたが本当に人の話を聴けるようになった証です」

そう締め括ったのですが、どこまでわかってくれたか・・・。「とても大変な課題をいただいてしまいました」と、肩を落として帰っていく彼の背中を見ながら、“傾聴”の実践により、部下との深く温かい関係が構築できることを祈るばかりです。

水は低きに流れます。人間関係においても、上司の言動が、見た目は違っていたとしても、本質的な部分において、部下の言動に表れるものなのです。部下を鏡として、自分の何を変えなければいけないのかを考え続けなければなりません。

その中でも傾聴は、とても大切な要素だと思います。私も改めて部下の話を聴けているかどうかを振り返り、傾聴の実践をしていきたいと思います。


No.643 満足

1000nen

2023/02/06 09:00:00

現在当社では、NPSという指標を使った、『顧客満足度アンケート』を実施しています。

NPSとは、「ネット・プロモーター・スコア」の略で、お客様の自社や自社商品・サービスに対する“思い”を把握するための指標で、「企業やブランドに対してどれくらいの愛着や信頼があるか」を数値化したものです。

また、“顧客推奨度”とも言われるもので、質問の内容も、単なる満足度を問うものとは異なり、たとえば当社では、次のような表現になります。

「税理士法人名南経営を他の経営者にどの程度おすすめしたいと思いますか?

0点から10点でお答えください。(低い=0点 高い=10点)」

要する、紹介いただけるほどの満足を得ているかを問うものです。

毎月、20件程度のお客様にご協力をいただいているのですが、おかげさまで、平均値は「9」前後で推移しており、まずまずのご満足をいただいているようです。

一方で、中には厳しいご意見をいただける方もあります。実は、こちらの方が私としてはありがたいのです。

一般的に、「クレーム」は、お客様の不平・不満のように受け止められているようですが、その語源は「要求・要望」です。そして、きちんとその意思表示をしてくださるお客様は、決して多くはありません。特に私たちのように継続的にお付き合いいただくタイプの商売では、より一層「言いたくても言えない」のが通常です。だから、厳しいご指摘は、宝物といってもよいものなのです。

先日、あるものを購入した際、同じような質問を受ける機会がありました。ところが、接客してくださった方から、「このアンケートは、私たちの評価につながります。もしよろしければ高い点数をつけてください」と言われました。

これでは本末転倒で、何の意味もなしません。その会社の最大のミスは、このアンケートを、社員の評価に使おうとしたところにあります。要するに、主旨の履き違いが、無駄金を使う結果になってしまっているのです。

このような取り組みをする場合、何よりも大切なことは、

「お客様の本当のお気持ちをお聴きし、よりレベルの高いお客様満足を実現したい」

という姿勢にあります。

方法はいろいろありますが、皆さんの会社でも、そのような姿勢で、お客様の声をお聴きする機会を設けられることをおすすめします。


No.644 言葉

1000nen

2023/02/13 09:00:00

先週、名古屋市南区倫理法人会主催の「近江商人に学ぶ研修ツアー」に行って来ました。

近江八幡市のボランティアガイドさんのご案内で、古い街並みや、近江商人の商家の案内をしていただき、短いながらも、充実した時間を過ごさせていただきました。

その中で、私たち経営者が常に意識しなければならない言葉との出会いがありました。「売り手よし 買い手よし 世間よし」や「奢れる者は久しからず」「積善の家に必ず余慶あり」といった、よく耳にするものもありましたが、日頃あまり耳にしない内容もありましたので、皆さんにもお裾分けしたいと思います。

□互いに申し合わせ質素守るべく候事(市田清兵衛家)

□始末第一に商売を励む(中井源左衛門家)

□出精専一之事(松井久左衛門家)

□義を先にすれば、後に利は栄え、富を好とし、その徳を施せ(西川利右衛門家)

□人生は勤るにあり 勤は利の本なり よく勤めておのずから得るのは真の利なり

(中井源左衛門家)

□苦しいことをがまんして耐え忍ぶ 怒りをこらえて他人の過ちを許す

(小杉五郎右衛門家)

※参照:近江八幡市観光物産協会、三方よし研究所、東近江市博物館合同サイト

一番下の小杉五郎衛門家の逸話は、困難な時の経営の捉え方として参考になると思いますので、下記サイトに一度目を通してみてください。

さて、すべての「その通り」と思えるものばかりでしたが、その中でも、一番上の「互いに申し合わせ質素守るべく候事」を目にしたとき、近江商人でさえも、互いに申し合わせなければ、質素であることが守れないのかと、人の心の弱さを感じました。

私たち凡人は、やはり支え合うことが必要なのだと思います。そして、この千年経営研究会が、中堅・中小企業の心の支えとなる会としていかなければならないと、改めて感じました。これからも、切磋琢磨し、共に高め合っていきましょう。


No.645 対策

1000nen

2023/02/20 09:00:00

このところ、コロナやウクライナなどから発する現状から、どのような影響を受けられているかを知るために、決算を迎えるお客様の状況を、担当者から数件ずつヒアリングするようにしています。

やはり、材料費や燃料費などの値上がり、または採用難などによって、多大な影響を受ける会社が多いことがわかってきました。

一方で、確実に原価の額は増えているものの、原価率は下がっているという先も多くみられました。これは、経営努力による原価改善もさることながら、原価高騰以上の売価の値上げが進んでいることを意味しています。「比較的好意的に受け入れられている」という報告もありました。

もちろん、「値上げができなくて苦しんでいる」という先もあります。

ただ、話を聴いてみると、そのような先は「端から諦めている」傾向にあるようです。「どうせ言っても無理だから」や「ちょっと口にしてみたけど、嫌な顔をされた」などと、「交渉すらしていない会社も多いようです。

子供のころに鉄の鎖に繋がれていたゾウは、大きくなると、縄の足枷でさえ外そうとしないといいますが、まさにそのような状況にあるようです。

やはり経営者は、請求すべき金額を妥協なく要求する姿勢が必要だということを、改めて感じさせてもらいました。

また、残念な報告もありました。「自分の代で会社をたたむ」ことを既に決められているというものです。小規模な企業に多いのですが、ご子息がいるにも関わらず、「継がせるつもりはない」というのです。その理由は、「事業に魅力がないから」がほとんどでした。

これは、そのような考えをもたせてしまっている、私たち税理士事務所側にも問題があるのだと思います。既にその考え通りに進行してしまっている先については手遅れかもしれませんが、社長の年齢的にまだ挽回できる先について、どのような対策を講じるか、検討してみたいと思います。

皆さんの会社でも、改めて事業承継のありようを見つめ直してみてください。その上で、打つべき手は勇気をもって打ち続けていく。その必要性を強く感じている今日この頃です。


No.646 標準

1000nen

2023/02/27 09:00:00

先日、「業務マニュアルの作り方・育て方・使い方」というテーマのセミナーを受講しました(講師:株式会社 カレントカラー https://www.current-color.co.jp/index.html 代表取締役 𡈽方雅之氏)

これまで私がお話してきた内容と、基本的な考え方はほぼ同じでしたが、専業でやっておられるだけに、とても具体的で、わかりやすく、すぐに役立てること満載の内容でした。

特に共通していたのは、「使い続け、育て続けることが大切」という点です。私は“進化型マニュアル”と表現していますが、まさしくその通りだと思います。

この点について講師は、一般的なマニュアルは、作成者が作ったマニュアルを、無批判・無条件に作業者が従うことを求めるのに対し、業務マニュアルは、作業者自ら最新の業務内容やノウハウを記録し、日々の業務の中で使い続ける、いわゆる“生きたマニュアル”でなければならないと説きます。

講師は、業務マニュアルを

『標準業務のプロセスの、人間が関わる一連の作業手順を、誰でも実行できるように文書化したもの』

と定義付けていますが、中でも“標準”について、「自社にとって普通」なものであり、「会社に承認されている」ものと表現されていますから、標準が変われば、マニュアルを変えるのは当然のことです。

しかし一般的には、一度作られたマニュアルは、一度も見直されることなく、作業者個々人が手元のマニュアルに赤ペンを入れて、修正しながら使ってしまっています。そのようなものは、既に会社の標準ではなくなっている証であり、あくまでも個人のメモ帳であって、「マニュアルとは言えない」と断言されていました。

また、「誰を対象としたマニュアルかを明確にしなければならない」といいます。ここは、意外に明確でないことが多いのではないでしょうか。たとえば、新人対象に作っているとはいいながら、専門用語の羅列で、「読んでもわからない」状態のものもよく見られます。対象者は明確でも、対象者にとって役立つものではない。これではもうマニュアルの役割を果たしているとは言えません。

いずれにしろ、「マニュアルは進化させ続けるもの」という認識が必要です。

皆さんも改めて、棚に眠ってしまっているマニュアルを引っ張り出して、あるべき姿に修正してみてはいかがでしょうか。


No.647 取組

1000nen

2023/03/06 09:00:00

先日、「社内改革がうまくいっていない」という相談を受けました。「同業他社で成功している取り組みをそのままやっているが、なぜかうちではうまくいかない」というのです。

これは往々にしてあることです。何でもそうですが、会社にはそれぞれ事情というものがあります。人材も違えば、風土も違う。当然、同じことをしても、同じ結果になるとは限りません。

よくよく話を聞いてみると、取組内容そのものよりも、導入の仕方により大きな問題があるように思えました。それは、「他社が5年かけてじっくり作り上げてきたものを、一気に導入した」というのです。これでは、反発が出ても仕方がありません。

皆さんは、『イノベーター理論』をご存じでしょうか。それは「新しい商品やサービスに対する消費者の反応スピードには5つのタイプがある」というスタンフォード大学教授のエベレット・M・ロジャース氏が1962年に提唱した理論で、今でもマーケティング理論の一つとして活用されています。

ロジャース博士によれば、新商品や新サービスへの積極性によって、消費者は次のようなタイプに分類されるといいます(文末のパーセンテージは、その割合)。

①イノベーター(革新者):好奇心が強く、物の善し悪しよりも、新しいものを積極的に取り入れることを優先する(2.5%)。

②アーリーアダプター(初期採用者):イノベーターほどではないが、流行に敏感で、かつ自らの判断に従って購入の意思決定をする。他者の意思決定に対する影響力を持ち、特定の集団の意見形成の方向付けをする存在である(13.5%)。

③アーリーマジョリティ(前期追随者):慎重派ながら、比較的早期に購入の意思決定をする。新しいものを世の中に浸透させる役割を担う(34.0%)。

④レイトマジョリティ(後期追随者):本当に良いものであるという確信を持たない限り購入しない、懐疑的な存在である(34.0%)。

⑤ラガード(遅滞者):流行に関心がなく、心から「自分に必要だ」と思うものしか購入しない(16.0%)。

この理論は、社内で新しい取組みをしようとするときの社員さんの反応の仕方にも該当します。

要するに、まずは①ないしは②に該当する方からスモールスタートさせ、ある程度、確信が持てる状況になってきたところで③を巻き込み、完成が近づいてきたら④に浸透させていく、そういった建付けが必要ということです。だから他社は5年の歳月が必要だったのだと思います。

彼には、取り組みの見直しを提案しましたが、「もう導入してしまった。まだ十分にやり切ったと言えない状況で、変更するのはちょっと・・・」と言います。

成果が出ないとわかっていることを続けても、成果は出ません。私は「ときに朝令暮改も必要ですよ」とお伝えしました。

皆さんも、新しい取組みをされる際には、先の理論を参考にしてみてください。時間はかかるかもしれませんが、成果実現の可能性は、格段に上がることになると思います。


No.648 総会

1000nen

2023/03/13 09:00:00

先日、私が単会会長を務める倫理法人会の、東海・北陸地方7県92単会会長をはじめとした幹部191名が集い、各県会長による経過報告と、優れた活動をしている各県代表単会の事例報告がありました。

成果を挙げている会、残念ながら思うような結果が出ていない会などさまざまではありましたが、他の活動状況を知ることは、とても刺激的で、参考になる点が多くありました。

また、その前の週には、愛知県の中間報告会なるものが開催されました。ありがたいことに当会が最も優れた活動をしている会として事例報告をさせていただくと共に、7つある特別表彰の内、4つまでをいただくことができました。

そうはいっても、まだまだ未完成であり、その際に聞かせていただいた他単会のお話はとても参考になり、さらなるブラッシュアップをしていくことを、参加させていただいた幹部と共に共有することができました。

このように、互いに状況を伝え合い、学び合う場は、本当に大切だと思います。

私たち千年経営研究会も、来る3月25日(土)に総会を開催し、その場で各会の活動報告をしていただきます。私はこの時間がとっても大好きです!

私が福岡単身赴任以来、それまですべての地域会に毎月顔を出していたものが、各会持ち回りの月1回のみとなり、さらにはコロナ禍によってWEB開催のみとなりましたので、各会の活動状況を知る機会は、大きく減ってしまいました。

そのような状況の中でも、各会が工夫をしながら学びの場を作ってくれていることがとても嬉しく、その状況をお聴きすることがとても楽しみなのです。

当日は、私の講演も予定されています。昨年は「継ぐ者とモノ」に焦点を当ててお話ししましたが、今回は経営そのものにスポットを当てながら、事業承継上大切にすべきことをお伝えしたいと思っています。

ぜひ万障お繰り合わせの上、ご参加いただくようご案内致します。

多くの皆様とお会いできることを楽しみにしています。


No.649 評価

1000nen

2023/03/20 09:00:00

先日、ある講座で、『人事評価制度』についてのお話をさせていただきました。本日は、その一部をご紹介したいと思います。

多くの企業から、「人材の活性化と賃金の合理的な配分を実現したい」という声を聴きます。とても大切な視点ではありますが、多くの企業が、大事なことを忘れているように思います。

それは、「仕事の報酬は仕事そのもの」という前提です。

一生懸命に働いたとき、自ずと湧き上がる心からの喜び、その結果、何かを生み出し、何かを達成したときの充実感、その上に、お客様や周りの人たちから「ありがとう」と感謝の言葉をいただく感動以上の報酬はありません。

金銭としてもらえる給料や賞与などは、その本質的な報酬の上乗せ分といっても過言ではありません。

さらに、「仕事は、仕事ができる人に集まる」ものです。一生懸命に働いた結果、より一層やりがい、働きがいのある仕事をさせていただけるようになる、これ以上の評価は、他には決してありません。

 しかし、残念ながらいまだその域に達していない人にとって、仕事そのものが喜びや感動であることが理解できません。富士山に登ったことがない人に、「登頂の爽快さを感じなさい」というのが無理な注文であることと同じです。ですから、

□我が社は何をもってこの社会に貢献をしようとするのか

□その貢献に対して、社員にどのような役割と成果を求めるのか

□結果として、社員にどのような喜びや感動、または満足を感じてもらおうとしているのか

などを明確にしなければなりません。

すなわち、目指す山を明確にし、その登頂ルートを示し、そのときどきの到達地点を的確に指摘しながら、確実に登頂へと導き、その「喜び」「感動」「満足」を感じさせるのです。人事評価制度は、そのような前提に立って構築することが大切です。

これから制度つくりに着手されるのであれば、ぜひこの前提を忘れないでいただきたいと思います。


No.650 周年

1000nen

2023/03/27 09:00:00

先週の土曜日、千年経営研究会の令和4年度総会が開催されました。2008年にスタートした当会も、来期で15周年を迎えます。大変ありがたいことです。

総会時にもお伝えしましたが、この15年はとても順風満帆と言えるものではありませんでした。

まず、2011年に私が福岡単身赴任となり、それまで、岡崎・三好・名古屋・豊橋・瀬戸の5つの地域会に毎月お邪魔していたものが、月1回、持ち回りでの顔出しとなり、皆さんとお会いできる機会がグッと減ってしまいました。さらにコロナ禍により、その月1回の月例会もオンライン開催となりました。

単身赴任が決まった際、瀬戸会の閉会が決まったこともあり、当時は、会そのものの存続も難しいのではないかと思っていました。

それが15周年を迎えるまでになり、さまざまな事情がありながらも続けてきてくれたメンバーに、心より感謝しています。改めて、ありがとうございました。

実は、会の存在意義を問われるもう一つの事情がありました。当会の主題である事業承継問題と、会員から期待される内容のギャップが生じてきていたのです。それは、2008年の設立当初は後継者ばかりだったものが、現在では、ほとんどが経営者になっている、という状況の変化です。

本来、事業承継は常なるものであり、どの時期においても経営上重要な問題です。しかし実情は、バトンタッチの前後はその重要性が高まるものの、バトンを受けてから、そろそろ本気で渡すことを考えなければならなくなる時期までの間は、さほど大きな問題にはならないものです。

今回の総会でも、各会の活動報告がありましたが、その内容は少々寂しいものでした。しかしそれは、事業承継を主題にする当会において、次のバトンタッチまで少々時間を要する現役経営者の集まりという現状では、ある意味仕方がないことかもしれません。

しかし、継ぐべき会社を残すことができなければ、そもそも事業承継は絵に描いた餅にさえなりません。

15周年を迎えるにあたり、改めて会の活性化を図るため、事業承継問題が主題とは言えない現役経営者であっても、心底参加したいと思える会にブラッシュアップさせていきたいと思います。皆さんのご参加を、心よりお待ちしています。


No.651 地元

1000nen

2023/04/03 09:00:00

先日、岐阜県の瑞浪土岐倫理法人会で講師を務めてきました。

「名古屋からの講師」ということで、最初の内は、少々よそよそしさを感じていました。

しかし、自分自身が岐阜県八百津町の出身であること、その上、母の実家が瑞浪市で、叔母(母の姉)の嫁ぎ先、叔祖父(祖母の弟)の婿入り先が土岐市であることを伝えると、一気に和やかな雰囲気になりました。

また、講演終了後、「私の家の近くです」「〇〇さん、知ってます」などと、多くの方からお声掛けをいただきました。やはり“地縁”というものは、人間関係構築において、とても大切な要素であることを実感しました。

一方で、ランチェスター戦略では、弱者の戦略として、「地域No1」の必要性を説きます。すなわち、弱者である私たち中堅中小企業は、いきなり広域展開を図ろうとせず、地域を絞って、その中でのNo1を取りなさい、ということです。

よく考えてみれば、たとえば、一日の労働時間が10時間で、移動に1時間かかるお客様ばかりであれば、商談時間1時間を確保しようと思えば、1日に3件しか回れません。それが、それぞれ10分くらいの移動時間であれば、6~7件は余裕で回ることができるでしょう。実に倍のお客様に回れる、ないしは、1件のお客様に2倍訪問することができます。

自分が客の立場であれば、よほどの差別化要因がない限り、月に1回しか来ない営業マンと2回来る営業マン、また、同じ市町村にある会社と、車で1時間かかる先の会社で、どちらに愛着が沸くかといえば、火を見るより明らかだろうと思います。

今回の体験を通じて、改めて“地元”の大切さを実感しました。個人的には、地元との関わりを考え直してみたいと思います。

皆さんもこれを機に、営業戦略の見直しを、「地域密着」「地域No1」というキーワードに基づいて、実施されてはいかがでしょうか。


No.652 兄弟経営

1000nen

2023/04/10 09:00:00

先日、兄弟経営について考えさせられるお話をお聴きしました。

長男であるAさんは、夢であった俳優の道を選ばれました。しかし諸事情があって、所属していた劇団が廃業することになり、それに伴い、お父様が経営する会社に入社することになりました。家を出て、14年目の出来事でした。

しかしそこには、4年前から入っていた弟のBさんがいて、お父様は、Aさんが会社に入る際、「〇〇家は長男に、会社は次男に継がせる」と、社内外に大々的に宣言されたのだそうです。

そもそも兄弟経営がうまくいかないのは、そのほとんどが、譲る側の優柔不断な態度を起因とするものです。その意味で、お父様の態度・姿勢は、大変立派なものだと思います。

Aさんは、それを当然のことと受け止め、それ以来、何事もBさんの指示を仰ぎ、Bさんの意向には徹底的に従うように心がけていたとのこと。しかし、Aさんが良かれと思って取っていたそのような態度・行動が、実はBさんを苦しめてしまっていたのだそうです。

ある日、Bさんの同級生で、先に会社に入っていたCさんから声を掛けられ、次のように告げられました。

「Aさんが下手に出過ぎると、Bはやりにくいと思いますよ。やっぱりAさんはお兄さんですから。あまりBを苦しめないでやってください。」

最初は耳を疑ったそうですが、にわかにその真意に気付いたAさんは、以来、上司としてのBさんを立てながらも、Bさんの指示にただ従うのではなく、兄として弟を支えるという意識に切り替えられたとのこと。

それからは、「誰よりも分かり合える」という兄弟経営の最高のメリットを活かしつつ、互いに支え合って、周囲から見ても理想の経営を実現されているようです。

「そのように育ててくれた両親には、感謝しかありません」

そう締め括られたAさんのお話は、まさに兄弟経営の真骨頂であり、「兄弟経営こそ理想」という私の考えの正しさを証明していただけたような内容でした。

兄弟経営を考えるにあたって、ぜひ参考にしていただきたいと思います。


No.653 弊害

1000nen

2023/04/17 09:00:00

先日、「経理の状況がまったく分からずに困ってます」との相談を受けました。

その会社は平成10年創業。わずか25年で130名を超える規模にまでしたその社長が「困った」という状況を生み出しているのは、まだ10名程度だったころに入社してくれた経理担当者のAさん。とても優秀で「彼女に任せれば何でもこなしてくれる」のだそうです。しかし、それに甘え切った結果、経理業務がブラックボックス化してしまっているのだとか。

そして経理部門は、彼女にしかできないことに溢れ返り、「業務が大変だろうから」と人を入れても、「教える時間がない」「教えるより自分でやった方が早い」と業務の引継ぎをしようとしない。また受ける側も「〇〇さんの仕事は私にはとてもできません」と手を出そうとしない。「今、彼女に何かあったら、確実に機能不全になってしまう」状態なのだそうです。

そこで、彼女しかできない、要するに属人化してしまった理由をお聴きすると、そのほとんどが、「原則がない」ないしは「例外を無条件で受け入れている」ことが原因であり、かつその範囲が広域かつ難解であるために、誰にも引き継げない状況にあると思われました。

「頼り切って、楽をしていた私の責任」とおっしゃる社長に、まずは会社方針を明確にされることをおすすめしました。具体的には「原則の明確化と、例外対応ルールの設定」です。

たとえば、請求に関しては、「請求依頼は15日まで」「締め日は月末」「支払いは翌月末」などといった“原則”と、「例外の場合は、必ず文書にて経理に依頼する」などといった“ルール”を決め、その原則とルールに従った運用に一本化するということです。

もちろん、お客様をはじめとした外部の了解があって初めて成立することですが、こうでもしなければ、この問題は解決しないでしょう。

ただし、決してAさんが間違っていたわけではありません。Aさんは、本当に会社のため、社員さんのため、お客様のために一所懸命取り組まれただけです。その結果、発生してしまった属人化、ブラックボックス化は、それを許したトップの責任に他なりません。

一方で、Aさんに悪意がなかったからよかったものの、このような状態を許すことは、会社のお金の使い込みなどの不正を生み出す温床になりかねません。

皆さんの会社でも、そのような業務はありませんか。これを機に、属人化、ブラックボックス化している業務はないかを検証し、あるべき姿を明らかにしていただければと思います。


No.654 標準

1000nen

2023/04/24 09:00:00

今当社では、マニュアル作りが花盛りです。少なくとも、私自身が3つの部門のマニュアル作成に携わっています。

マニュアルと言うと、作業者が無批判・無条件に付き従うものといったイメージをお持ちの方が多いと思いますが、私たちが目指すのは『進化し続けるマニュアル』です。

もちろん、すべての業務を標準化することは困難です。しかし、経験則でいえば、どんな業務でも7割くらいは標準化可能と思います。

私の考える標準化は、過去に積み上げてきたものの中から、お客様にとっても、会社にとっても、そこで働くすべての人たちにとっても、最も効果的かつ効率的なやり方に集約していくことです。

そのような性質を持つ標準化は、中でも、そこで働く人たちの成長に大きな影響を及ぼします。

人の発揮能力の向上は、経験年数に比例しません。経験量に比例します。よって、いかに多くの経験量を積ませるかが、どれほど早く成長させることができるかに通じます。

もしこの世の中に「九九表」がなかったら、算数を学ぶのにどれほどの時間がかかるでしょうか。もしこの世に「五十音表」がなかったら、言葉を覚えるのにどれほどの時間がかかったでしょう。

これまでは、「仕事を覚えるスピード」が、個々人の能力という一言で片づけられていたように思います。しかし、標準さえあれば、その能力差は詰めることができます。

そして、標準化できない業務に使える時間を最大化させ、真の能力向上につながっていくものなのです。

ただし、一度作った標準を、後生大事に守り続けるのは得策ではありません。状況も、環境も、使えるツールも常に変化、進化しています。「作った時点で過去のモノ」との認識をもって、進化させていかなければならないのです。

標準を作り、徹底して守る。その結果として、成長スピードが上がる。でも、「おかしい」と感じることが出てくる。もっと効果的・効率的なやり方はないかと考え、工夫する。そして、その工夫が有意義なものであると認められれば、標準そのものを見直す。

これが進化型マニュアルの姿であり、価値なのです。

新入社員が入られたこの時期は、マニュアルの作成、または見直しをされる最高のチャンスです。なぜならば、マニュアルは、新人が作るのが一番だからです。

その理由は、また後日お伝えすることとして、ぜひ一度、進化型マニュアルの作成を検討していただければと思います。


No.655 承継

1000nen

2023/05/01 09:00:00

先日、千年経営研究会・名古屋会の主催で、社寺などの伝統建築設計・施工、また、重要文化財などの修繕・補修を手掛ける株式会社 小西美術工藝社のデービット・アトキンソンさんとの懇親会がありました。

アトキンソンさんは、中小企業の主要な問題を生産性の低さにあるとし、ときに、「中小企業を成長させたり再編したりして、器を大きくすることをまず考えるべきです。それができない中小企業は、どうすべきか。誤解を恐れずに言うと、消えてもらうしかありません。」(プレジデント・オンラインインタビュー)といった発言から、中小企業不要論者のような位置づけで語られることもあるようです。

しかし、実際に話をしてみると、元証券アナリストらしく、データに基づく豊かな知見から、中小企業の実態を見事に見抜き、生き残り、成長していくための具体的な方策を示してくださいました。要するに、決して中小企業が不要だと言っているのではなく、その革新の必要と、具体的な方向性を説いておられるということが、よくわかりました。

話しの中で、とても興味深いデータを教えていただきましたので、ご紹介したいと思います。それは、社長の就任年齢と、その後の会社の状況との関連性を示すもので、具体的には、次のような内容でした。

■20代:勢いよく伸びることもあるが、結果はほとんど残らない。

■30代:成功確率は半々。

■40代:多少の上下はあるが、基本的には安定的に成長していく。

■50代:悪くもならないが、成長もしない。

■60代以上:衰退していく。

そして、「社長の座は、60代で40代の者に譲るのがベスト」とのこと。

私は、「老老承継が最悪」「60歳を超えたら譲る準備を」「36歳になったらいつでもOK」などとお伝えしていますが、体感的に見出してきた内容と、きちんとしたデータに基づく内容が一致していたことに、とても嬉しくなりました。

そして、私たちが学ぶ事業承継のセオリーの正しさが証明されたように思います。

私たちは「研究会」です。私たちの活動を通して、さらにその内容の精度を高めると共に、多くの中堅・中小企業にそのノウハウを活用していただいて、素晴らしい事業承継を1社でも多く実現していただけるようにしていきたいと思います。


No.656 葬式

1000nen

2023/05/15 09:00:00

一部の方にはお知らせしましたが、去る5月8日、祖母が他界しました。享年109歳。死亡診断書に「老衰」と記載された、大往生でした。

9日の通夜式の後、1時間半ほど、私一人でお守りをさせていただく時間がありました。何年かぶりの二人っきりのひととき。思い出や人柄を振り返るとても大切な時間となりました。

思い出されたのは、まず「底抜けの明るさ」。人を見る目は厳しかったように思いますが、その明るさで、そうとは感じさせない柔らかさがありました。この点、私も少し引き継がせてもらえているのではないかと感じました。

そして、「行動力」。元々フットワークが軽く、ホイホイといろんなところに出掛けていた祖母でしたが、80歳からは四国、知多四国、美濃新四国、北海道の八十八か所巡礼に行くなど、その健脚ぶりには恐れ入るほどでした。

77歳で連れ合いを亡くしていますから、その供養の心が彼女を突き動かしていたのかも知れませんが、私の腰の軽さも、祖母の遺伝子を引き継いだのだと思います。

そして何より、その信仰心を受け継げたことは、感謝しても感謝し尽くすことはできないと、改めて感じさせていただきました。

今はほとんど見られなくなってしまいましたが、式場や家には必ず「忌中」の文字が掲げられていました。

これを分解すると「己の心の中」と読めます。葬式とは、もちろん故人を弔うものではありますが、一方で、「お前は大丈夫か?」「今死んでも悔いはないか?」と、お参りに来られる方に、その厳しい問いを突き付ける最後の功徳とも言われます。

また、親族にとっては、自分のDNAの意味をきちんと認識する機会でもあると感じています。

親・先祖から連綿と繋がってきているものを認識し、良いものは受け継ぎ、悪いものは自分の代で断ち切って、良いものを次代にきちんと引き継いでいきたいと、心を定めることができたひとときでした。


No.657 朝礼

1000nen

2023/05/22 09:00:00

先日、ある講演会の前座として、当ネットワーク選抜メンバー7名による“朝礼”の実演をさせていただきました。

当ネットワークでは元々、毎月第1営業日に全社員を集めての全体朝礼を実施すると共に、部門ごとに毎日行われていました。しかし、徐々に行われない部署が増え、コロナ禍への対応で、全体朝礼もなくなってしまいました。とても残念なことです。

現在私が所属する税理士法人では、月1回の朝礼は残っているのですが、前の部門では毎日実施していたこともあって、どうしても物足りず、有志を集めた独自の朝礼を1年半くらい前から始めています。本当は毎日やりたいのですが、月1回から毎日への移行はさすがにハードルが高く、毎週月曜日に週1回だけ開催しています。

一方で、司法書士法人と行政書士法人で構成される法務部門では、以前より毎週1回実施されており、私も都合がつけば、参加していました。

そこで今回の実演では、この2部門から有志を募り、それぞれの良いところを集約し、さらにブラッシュアップさせた内容で登壇させてもらいました。

おかげさまで、とても素晴らしい実演ができ、ご覧いただいた方からは、「素晴らしかった」「涙が出るほど感動した」「見習いたい」など、多くのお褒めの言葉をいただき、このメンバーと参加できたことを誇りに思いました。

その場でもお伝えしたのですが、私が朝礼を重んじる理由は、次のようなものです。

□会社の理念や思いを浸透させ、社員の精神的なバックボーンを創り上げたい。

□社員一人ひとりの人間力を高め、深く温かい人間性を醸成したい。

□社員一人ひとりの気を交流させ、風通しのよい職場を創りたい。

□社員一人ひとりの生きがい・働きがいを創出し、気持ちよく働ける職場を創りたい。

今回参加してくれたメンバーも、改めてその目的を再認識してくれたようで、その点においても、登壇させていただいた価値があったと感じています。

また、今回の実演の内容は、前述の通り、メンバー全員で意見を出し合ってブラッシュアップさせてきましたのですが、本当に多くの意見が出たことが、とても嬉しかったです。

これからも、経営理念をより高いレベルで実現するために、参加メンバーと共に、活力あふれる朝礼に磨き上げていきたいと思います。


No.658 伝染

1000nen

2023/05/29 09:00:00

先日、とても嬉しいことがありました。

私はトイレや歯磨きの後、使った洗面台や鏡についた水滴や汚れを拭き取っています。

以前はあまり気にならなかったのですが、拭き掃除を初めて見ると、鏡が結構汚れていることに気付きます。また、洗面台の水滴も、ただの水なら拭けば取れますが、洗剤が混じっていると、軽く拭いただけでは、跡が残ってしまいます。

正直なところ、前の人が残した洗剤交じりの水滴を拭くのは少々勇気がいりましたが、慣れてくると、そのことよりも、きれいに磨き上げた喜びや満足感の方が上回り、今では全く気にならなくなると共に、顔を近づけて、ちゃんと拭き切っているかどうかを念入りに確認するほどになっています。

先日、トイレに入ると、洗面台を拭いている新入社員を見かけました。「偉いねぇ~」と声を掛けると、なんと、「亀井さんが拭いている姿を見て、私もやろうと思いました」と言うではありませんか!嬉しかったですねぇ~!思わず、「すごいねぇ!嬉しいねぇ!ありがとね!」と、称賛のシャワーを浴びせかけていました(笑)。

その後、歯磨きするために洗面台に立ったところ、先に磨き終えた別の新入社員が、何も言わずに水滴を吹き始めるじゃないですか!また、「偉いねぇ~」と声を掛けると、今度は「亀井さんが拭いているという話を聴いて、私もやってみようと思いました。自分が汚したものを拭き取るのは当たり前ですもんね」。またもや称賛のシャワーが自然に溢れ出ていました。

「やってみせ 言って聞かせて させてみせ 誉めてやらねば 人は動かじ」(山本五十六)

と言いますが、本当に良いことであれば、言って聞かせなくても、強制的にさせなくても、褒めてあげなくても、やって見せるだけで人は動くのだということを痛感しました。

そして、良いことは、自ずと伝染していくものであることを・・・

もちろん、さらに拍車をかけていこうとすれば、先の4条件すべてを満たしていく必要があるのでしょうが、元々見せるために始めたことではありませんので、今は、もう少し自分自身が実践し続けることに徹してみたいと思います。

広がらなかったときに責め心がでないように気を付けながらも、どこまで広まっていくか、とても楽しみにしています。


No.659 優しさ

1000nen

2023/06/05 09:00:00

先日、業績不振からメンタル不全に陥り、1年半もの間、薬漬け生活を送られていた社長のお話をお伺いしました。

はじめの内は精神安定剤1錠の半分でも大丈夫だったものが、どんどん処方が増えていき、最後には6錠飲まないと症状が治まらなくなってしまっていたのだとか。

しかし、

「薬ではこの病気は治らない」

「悪しき感情もなくなるが、喜びの感情もなくなる」

「このままでは廃人同然」

ということに気付かれたその社長は、医者から「絶対にダメ」と言われていたにも関わらず、薬を飲むのをやめられた。

相当、悪戦苦闘をされたようですが、懸命な努力の結果、何とか普段の生活を取り戻すと共に、今では積極的な事業展開に取り組まれています。

お話の中で、目から鱗だったことがありました。

人は多くの場合、メンタル不全に陥った人を目の前にすると、

 □「何やってんだ!」「そんなんだからダメなんだ!」と叱咤激励する人

 □「大丈夫!」「何とかなるよ!」「私がついてるよ!」と慰める人

この2パターンに分かれるそうです。確かにその通りだと思います。

そして、普通に考えれば、前者が×で、後者が〇と思ってしまいます。

しかし、「いずれもダメ」なのだとか・・・。

「メンタル不全に陥ったら、どんな言葉も責め心にしか感じない」

なるほど・・・。

じゃあ、どうすればいいか。それは、

「普通通り、これまでとまったく変わらない対応をしてもらうのが一番」

以前

「憂う人の横に、何も言わずに寄り添う人が本当に優しい人」

という話を聴いたことがあります。今回、その意味がはじめて分かった気がします。

その社長にとって、そのように寄り添ってくれたのが奥様だったそうです。その奥様に、

「なぜ自分がこんな状況なのに、そんなに普通に振る舞えるの?」

と訪ねられたときの答えが秀逸でした。

「明日は約束されてない。だから全力で生きるの」

両目から鱗が落ちる、最高のお話をお聴かせいただきました。


No.660 縁GO

1000nen

2023/06/12 09:00:00

先日、 “こんまり”こと、片づけコンサルタント・近藤麻理恵さんの著書『人生がときめく片づけの魔法』を、世界で1,400万部売った出版プロデューサー、有限会社エリエス・ブック・コンサルティング代表取締役の土井英司氏の講演を聴いてきました。

正直なところ、名前は全く存じ上げていなかったのですが、現代本をあまり読まない私でも耳にしたことがある、『ユダヤ人大富豪の教え』(本田健さん)、『年収200万円からの貯金生活宣言』(横山光昭さん)、『経営の教科書 ―社長が押さえておくべき30の基礎科目―』(新将命さん)などのプロデュースを手掛けられている方。

「経営者が一番大事にしなければならない投資は“交通費”」と言われるほど、世界各国を渡り歩かれている数多の知見からのお話はとても面白く、1時間30分があっという間に過ぎていきました。

テーマは、「マーケティングになぜ思想が必要なのか」。終わりがけには、頭がフリーズしそうになるほど知恵と情報に溢れた内容でしたが、今回私が受け取った、マーケティングを考える上でのポイントは、次の3点でした。

一つは、「競争しない、価格交渉力のある市場にチャレンジする」ということ。「利益は、“ありがたい”の対価」であり、誰でもやれることではなく、「難しいこと」「人が嫌がること」を、「信念をもってやり切る」ことが大切だということです。

そのためにも、「人生をどう締め括りたいか」を明確にすること、そしてそのゴールは「本業を通じてしかできない」とおっしゃいます。本当にその通りだと思います。

二つ目に、「ビジネスには思想が必要」ということ。「意味で勝つ」と表現されていましたが、どんなに素晴らしい製品・サービスであったとしても、人は、興味・関心がなければ、振り向いてもくれません。「interesting」は「興味深い,おもしろい」ことを意味する英単語ですが、「interest」の語源は「利益、利する」なのだそうです。そのためにも、お客様の本当の“利”とは何かをとことん明確にし、そこに自社の製品・サービスの意味づけをしなければなりません。

私は、「ビジネスには物語が必要だ」と思っていますが、まさにお客様が心から喜んでもらえる物語の大切さを再認識させていただいたように思います。

しかし、「日本の企業は、ありふれたものの質を高めることばかり考えている」「だから勝てない」とのこと。多くの経営者にとって、ちょっと耳の痛い話だと思います。

また、相手の気持ちを考えずに、「自分が売りたいものをどう売るか」ばかりを考えている今の日本の企業に対して、「独りよがりは人を傷つける」とまでおっしゃったのが印象的でした。

最後に、「縁を見逃さず、縁に触れたらGOする」ということ。“縁GO”と言われていましたが、見聞きしたこともないものを、見もしないでその善し悪しを判断することなどできません。だから、縁に触れたらとにかく動く。やってみる。行ってみる。「最大の投資は“交通費”」の意味はここにありました。

「小才は、縁に出合って縁に気づかず」

「中才は、縁に気づいて縁を生かさず」

「大才は、袖触れ合った縁をも生かす」(柳生宗矩)

と言いますが、つまらない自分のエゴや我見で自分を縛り付けず、“大才”となって、自社をおおいに発展させていきましょう。“縁GO”は、今回のお話の最大のテーマだったと思います。

私自身、いろいろ考えさせられる内容でした。早速“縁GO”の実践をしていきたいと思います。


No.661 人材

1000nen

2023/06/19 09:00:00

先日、8億円の債務超過を7年で解消されたという社長のお話をお聴きしました。

それも、自ら作った債務ではなく、既にそのような状況にあった父親の知り合いの会社を引き継がざるを得なくなったのだと言います。私も、様々な事業承継を見てきましたが、極めて稀なケースだと思います。

引き継いだ当初、55名いた社員は、急激な改革についてくることができない、ないしは、方針に従うことができなかった者が次々と去り、最終的には20名を切るまでになったとのこと。しかし、そのような大変な状況にありながらも、「自分と同じ思いになれない人は、いてくれなくても構わなかった」とおっしゃいます。もちろん、平時ではなかなか肚がくくれないことではありますが、人材戦略の本質だと思います。

一方で、改革が功を奏し、債務超過の解消どころか、県下の優良企業の仲間入りをし、社員数も130名を超えた頃に起こったリーマンショックで、売上が対前年比60%まで落ち込んでしまった、そしてその状況に対し、全体の約30%の“首切り”をされてしまったとのこと。「どんどん減っていく売上が恐ろしかった。何を減らしたらいいかしか、考えることができなくなっていた」のだそうです。

しかし、「もっと長引くと思っていた」不況は、思いのほか早く収束し、残ったものは「社員の会社と私に対する不信感しかなった」とのこと。

バブル崩壊時もそうでしたが、当時は「リストラを断行できる経営者は優秀」といった風潮がありました。しかしながら、“リストラクチャリング(事業再構築)”とは名ばかりの単なる“首切り”以上に、会社を疲弊させるものはありません。首を切られた方ではなく、残った方の心の傷の方が、影響が大きいからです。

その会社では、リストラの対象者は「若手の独身者」で、「知り合いの優良企業にお願いして、次の就職先も斡旋した」とのことですが、それでも「不信感は今でもぬぐえていない」と言います。ここに首切りという劇薬の激しい副作用が見て取れます。

当時の状況を振り返り、「経営者が引き算を始めたらだめになる。そうならないためにも、経営者は人間性を磨き続けなければならない」と締めくくられたお話に、人材に対する正しい認識と、それに基づく正しい言動の必要性を、改めて教えられました。

これを機に、目の前にいらっしゃる社員さんに対して、どのように向き合わなければならないか、今一度考える機会にしていただければと思います。


No.662 目的

1000nen

2023/06/26 09:00:00

先日、「事務所の生産性を高めたい」と、プロジェクトチームを立ち上げた税理士事務所から、「どのように進めたらよいか相談に乗って欲しい」との依頼を受け、訪問してきました。

プロジェクトメンバー5名が揃う会議室に通され、挨拶をさせていただいたのち、まずは、生産性を高める目的をお尋ねしました。しかし、明確な答えが返ってきませんでした。そこで、いろいろ確認をしてみると、このプロジェクトの位置づけが見えてきました。

この事務所では、毎年いくつかのテーマを定め、そのテーマごとにプロジェクトチームを立ち上げ、全職員がいずれかのチームに配置され、目標を定めて1年間活動するという取り組みをされています。

要するに、プロジェクトを立ち上げることが優先で、生産性向上というテーマは、後付けされたものだったということです。

最初にプロジェクト活動が取り組まれ始めるときには、まず改善テーマが先にあり、その改善手法のひとつとしてプロジェクトチームが編成されるものです。しかし、数年もすると、プロジェクトを実施することそのものが先に立ち、そののちに改善テーマが後付けされる、これは、プロジェクト活動が習慣化している組織によくあることですし、決して間違っているわけではありません。

しかし、今回のように、テーマは決まったものの「何のために」が抜けてしまっては、本末転倒です。

そこで、与えられた時間の中で、税理士事務所における生産性向上の必要性をお話したのち、その事務所における生産性向上の目的について、じっくりと話し合いをしました。そして、最終的には、参加者全員すっきりした面持ちで、「このテーマで1年間取り組みます!」と力強く決意表明していただくことができました。

この事例を通して改めて感じたのは、“目的”の大切さです。今回も「生産性の向上」という、一見、目的であるかのように見えるものが存在しました。しかしそこには、「当事務所における」という枕詞がなく、かつ「その結果、どうなっていることを目指すのか?」が明らかではありませんでした。

これは、皆さんの会社でも、随所にみられることだと思います。これから何かに取り組もうとされる際には、「これを実施する目的は何か?」「最終的にどうなることを目指そうとしているのか?」を明確にしてみてください。意外に、よく考えずに進めようとしていることが多いことに気付かれると思います。

もし、「なぜ」が明確になっていないと感じられたら、改めてその目的を明らかにするか、そもそもやる必要があるのかを吟味していただきたいと思います。


No.663 承継

1000nen

2023/07/03 09:00:00

先日、ある会社の幹部会議の場に同席させていただきました。

私をお呼びいただいた社長は、冒頭のあいさつで開口一番、「みなさんは、この会社を残したいですか?」と問われました。

いきなりの質問に面食らいながらも、一人ひとり名指しされた幹部は、異口同音に「もちろん残したいです」と答えられました。しかし社長は、「本当に、本気で残したいと思っていますか!」と、さらに大きな声で問い直されました。

社長の意図がつかめず、黙り込む幹部を前に、社長は次のように話されました。

「私は、息子が継ぎたいと思える会社を残したい」

三代目のその社長は私より一つ年下の57歳。ご自身が60歳となる3年後、創業80年を迎える会社の行く末を考えに考え抜いたとき、「息子に継がせるつもりはない」と言っていた意向を覆し、幹部の前で、ご子息への事業承継を明確に示されたのです。

正直なところ、私がこの会議に呼ばれた理由はよくわかっていませんでしたが、それは、「継がせるなら息子」と言い続けていた私への回答でもあったようです。

幹部はみな、最初は何を言われているのか消化できずにいたようですが、一人の幹部からの「元々、次期社長はご子息が一番いいと思っていました。これで私も覚悟が決まりました」との発言に、社長の真意を理解した全員が大きくうなずかれました。今度は、社長が面食らう番でした。

幹部の同意を得た社長は、安心した面持ちで、次のように続けられました。

「息子が継ぎたいと思える会社とは、社員が残したいと思える会社だと思う。社員が残したいと思える会社とは、自分たちが人間的成長を実現できる会社だと思う。私は、そんな会社を残したい。」

「当社は、80年近く生き残ってきた。それには明確な理由がある。それは社会の役に立ってきたからだ。その社会の中でも私が最も大切にしたいのは、社員。会社は社員のためにある。会社は社員のものである。会社は社員が暮らす街である。その街を、最も住みたい街に、私はしたい」

そして、「どうぞよろしくお願いします」と深々と頭を下げられた社長に、自然と拍手が巻き起こりました。とても感動的なシーンに立ち会うことが出来、とても幸せな一日となりました。

本コラムを、残したい会社とはどのような会社なのか、ご自身の考えを整理するきっかけにしていただければと思います。


No.664 教育

1000nen

2023/07/10 09:00:00

先日、体育大学卒業後、荒れる学校ばかりを担当してきたと言う、元中学教師のお話を伺いました。

当時の生徒の写真を見させていただきましたが、テレビでしか見たことがないレベルの子たちばかりで、自分が教壇に立つ姿をイメージすると、「身の毛がよだつとはこのことか」と感じるほどでした。正直、彼らを統べる手立てなど、私には思い浮かべることはできませんでした。

しかし、そんな彼らに対して、まず掛けた言葉は「裏庭に来い」で、「ボコボコにした」上で、恐れ慄く姿を目の前にして伝えたのが「お前ら、陸上部に入れ」だったそうです。

「今では、とてもできることではない」とのことでしたが、そのプロセスの善し悪しは別として、その後、オリンピック選手を何人も輩出されたり、医師やその他の分野で活躍している子たちもいるとの話から、その指導効果には、相当なものがあったようです。

そこまで真剣になれる理由をお聴きすると、「彼らだけが悪いのではない。片親、貧乏、家庭内暴力など、彼らには荒れる原因があることを知ったから」なのだそうです。そして、「それに寄り添い、トコトン付き合っていくのが、彼らを真っ当な道に導く唯一の方法」と言われます。

寄り添い方について詳細な話をいくつかお聞きしましたが、頭では理解できるものの、とても私にはできそうもなく、ずっと頭が下がる思いでした。

一方で、お話をお聴きしながら浮かんできたのは、当社の社員の顔でした。

「ここまでド真剣に社員に向き合うことができているだろうか?」との自らの問いかけに、とても「YES」と答えられない自分がいました。

もちろん、社員教育には心を砕いてきたという自負はあります。しかし、その向かい方は、「ワンウェイではなかったか?」「独りよがりではなかったか?」「こちらから寄り添うことができていたか?」との疑問が、沸々と湧いてきたのです。

自分自身の社員教育に対する課題が炙り出されたような気がします。

もちろん、彼のようなスタンスが取れるようになるとは思えません。あまりにもキャラクターが違いすぎます。しかし、学ぶべき点もある。

私は私の個性を最大限に活かしながら、社員にもっと寄り添い、もっと本気で向かい合っていきたい、そんな気づきが得られた素晴らしい出会いでした。


No.665 覚悟

1000nen

2023/07/17 09:00:00

税務調査が入り、追徴課税を受けた結果、数億円の借り入れをせざるを得なくなると共に、無借金体質であったものが、自己資本比率がマイナス30%を超えるほどに悪化し、金融機関の格付けが、「優良企業から最低ランクになってしまった」という二代目社長のお話を聴く機会がありました。

さらに追い打ちをかけるように、創業者であり、現役社長であったお父様が急逝。にわかに引き継がざるを得なかったその方の「まさに地獄のような日々だった」とは、嘘偽りのない気持であったと思います。

そんな状況下にあって、「もう無理だ。会社をたたもう」と考えられるのも、無理のない話だと思います。

しかし、それを阻むものがありました。それは、創業者の奥様であり、現社長のお母様の一言でした。

「お父さんが作った会社を潰さないで!!」

その執念ともいえる言葉に、「やめることはできなかった」のだそうです。

さらにお母さまの言葉が続きます。

 「商売、諦めたら終わりやで」

その言葉の通り、お母さまは近隣にチラシのポスティングを始められたのだそうです。実はポスティングは既に社長自身が取り組まれており、まったく成果が上がっていませんでした。「ポスティングはもうやった。成果が出ないことはわかってる」と冷ややかに見ていた社長をあざ笑うかのように、お母さまが配られたチラシには、ぽつりぽつりと反応がでるように・・・。

疑問を隠せない社長に、奥様から次のように伝えられたのだとか。

「お母さまは、チラシをポストに入れた後、一軒一軒「よろしくお願いします」と手を合わせて拝んでいるそうよ」

想いが違っていたのです。

それ以来、すべてを捨てて、打てる手はすべて心を込めて打ち尽くし、今では借金を完済したその社長は、「夢は諦めなければ叶う」と力強く仰います。

そして最後に、「周りの人には感謝してもし尽くせない。運を運んでくるのはやはり人」と締めくくられました。

人は覚悟をもってことを運べば、必ず支援者が登場します。そして、その恩の自覚と、報恩の実践を行えば、さらなる発展がついてくる。その実例を教えていただいたお話でした。


No.666 結果

1000nen

2023/07/24 09:00:00

先日、私が10カ月に亘って講師を務めてきた、愛知県倫理法人会主催「倫理経営実践塾」の修了式が挙行されました。

当塾の最終ゴールは、戦略的中期経営計画の策定。そこで、修了式に先立ち、受講生18名による経営計画書の発表会が行われました。

発表時間は、一人10分。10か月間、30枚以上のシートを使って頭を悩ませ続けてきた内容を、前日から整理し直し、すべてを説明すれば最低でも1時間は必要と思われる内容をパワーポイント数枚にまとめ、さらに10分間で話さなければなりませんでした。

正直なところ、前日までの出来栄えは、不安を隠し切れない状況でした。しかし、「魔法でも使ったのか?」と思えるほど、全員素晴らしい発表をしてくださいました。中には、「ほぼ徹夜でした」という人もいたようです。その心意気も含め、感動の発表会でした。

今回の講座では、特に「イノベーション(変革)なき計画では、今回学んだ意味がない」と厳しくお伝えしていました。みんながそのことを意識して発表してくれたことも、とても嬉しく思いました。

しかし、この発表内容は、ゴールではなくスタートです。最後には「結果が出なければ、学んだ意味がない」と厳しくお伝えしました。

そもそも結果が出ないのには理由があります。その最たるものは、

 □動機・目的が正しくない

 □正しい目的を果たすための手段が間違っている

 □確かで間違いのない手段を徹底できていない

の3つです。

動機・目的の正しさは、時代によって変化することがあります。また、最適な手段も移ろいやすいものです。しかし、結果に貪欲でなければ、その変化に気付くことさえできないでしょう。また、結果に貪欲でなければ、やるべきことを徹底的にやり切ることはできません。

よって、「結果にコミットする」という姿勢は、何よりも欠かすことができないものです。

今回、修了した彼らには、これからも結果を求め続けようと思います。

皆さんもぜひ、学びの機会を自ら設け、徹底的に結果を追い求め、そこで得られた気づきや学びを実践し続けていただくことをおすすめします。


No.667 イベント

1000nen

2023/07/31 09:00:00

先日、当千年経営研究会で、設立15周年を記念した事業の一環として、ボウリング大会が開催されました。

実行委員のメンバーが、飲み会のたびにボウリングに行きたがる私を見るに見かねて企画をしてくれたのですが、私の下手の横好きが世に明らかにされる結果となりました。

それでも、日頃なかなか会うことができない4地域会と後継者会の会員が集い、楽しいひとときを過ごすことができ、とても充実した時間となりました。

その数日前、オンラインで開催された月例会で、あるメンバーから慰安旅行を実施したという報告がありました。

全社員が2台のバスに分乗し、同社が建設した香川県の建物の見学を交えて実施されたとのこと。

自分たちが作ったものを全社員で見に行くという企画は、とても素晴らしいと思います。

以前、飛行機の部品を作っているメーカーの社員さんが、空を飛ぶ飛行機を指さしながら、ご自身のお子さんに、「あの飛行機は、お父さんが作った部品がないと飛ばないんだ。あの飛行機は、お父さんが作った部品で飛んでるんだ」と伝えているという話をお聴きしたことがあります。そのときも、仕事への誇りを社員さんにもってもらうことの大切さを痛感しましたが、この慰安旅行も、そのような価値のあるものであると思います。

実は、この慰安旅行で、社員さんの半数近くがコロナに係ってしまったとのこと。しかし、「大変でした」とは言われるものの、「後悔はありません」とのこと。それ以上の効果を実感されているからでした。

ボウリング大会や慰安旅行などというイベントは、組織構成員の結束とコミュニケーションの充実に、とても大きな効用をもたらします。

その社長の感じられた価値も、そのようなものだったのだと思います。

ぜひみなさんの会社でも、いろいろとイベントを企画されてはいかがでしょうか。必ずや費用以上の価値をもたらしてくれるものと思います。


No.668 学び

1000nen

2023/08/07 09:00:00

先日、愛知県倫理法人会主催の『会長研修』なるものに参加してきました。

9月から新年度を迎えるにあたり、愛知県下に29ある単会の会長が集い、その心構えや役割、または具体的な行動などを学ぶ場で、来期3期目を迎える私にとっては、3度目の受講となります。

毎年、同じような話を聴いているのですが、いくつかの新たな発見があり、改めて同じ話を何度も聴かなければいけないことを痛感すると共に、新たな気づきがあるということは、それだけ自分自身が成長しているのだと、少々嬉しくも感じました。

講義の中で、「会長という役職」というテーマでは、次のような内容を学びました。

□優れたリーダーは、やって見せ、人の心に火を点ける

□会長は、単会の総責任者であり、主役であり、商品である

□良くも悪くも単会の空気を作り、品格を醸成する

□会長は、名誉職ではなく“責任職”である

□会長の役割は、「お願いする」「褒める」「認める」ことである

これらの内容は、倫理法人会の会長のみならず、各会社におけるリーダーにも共通するところだと思います。ぜひ参考にしていただければと思います。

また、講話の終了後、5~6人のチームに分かれて、学んだことに対して、会長としてどう活かしていくかを話し合うグループディスカッションを行いました。

同じ内容を学んでいるにも関わらず、それぞれが自分自身の視点から気づきを得ていて、「そういう捉え方もあるのか」と驚くと共に、大きな学びを得ることができました。

私たち千年経営研究会も、毎月全体ならびに各地域会、後継者会で月例会を行っていますが、やはり同じ立場の人間が集い、それぞれの体験や思いを共有することは、とても有意義な事であると再認識しました。

改めて月例会への参加を強くおすすめ致します。

会長職は来期で最後となりますが、同期会長と共に切磋琢磨し、さらなる精進をすることで、会員企業ならびにそこで働く社員さんの物心両面の幸せを実現できるよう、精一杯務めさせていただきたいと思います。


No.669 カスハラ

1000nen

2023/08/21 09:00:00

先日、社内にて『カスハラ研修』を実施しました。

カスハラとは、『カスタマー・ハラスメント』の略で、「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」と定義付けられているものです。

この研修を実施しようと考えたのは、このところ、理不尽な要求をしてくるお客様が増えていると感じており、社員のメンタル的な健康の保全のため、そのようなお客様に対して、どのように対処すればよいかを学んで欲しかったためです。

ハラスメントで最も多いのはいまだにパワハラ(48.2%)で、第2位がセクハラ(29.8%)なのだそうですが、いずれも減少傾向にある中、第3位のカスハラ(19.5%)だけが上昇傾向にあるとのこと。(出典:令和2年度厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査」)

講師によれば、「その数が増えているということもあるけれど、これまで泣き寝入りしていたものが、表に出てきていることもあるのではないか」とのことでした。いずれにしろ、商品・サービスの提供者と受益者との関係に、大きな変化が生じていることの証であると感じます。

カスハラの具体的な行為には、次のようなものがあるそうです。

①時間拘束型:長時間にわたり、顧客等が従業員を拘束する、居座りをする、長時間電話を続ける。

②リピート型:理不尽な要望について、繰り返し電話で問い合わせをする、または面会を求める。

③暴言型:大きな怒鳴り声をあげる、「馬鹿」といった侮辱的発言、人格否定や名誉を毀損する発言をする。

④暴力型:殴る、蹴る、たたく、物を投げつける、わざとぶつかってくる等の行為を行う。

⑤威嚇・脅迫型:「殺されたいのか」といった脅迫的な発言をする、反社会的勢力とのつながりをほのめかす、異常に接近する等といった、従業員を怖がらせるような行為をとる。「SNSにあげる」「口コミで悪く評価する」等とブランドイメージを下げるような脅しをかける。

⑥権威型:正当な理由なく、権威を振りかざし要求を通そうとする、お断りをしても執拗に特別扱いを要求する。または、文書等での謝罪や土下座を強要する。

⑦セクシャルハラスメント型:従業員の身体を触る、待ち伏せする、つきまとう等の性的な行為、食事やデートに執拗に誘う、性的な冗談といった性的な内容の発言を行う。

皆さんの会社でも、同様の行為を受けている社員さんはいらっしゃらないでしょうか。もしかすると、「お客様を大切にしなければならない」と泣き寝入りしていたり、上司から我慢を強いられているかもしれません。

私たちは社員さんを守る義務があります。現場でどのようなことが起こっているかを明らかにし、対処すべきと判断されれば、毅然とした態度で対応するようにしていきたいものです。


No.670 カスハラ②

1000nen

2023/08/28 09:00:00

先週に引き続き、『カスタマー・ハラスメント』についてお伝えしたいと思います。

講師によれば、カスハラと単なるクレームは紙一重で、その判断が難しいとのこと。その認識の上で、次のような判断基準を示されました。

①顧客等の要求内容に妥当性はあるか

顧客等の主張に関して、まずは事実関係、因果関係を確認し、自社に過失がないか、または根拠のある要求がなされているかを確認し、顧客等の主張が妥当であるかどうかを判断する。例えば、顧客が依頼した役務について自社に瑕疵がある場合、謝罪と共にやり直しや賠償等に応じることは妥当。逆に、自社の過失、瑕疵等がなければ、顧客等の要求には正当な理由がないと考えられる。

②要求を実現するための手段・態様が社会通念に照らして相当な範囲か

その要求を実現するための手段・態様が、社会通念に照らして相当な範囲であるかを確認する。例えば、長時間に及ぶクレームは、業務の遂行に支障が生じるという観点から、社会通念上相当性を欠く場合がある。また、その言動が暴力的・威力的・継続的・拘束的・差別的・政敵である場合は、社会通念上不相当であると考えられる。

一方で、カスハラは、クレームの延長線上で発生する場合が多いため、カスハラに発展させないためには、クレーム対応の適切さが求められるといいます。

特に発生時において、「まずは対象となる事実、事象を明確かつ限定的に謝罪する」ことが大切とのこと。たとえば、正確な状況が把握できていない段階では、「このたびは不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ありません」といったように、不快感を抱かせてしまったことを謝ることが有効で、非を認めて謝罪するのは、事実確認をして、自社に非があると社内で判断をしたときであり、その際も、過失の程度に応じた謝罪をすることが望ましいのだそうです。

そのためにも、下記の流れで事実関係の整理・判断をするように教えていただきました。

(1)時系列で、起こった状況・事実関係を正確に把握し、理解する。

(2)顧客等の求めている内容を把握する。

(3)顧客等の要求内容が妥当か判断する。

(4)顧客との要求の手段・態様が社会通念上相当か判断する。

また、事実関係を確認する際は、トラブルの状況の報告書や面談時の録音等も、より状況を正確に把握する上で、大切のことだと言います。

一方で、クレームは、その対応の如何によっては、顧客等とのより一層強固な関係作りのきっかけともなるものです。クレーム発生時に正しい対応をすることで、少なくとも、不要なカスハラを発生させないようにしたいものです。


No.671 成長

1000nen

2023/09/04 09:00:00

先日、名古屋市南区倫理法人会で実施している、毎月1回、全12回の「倫理経営ゼミナール」という勉強会が最終回を迎えました。

今期で2期目となるその勉強会の最後に、一部の方に感想を発表していただきました。その中に、千年経営研究会メンバーが社長を務める会社の社員さんがいらっしゃいました。その内容が、とても嬉しかったので、皆さんにも共有したいと思います。

「当社の社長は、7年前に社長に就任されました。入社以来の彼の言動を見聞きするにつけ、最初は正直どうなることかと思っていましたが、年を追うごとに人間的な成長をされ、経営もどんどん良くなっていったという印象がありました。今回、この勉強会で学ばせていただく中で、「ああ、社長はこういう勉強をされ、実直に実践されてこられたから、今があるのだ」と感じ、納得することができました。」

とても嬉しい感想でした。

もちろん、この勉強会は2年目ですから、その社長の成長の理由が、この勉強会ということではありません。彼の言う「こういう勉強」とは、千年経営研究会での学びを指します。なぜならば、この勉強会は、千年経営研究会でお伝えし続けている内容に通底するものであり、さらにはその社員さんは、その社長が千年経営研究会で学ばれていることをご存じの上での発言だからです。

私が嬉しく感じた理由は、2つあります。

まずはその社長が、千年経営研究会で学ばれたことを実直に実践され、その成果を十二分に挙げられていることを、社員さんの口から教えていただけたことです。

もちろん彼の変化は、誰が見ても明らかであるものの、社員さんがその変化を認め、好ましく受け止めていただけていることは、何にも増して嬉しいことです。

そして、その社長の成長を通して、千年経営研究会の学びの価値を感じた社員さんに、その学びが共有されたことが、もう一つの嬉しさです。

私は常々、『共通の言葉を持つ』ことの価値をお伝えしてきましたが、まさにそれが実現されていることがとても嬉しいのです。

ぜひ皆さんも、千年経営研究会から多くの学びを得ていただき、さらには実践を通じて成果を挙げていただくと共に、その学びを社員さんとも共有し、さらなる成長を遂げていっていただきたいと思います。


No.672 進捗

1000nen

2023/09/11 09:00:00

先日、ある部署から『進捗管理表』に関する相談を受けました。

進捗管理表とは、業務ごとの進捗状況を一覧的に把握し、遅れが生じた際に、適時適切な対処ができる状態にすることを目的としたものです。そのために、一つずつの業務につき、業務発生から完了までの工程を分解し、その業務が、どの工程まで進んでいるかを、エクセルなどを使って管理するものです。

ちなみに“業務”とは、たとえば総務で言えば、「給与計算」とか「勤怠管理」といった、一つの目的・目標を達成するために行われるもの、“工程”とは、その業務を完遂するための順序・段階・ステップで、同一の担当者が、同一のタイミングで行う“作業”のまとまりを指します。

当社の進捗管理表は、工程ごとに納期設定ができるようになっており、その納期を超えると、業務全体が赤く表示されるようになる仕様になっています。

相談というのは、「いつも真っ赤に染まることが常態化してしまっている」というものでした。

話を聴いてみると、「赤く染まる」理由には複数あるようです。

①工程は完了しているが、完了ボタンを押していない。

②設定された納期からは遅れているが、理由が明確で、問題はない。

③遅れが生じており、手を打たなければならない状況にある。

最大の問題は、①・②の存在によって、最も重要な③が埋もれてしまっていることでした。

①については、進捗管理表の運用が始まったばかりで、完了ボタンを押す習慣がまだ定着していないことが原因でした。そこで、一定期間ごとに完了ボタンを押す時間を設けるよう指示しました。

②については、納期変更が起こった都度、設定の変更を行う習慣をつけるように指示しました。また、その習慣がつくまでは、①のタイミングで修正することとしました。

これによって、対処しなければならない③が明確となり、問題の業務が浮き彫りになります。

モノづくりにおいては「あり得ない」話ですが、社内業務においては、意外に多い状況ではないでしょうか。

進捗管理は、業務推進においてとても大切なことです。しかし、対外的な業務については意識高く行われているものの、社内業務においては、ついつい後回しにされがちであり、それが会社全体の生産性を著しく低くしていることも事実です。

皆さんの会社でも、一度社内業務の棚卸を行い、業務ごとの進捗管理表を作成して、業務の進行状況の見える化によって、適時適切な対処が行える状況を作っていただければと思います。


No.673 傾聴

1000nen

2023/09/18 09:00:00

先日、私が会長を務める名古屋市南区倫理法人会の年度初めの役員会が開催されました。

会長になって3期目、それまでは議案ごとの報告者によるワンウェイの発表会的な会議だったものが、「全員参加型」を標榜し、参加者の積極的な発言を求め続けて2年、新しいメンバーも交えて、本当に活発な議論ができるようになってきました。

「否定しない」「全員同意が原則」を信条として進めていますが、結果として百花繚乱、通常であれば、「シャンシャン会議」になってもおかしくないような些細な議題であっても、「そんな考え方もあるのか?」と感じる意見が咲き乱れ、長時間に及ぶことがあります。

先日も、検討議題は2つしかなかったにも関わらず、所定の時間を超え、報告事項も含めて2時間に及ぶ会議となりました。

正直なところ、検討中、何度も「会長判断でこうしましょう」と言いたくなったのですが、それでは私の信念を、私自身が曲げてしまうことになってしまいますから、できません。

自社であれば、途中で口を挟み、「じゃあ、こうしよう」と締めてしまっているのをグッと我慢して、皆さんの意見に耳を傾け続けました。

そのとき、「私は社員の話をきちんと聴けているだろうか?」との疑問が沸々と湧いてきました。そして「まったく聴けていない」自分を認識しました。もちろん、ある程度は聴いているつもりではいますが、「聴き切っているか?」と問われれば、とてもできているとは言えません。

この会では、会長と言う立場ではあるものの、全員が同じ月会費を納める平等な関係ですが、会社では、明確な上下関係があります。自分の発言によって上司からの評価が上下する可能性のある立場では、聴く側がよほど聴く耳を持っていなければ、本音の意見が出ることはないでしょう。

だからこそ、上の立場の人間は、「あなたの話を聴きたい」と心から願い、じっくり耳を傾け、本音が出てくるまでしつこいくらい意見を求める、そういう姿勢が必要なのだと思います。

当社は9月決算で、ちょうど来期計画を検討している最中です。後日、ある部門の検討会に参加したのですが、ついつい口を挟みたくなる場面が何度もありました。もし、前述の体験がなければ、何の疑問もなく横やりを入れてしまっていたと思います。

ただ笑って、うなずきながら話を聴くことができたおかげで、多くの貴重な意見を聴きだすことができました。

「本音が出るまでじっくり耳を傾ける」これからも実践していきたいと思います。


No.674 いまここ

1000nen

2023/09/25 09:00:00

このところ、私が常に意識していることがあります、それは、「いま・ここ」に集中することです。

千年経営研究会では、『即行即止』すなわち「気付いたらすぐする、すぐやめる」を宗としています。この姿勢の価値は、多くの会員が実感しているところだと思いますが、ひとつ問題があります。それは「気付かなければやれない、やめられない」ということです。

そこで、「気付かなければならないことにきちんと気付けるようにするためにはどうしたらよいか」という命題に対する最適な解が必要となります。

それが、「いま・ここ」です。

皆さんも経験があると思いますが、人は、何か目的なり目標を明確に持つと、今までも目の前にあったにも関わらず見えてなかったものが、はっきりと見えてくることがあります。

「いま・ここ」に集中するとは、「今この瞬間に私がいるこの場所は何のために存在するのか?なぜ私がいるのか?」その目的・目標を明確にしてその場に臨むということです。

私のスケジュールは、さまざまな会議で埋まっています。正直なところ、「何を言っているかわからない」専門的な内容も多く、そのような場面になると、内職をしたり他事を考えたりしていました。しかし、それが決して好ましい姿勢ではないことは、薄々感じていました。

そんな中、ある会議で、いつものように「私にはわからない」議論になっていた折、時たまたま携帯電話が鳴り、席を外して対応しました。内容としては、後で掛け直しても全然問題ないものでした。電話を切って席に戻ると、全員が一斉に私に顔を向けました。電話中に「私にはわからない」議論が、「私にしか答えが出せない」議論に変わっていたのです。

大いに反省しました。

「いま・ここ」に存在できるのは、私しかいません。その席に私がいる以上、何人なりともその席に座ることはできないのです。そしてその席が用意されているということは、私にしかできないことがあるからです。その大前提を疎かにしていました。

その日から、会議に限らず、「いま・ここ」に全集中することにしました。

そうすると、これまで如何に大切なものを疎かにしてしまっていたのかに大いに気づきました。そして、改めて「いま・ここ」の大切さを痛感しています。

今では、これから臨む場において、「この会議の目的は何か?」「私がこの場にいる意義・価値は何か?」を明確にし、どんな些細な話も聴き逃さないという気持ちを持つようにしています。

もちろん人間ですから、「気付いたら他事を考えていた」ということもあります。しかし、「いま・ここ」を意識して以来、「いかん、いかん」と、本来の場に戻ることができます。

ぜひ皆さんも、その時その時、その場その場において、「いま・ここ」を意識して臨むようにしてみてください。それまで見えていなかった大切なものが、はっきりと見えてくると思います。