「千年」バックナンバー No.301~400

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No.301 制度

1000nen

2015/12/28 09:00:00

 仕事柄、社内の制度つくりに関するアドバイスを求められることが多いのですが、制度つくりには、陥りやすい問題がいくつか存在します。先日もある会社でアドバイスを求められました。そのときお伝えしたことを、今回のコラムにしたいと思います。

第一に、「現状を前提とした制度つくりは、課題解決を阻害する要因になりうる」ということです。現状が正しい状態であるのであれば、その状態を制度としてルール化することは、その良さをキープし続けるための“歯止め策”として有効に働きます。

しかしそうでないとすれば、制度化は好ましくない現状の肯定となり、問題が封印されてしまう恐れがあります。

よって制度つくりをする際には、まず現状が好ましい状態にあるかどうかを見極めなければなりません。そしてそうでなければ、どのような状態を目指すか、理想の状態とはどのようなものかを明らかにし、その実現に向けた制度化を検討する必要があるのです。

第二に、「一度制度化したら、元に戻すことは困難である」ということです。もちろん制度つくりは“よりよい状態”を目指して検討されるものであり、制度化によって得られる効果は間違いなくあるのだと思います。

しかし一方で、「制度化することによって、どのような問題が生じる可能性があるか」も同時に、かつより慎重に検討する必要があります。特に社員さんにとって利益に働くことであればなおさらです。仮に導入してから問題が明らかになったとしても、不利益変更はまずできないものだと思っておいた方がよいでしょう。

よって制度つくりをする際には、制度化のメリット・デメリット、効果とリスクを徹底的に見極めるとともに、多少融通の利くものにしておいた方が無難だと心得ましょう。

そして制度つくりに際してもっとも気をつけておかなければならないのは、制度をつくって、それをもって社員さんを縛ろう、強制しようといった心根であってはならない、ということです。

制度は、会社と社員さんの約束であり、共存の証しであり、互いによりよい関係を構築するための土壌といった考えが根底になければなりません。制度検討にあたっては、そのような心根で、上記2点に特に留意をしていただき、素晴らしい制度を構築していっていただきたいと思います。


No.302 新年

1000nen

2016/01/05 09:00:00

 みなさん、明けましておめでとうございます。今年第1回目ということで、昨年に引き続き1月1日の日本経済新聞から、日経新聞の年間テーマをご紹介してみたいと思います。

私が日経新聞の解説を始めて今年で9年目になりますが、私の記憶が正しければ、初めて2年連続で同じような内容のテーマとなりました。昨年が「ターゲット2020」で、今年が「2020ニッポンの道しるべ」。日経新聞が2020年という年をかなり重要視していることがわかります。

恒例となりました“干支”の解説は来週詳しくご紹介しますが、確かに今年は中期的にみて重要な年となりそうです。その点において、今年を含めた5カ年計画は、非常に重要な意味を持つのかもしれません。ぜひ楽しみながら立案していただければと思います。

また、当日1面トップ記事では、「目覚める40億人の力」として、世界人口の2分の1を占めるアジアの“ひと”に着目しています。「グローバル経済のけん引役として、国際秩序の変革者として、文化・芸術の創造者として」の役割を期待しているようです。

国内的にも、「解き放て群集の力~知恵を集めて夢をかなえる」と、ここでも“個”を核とした取り組みにスポットライトを当てています。自分の天分を全うしようとしているたった一人の人たちの取り組みが、少しずつ社会を、世の中を変えようとしている、そんな取り組みが紹介されているのです。

これらの記事を読み終えたとき、

「優れたリーダーの登場など期待してはいけない。ましてや明日から急激に状況が好転することなどありえない。結局は、一人ひとりが目の前のことごとに精一杯取り組み、自分が好きなこと、できること、得意なことで、社会に価値を提供していくしかない」

と、強く感じました。

「今の今、自分にできることに全力で取り組む」

この当たり前のことを、各自が実践すれば、それが「ニッポンの道しるべ」となり、その力が結集できたとき、世の中は初めて良くなる方向に大きく動き始めるのだと・・・

2016年の年頭にあたり、お互いに自分の天分を見詰め、今の今、できることに全力を尽くす決意をもちましょう。みんなで、社会を、世の中をよりよくしていきましょう!

今年もどうぞ宜しくお願いいたします。


No.303 干支

1000nen

2016/01/12 09:00:00

 今日は、先週お約束した今年の“干支”の解説をしましょう。

今年の“干支”は「丙申(ひのえさる)」です。

「丙」は、陽気・活動力が一段と伸張して、盛んに発達していくことを意味しています。よって積極的に活動していくと良いでしょう。また、事業も進展しやすい年回りといえます。ただ山を登れば下りもあります。有頂天になっていると、陰気が入り込んできますので、注意が必要です。「好事魔多し」と認識しましょう。

またこれまで行ってきたことの結果が明らかになり、はっきりとしてきます。これまでに良い種を撒いてきた人は、楽しみにしておいてください。あまり良い種を撒いてこなかった人は、今年の、それもできるだけ早い時期にその原因を摘み取り、これまでのマイナスを補って余りある新たな正しい行動を取っていきましょう。

ただ闇雲に行動すれば、単に混乱を招くだけです。よって軸となる考えをきちんと持つことが大切です。その意味において、経営理念がより重要であり、その浸透を図っていく必要があります。経営理念の実現に向けて、強いリーダーシップを発揮していきましょう。

「申」は、樹木の幹枝が茂り、果実が固まっていく様子を表す象形文字です。またすくすくとまっすぐに「伸」びていくことを意味しています。その意味において、「丙」と同様に、これまでの頑張りが形となって現れてくると言ってよいでしょう。

但し、伸びるのは良いことばかりではありません。悪いことも伸びてしまいます。よって、早いうちに悪い芽を摘み取り、良い芽を育てていくという姿勢が大切です。

また「申」は「完熟」とまではいきません。完全に熟すのは、実は来年です。その意味において、今年の頑張りが、来年の成果となって現れてきますから、心して今年の経営にあたりましょう。

いずれにしろ、ここ数年の停滞、紛糾していたものが良い方向に動き始める年であるようです。その大きな流れを我がものとすべく、改めて自身の行動を律して、良い成果をあげていきましょう。

今年1年が、皆さんにとって良い年であることを、心よりお祈りします。


No.304 営業

1000nen

2016/01/18 09:00:00

 このところ、営業に関する相談を受けることが多くなってきました。ひとつに、将来に対する不安もあるのでしょう。

一方で、「営業はどうも苦手で」という方も多いようです。

そんな方に私がまずお伝えするのは、

「真の営業とは、嫌がる人に無理やりハンコを押させる活動ではなく、お願いですから当社とお付き合いしてくださいと言っていただけるようにする活動」

ということです。営業というと、その経験の少ない人にとっては、特に前者のイメージが強いようです。その結果、二の足を踏むことになっているのです。しかし本当に必要な営業活動は、後者のような結果をもたらすものである必要があります。

そのために必要な発想は“売れる仕組み”を作るという考え方です。理想は「黙っていても売れる」「お客様から門を叩いてくれる」状態を作ることです。

その方法は無論ひとつではなくさまざまな視点がありますので、この紙面ですべてをお伝えすることはできません。そこで今日は、そのうちのひとつの視点である「紹介のネットワーク創り」について、そのヒントをお伝えしましょう。

紹介は、自社が提供する商品・サービス・機能・役割に対して満足していただいている方からしかいただくことができません。よって何よりも、「目の前のお客様にご満足をいただいている」ことが大前提です。

次に、満足いただいている方が、すべてご紹介をいただけるとは限りません。性格や生い立ちなどによって、その熱量には大小があります。みなさんの身の回りにいらっしゃいませんか?自分のお気に入りを「あれはいいぞ」「お前も使えよ」などと紹介してくださる方・・・。まさにそのような方は「紹介することそのものが喜び」の方であり、紹介の熱量が最大の方といえるでしょう。ただし、自社の紹介をいただこうと思うならば、あなたがその方のことに好意を持っていることが前提です。欲得だけで動けば、どこかでしっぺ返しを受けることになりかねません。

最後に、その方が持つ同業、ないしはその業界に影響力を持っておられる方に紹介をお願いすることになります。その際のポイントは、「今の今、自社がその方々に対して何をもって貢献することができるか?」が明確であることです。会社ないしはご自身が好きなこと、できること、得意なことで、「何が貢献できるか?」・・・。その明確化が仕組みつくりの入り口となります。一度ぜひ、検討してみてください。

それ以外の視点は、いずれまたどこかで・・・


No.305 使命

1000nen

2016/01/25 09:00:00

 先日、あるイベントで、日本のファーストレディー・安倍昭恵さんのお話をお聴きしてきました。

「家庭内野党」を標榜する方だけあって、柔らかな口調からは想像し難いアクティブな活動をされている方でした。

しかしその原点は、第一次安倍内閣が満足な結果も残せずに終焉してからの話なのだとか。閣僚経験もないまま、望みに望んだ首相就任を果たすことが亡くなった父親を見、「来たチャンスは掴まないと二度とない」と、請われるままに就任したものの、激務の中で高校生のころからの潰瘍性大腸炎を再発し、志半ばで退任。それまで応援をしてくださっていた方々が次々と去っていく中で、「こんなに一生懸命やっているのに、なぜ?」と世の無常を感じられたのだそうです。

首相官邸を去るとき、病院との掛け持ちで十分な引越し作業ができない中で、幼いころからの友人が駆けつけ、何も言わずに手伝ってくれた。そのときに「辛いときにはどんな言葉よりただただそばにいてくれるだけでいい」ことに気付き、東京に出てきて寂しい思いをしているかもしれない、首相の地元・山口の人たちになにかしてあげることができないかと考えるようになり、その中の取り組みのひとつとして、山口の食材を使って、山口の人が集まって語らいあうことをできるお店をつくろうとされたのだそうです。

それまでの彼女は、「政治家の嫁として、こうしなければならない」という枠の中で汲々としていたのが、先の気づきの中で、その枠を外してみたら、「自然とやるべきことが見えてきた」といいます。

当初、「元首相婦人が居酒屋とはいかがなものか」との批判は根強くあったそうですが、「1年やって赤字ならやめる」「店ではお酒を飲まない」ことを条件として許され、晴れて開店。飲食をやってことがない人の集まりとのことですが、今でも閉店することなく続けられています。

そんな彼女の言葉の中で、特に印象的だったのは「これまで世界は、強い者たちが話し合ってもうまくいかなかった。これからは弱い者たちが手を取り合って、何ができるかを考える時代ではないか」との言葉でした。「家庭内野党」の面目躍如というところでしょうか。

そしてその根底には、「神様、どうぞ私を使ってください。能力はないけれど、一生懸命やりますから」という、失望の中で得た思いがあるとのこと。非常に感銘を受けるとともに、私自身もその通りだと感じました。

家庭内野党に清き一票を入れてみたい、そう感じたお話でした。


No.306 コラボ

1000nen

2016/02/01 09:00:00

 どちらかというと「自前主義」で、これまでは何でも自社内で完結することが多かったわが社ですが、このところ、他社とのコラボレーションを進める企画が増えてきました。変化の流れが一層早まる中での、必然的な変化なのかもしれません。

たまたま先週は、そのうちの3つの企画に関する打ち合わせが重なり、慌しい時間を過ごすことになりました。そして、思惑の異なる者の調整の難しさを感じる時間でもありました。

難しさの第一は、前提となる“常識”が異なることです。社内では当たり前でまかり通っていることが通じないのです。ある程度話は進むものの、ともやもやしたものがぬぐえない。その原因を探ってみると、根本的なところの考え方が違っていた、という感じです。如何に“常識”というものがはかないものかということを痛感することができました。

第二に、“利害”が相反することです。元々、それぞれの企業が存在する目的が異なるのですから、当然といえば当然です。そこにはどうしても“折り合い”というものが必要となりますから、調整は難しいものにならざるを得ません。

ただその調整のプロセスは、「この会社は、本当に自社が組む相手として相応しいか」を見極めるための、避けては通れない大切な儀式であると思います。

ぎりぎりのところまで組むことを前提に話を進めていきます。その中で、お互いが譲歩しつつも、お互いの利益を最大限に確保しながら折り合いをつけることができる相手もいますが、議論を繰り返しに繰り返した結果、「とても魅力的な会社ではあるが、当社が組む相手ではない」という結論に達する相手もいます。

これは相手の善し悪しではなく、あくまでも相互の関係性からくるものであり、「超えられない壁」といってもよいものだと思います。また、どれほど魅力的な相手であっても、無理して付き合えば、いずれ望ましくない結果がでることになる、そういうものだと思います。

一方で、無理してでもお付き合いすることが、自社の成長・発展に寄与する場合もあるでしょう。もうひとつの難しさは、その判断にあるのだと思います。

いずれにしろ、他社との接点は、これまで見えていなかった自社の課題や将来性を明らかにするために非常に有効な手段の一つだと思います。みなさんもさまざまなコラボレーションを検討してみてはいかがでしょうか。


No.307 実践

1000nen

2016/02/08 09:00:00

 先日、以前からお付き合いのある会社と合同でセミナーを行い、2時間ほどお話をさせていただきました。テーマは業務生産性の向上で、私の担当は、当社が取り組んできた内容をご紹介しながらそのポイントを解説する、というものでした。

終了後、共同企画をしたその会社の方々と反省会をしたのですが、「よくあそこまで赤裸々にお話になられますよね」との言葉をいただきました。“赤裸々”というほどの内容ではなかったとは思うのですが、第三者からはそのように思われるようです。

ただ、自社のことをありのままご紹介することは、私たちにとっては半ば当たり前のことなのです。当社の創業者・佐藤澄男は常々、「いろいろな方から自ら取り組まれてきたことを教えていただいたおかげで今の当社がある。自分たちが取り組んできたことがお役に立つのであれば、どんどんお話をさせていただく」といっていました。そのDNAが私たちにそうさせているだけなのです。

一方で、同じように自社の取り組みをご紹介される方から「どんなに話をしても、実行に移されるのは1割、更に成果が上がるまでやり続けることができるのはそのうち2~3割」というお話をお聴きしたことがあります。要するに100人に2~3人しか成果を出すことができない、というのです。

初めてその話をお聞きしたときには「さすがにそんなに少なくはないだろう」と思ったのですが、今ではそれほど大きな違いはないのではないかと感じています。それほど「いい話を聴いた」で終わってしまう人は多いものです。しかし、実行しなければ何も変わらない・・・

また「取り組みは始めるのですが、なかなか長続きができなくて」といったお話もよくお聴きします。しかしこれは最悪で、「やる」と決めて、「やらない」ことを許すことは、「会社の指示・命令など、聴かなくてもよい」という教育をしているようなものだと認識する必要があります。

もちろん、すぐに成果が出るようなケースは少ないでしょう。また新たな取り組みは、これまでからすれば「余分な仕事」。やってもやっても成果が出なければ、やりたくなくなるのは人の常です。

しかしそれでも「必ず成果は上がる」と信じてやり続けることによって、「できない理由」が明らかになり、「どうしたらできるようになるか」の知恵が湧いてくるもの。「やる」と決めたことを継続して実践することでしか新たな成果を上げることはできないのです。

ただ、「何でもかんでも」は困ります。限られた時間の中で、優先順位というものがあるのです。そうでなければ現場が疲弊してしまいます。そしてその選択の善し悪しが、後の成果を決定してしまうものなのです。

・よい話を聴いたら、今取り組んでいる内容を棚卸し、優先順位を付け直す。

・優先順位が高いと判断したら即実践する。そして成果が出るまでやり続ける。

・但し同時に、やめることも決める。

自社をよりよい会社にするためは、このような姿勢が必要なのだと思います。


No.308 生産性

1000nen

2016/02/15 08:25:00

 これまでも何度か労働生産性をテーマにお話しましたが、先週も生産性に関わる相談をお受けしましたので、今回はそのときにお伝えした、少し具体的な対応についてお話したいと思います。

労働生産性は、付加価値/総労働時間で算出されます。よって生産性を向上させるには、一人当たり付加価値を向上させることと同時に、一人当たりの労働時間を短縮するという、2つのテーマに取り組むことが必要となります。

まず後者について、最も効果的な方法は、「枠をはめる」ことです。厚生労働省は、1ヶ月あたりの残業時間を、できれば45時間以内、最大でも80時間という基準を示しています。また「残業ゼロ」を標榜している会社もありますね。いずれにしろ「これ以上働いてはだめ」という制約を設けなければ、時短はなかなか進まないものです。

前者については、例えば10年前と比較して、お客様も変わっていない、商品も変わっていない、売り方も変わっていないとすれば、付加価値は落ちて当たり前だと考えた方がよいでしょう。実際に周りを見渡しても、伸びている会社は確実にビジネスの中身を変えてきています。ディズニーランドが3年連続で値上げしたようですが、確実に中身を変え続けていますし、値上げをしたからといってお客様はそれほど離れていかないでしょう。しかし、お客様も、商品も、売り方も10年一昔の会社で、伸びているところを見つけるのは難しいものです。

一方で、生産性を高めるには3つの方法があります。それは

 ① 付加価値↓ + 総労働時間↓

 ② 付加価値↑ + 総労働時間↑

 ③ 付加価値↑ + 総労働時間↓

です。既にご理解いただけていると思いますが、理想は③です。この理想を実現されている会社にはいくつかの共通点があります。

ひとつは、“未来投資時間”をきちんと設けられています。総労働時間の中において、少なくとも5%、できれば10%は“未来投資時間”に使いたいものです。例えば社員20人として、そのうち1~2人は、今の売上には後見しないが、将来の売上を作るための時間を使っている、というイメージです。もちろん、それこそがトップの仕事ともいえます。

もうひとつは、社員さんが労働時間以外で、自らを成長させるための時間を設けているということです。自分自身を成長させることに喜びを感じている社員さんであれば、新たな付加価値を見出すこともできますし、今の業務の効率を高めていくこともできます。逆に、自己成長意欲の低い人では、生産性向上を実現することは難しいでしょう。

いずれもトップの意思決定と動機付けがなければ実現できないことです。ぜひ高い生産性を実現するための行動を起こしていただければと思います。 


No.309 生きる

1000nen

2016/02/22 09:00:00

 以前にもご紹介した、福岡の健康道場「コスモポート」の吉丸先生のお話をお聴きしてきました。http://www.cosmoport.jp/

今年82歳になられるのですが、とてもお元気で、お話をお伺いすると、いつも元気のお裾分けをしていただくことができます。今回も大変良いお話をお聴きできましたので、皆さんにお裾分けしたいと思います。

「人間はもらいっぱなし、与えられっぱなし」

人間は、お日様から明るさをいただいています。暖かをいただいています。皆さんは呼吸をしています。新鮮な空気を吸って、体の中にあるいろいろな廃棄物を吐き出しています。その排気ガスを処理してもらっているのですね。さあ、皆さんはお返しをしておられますか?誰も何もお返ししていませんね。もらいっぱなし、与えられっぱなし。

皆さんは、お母さんから毎日、毎日お乳をいただきました。お母さんに毎日毎日おしめを替えていただきました。覚えている人はいますか?お母さんからいろんなことをしていただいたの、すっかり忘れてしまっている。もらいっぱなし、与えられっぱなし。

私たちは、やかんがなければ湯が沸かせません。お茶碗がなければ、熱いお茶をいただくことはできません。皆さんは、先人の知恵のおかげで生活できているのに、そのありがたさを当たり前に感じてしまっている。もらいっぱなし、与えられっぱなし。

このように「生きる」とはもらいっぱなし、与えられっぱなしなんです。だから自分でできることでお返ししないといけません。

皆さん、ものをいただいたら嬉しいですよね?嬉しいなら笑わないと!笑えば“顔施”になります。笑顔はお金の要らないお布施です。まずは笑いましょう!

またどうせなら“もらい上手”になりましょう。お日様は明るさや暖かさを、あなたにはあげるけど、あなたにはあげない、って言いますか?いいませんよね。そう、神様は分け隔てがないんです。みんなに平等に愛と喜びを与えてくださっている。ならば“もらい上手”になりましょう。もらうか、もらわないかのスイッチは、あなたが持っているんですよ。

そしてもらったら出す。大事なのは「いいよ」と言われたら、「はい」と素直に実践すること。もう皆さんは幼稚園や保育園でその大切さを学んでますよ。一緒に歌を歌いましょう。

♪結んで(入れて) 開いて(実践して) 手を打って(話し合って) 結んで(入れて)

 また開いて(実践して) 手を打って(話し合って) その手を上に(末広がり!)

まずはもらいっぱなし、与えられっぱなしであることを自覚しましょう。その上で“もらい上手”になりましょう。そして喜んで、笑って、できることはすぐに実践しましょう!


No.310 ことば

1000nen

2016/02/29 09:00:00

前回に引き続き、吉丸先生に教えていただいたお話をお伝えしたいと思います。今日は、「ことば」についてお聴きした内容をまとめてみました。

「何か荷物を送ったとしましょう。その宛名の人がその荷物を受け取らなかったらどうなりますか?送り主に帰ってきますね。言葉も一緒です。悪口を言って、相手が受け取ってくれなかったら自分に帰ってきてしまう。悪口を言うということは、自分を一番傷付けているということです。」

「心で思っても一緒ですよ。だからよからぬ言葉が浮かんだら、心の中で「キャンセル!」と叫びましょう。」

「逆に、良い言葉を使えば、一番喜ぶのは自分です。良い言葉を使いましょう。特に人間が好きな言葉は「大好き!」と「ありがとう!」です。宇宙の法則は“倍返し”です。良い言葉を使えば、自分に倍になって帰ってきます。」

「良い言葉の三大要素は、“素直さ”“明るさ”“暖かさ”です。

 まずは、「はい!」「あっ、そうか!」という素直な心、肯定の言葉ですね。

 そして、相手を包み込むことができる暖かい心。モノが生育・発展していくためには、なんといっても暖かさが必要です。

 もうひとつ、相手を照らす明るい心。明るいところは透明です。澄んでいます。そして何事も明確です。淀んでいません。

 「素直で、明るく、暖かく」を心掛けましょう。そして、「あの人にちょっと会っただけで元気になれる」と言っていただける人になりましょう。」

「人生には、天使のささやきと悪魔のささやきがあります。皆さんは、自分のことを信頼してくれているところにいきたいですか?それとも信頼してもらえていないところに行きたいですか?当然、信頼されているところに行きたいですよね。天使も同じです。だから悪魔のささやきには耳をふさぎ、天使の声だけを受け容れましょう。天使は喜んでやってきてくれます。天使が好きな言葉は、肯定の言葉です。「すべてはうまくいっている!」ですよ。」

いかがでしたか?もっともっとお伝えしたいことはありますが、今日はここまでにしておきましょう。来る4月2日(土)に、千年経営研究会主催の講演会を予定しております。続きはそちらでじっくりとお話できればと思っています。詳細は後日ご案内します。ぜひご予定ください。お待ちしております。


No.311 こだわり

1000nen

2016/03/07 09:00:00

 先日、久しぶりに30年来のお付き合いのある寿司屋さんに行ってきました。お付き合い、といっても常連客というのではなく、遊び仲間だったのですが・・・

久しぶりに訪れたその店は綺麗に改装され、昔の面影は、その店の広さとテーブルの配置だけ、といった感じでした。また以前はお願いすればおつまみとして寿司ネタを出してくれていたのですが、今では「寿司しか出さない」のだとか。さらにさらに、1組のお客様の人数は最大で4名まで、また2組目は最初のお客様が入店されてから1時間以上空けてからで、たとえ席が空いていてもお断りするのだそうです。「寿司をじっくり味わってもらいたい」

かつての常連客の中には、その対応の変化についていけず、離れていってしまった方もいらっしゃったとのこと。それでも彼は意に介しません。

「これが元々やりたかったやり方。やっと実現できたんだ。」

と、その笑顔に後悔の影は一切ありませんでした。

私もそこまで詳しい話を聴いたことはなかったのですが、小学生のときにお父様を亡くし、お母様が職人を雇いながら、お父様が始められた寿司屋を守り続けられ、19歳のとき、その職人さんがお辞めになることになったのを契機に、そのまま継がれたのだそうです。

「簡単に考えていたが、まともな修行もしていない19歳には荷が重かった」といいます。どんどんお客様が離れていき、「残ってくださった常連さんに食べさせていただいたようなもの」だったそうです。

一方で、目の前にお客様がいらっしゃっても、出前の注文が入れば対応しなければいけない、さあこれから腕を振るおうとしたときに、新しいお客様が入ってこられれば対応しなければいけない。少ないお客様の中でも、「後から入ってくるお客様を優先することに納得がいかなかった」のだとか。3年ほど前から始めたという今の方式は、そのような想いが原点にあるとのことでした。

結果は・・・「やってよかった」

本当にお寿司が好きな人だけが残り、最低でも1時間、他のお客様がいない空間を好む人が、同じような感性をお持ちのお客様を紹介してくださる。来店や出前をお断りしても、「次空いているのはいつ?」と、怒るどころか、こちらを気遣ってくださる。「これほどの幸せはない」といいます。

「まだまだ発展途上」とはいいますが、間違いなく将来像は明確に描けていると感じました。

自分の好きで、得意で、他にまねできないことをする。経営のあるべき姿を見せてもらったような気がします。


No.312 行動

1000nen

2016/03/14 09:00:00

 先週の水曜日、9ヶ月間の日程を終え、岡崎商工会議所様主催の「ひとづくり塾第10期生」が無事修了しました。今年も19名の方がそれぞれの思いを乗せて、高らかに決意表明をされました。10回目ではありますが、毎回新鮮な気持ちでお聴きすることができ、私自身も身が引き締まる思いがします。

修了式の挨拶の中、私はひとつの質問を投げ掛けました。

 「ひとづくり塾に参加して、前と比べて忙しくなったと思う人」

どのような結果になったと思われますか?結果は、全員が手を挙げられました。これは当然のことといえば当然のことです。なぜならば、さまざまなセオリーを学ぶことによって、これまで気づかなかった問題に気づいてしまったからです。

しかし、気づくだけでは忙しくはなりません。そこには「見過ごせなくなってしまった」という要因がなければならないのです。その意味において、今回のメンバー全員が、これまで気づいていなかった問題に気づき、それを見過ごすことなく対処してこられた、ということです。これは大変素晴らしいことです。

一方、手の挙げ方にはばらつきがありました。何の躊躇もなかった方、遠慮がちだった方、迷いに迷ってうえで挙げられた方、などなど・・・。たぶんそこには、この9ヶ月間の思いが詰まっていたのだと思います。

ただ、すぐ挙げたからよく、迷ったからだめ、ということではなさそうです。「この人はよくがんばったなぁ」と心から思える方が、首をひねりながら恐る恐る挙げられていました。その方は、行動は起こしたものの、自分の目指す成果には至らなかったのかもしれません。

逆に、さっと手を挙げられた方の中には、「おや?」と感じる方もいらっしゃいました。どちらかというと他責にされることが多く、自ら積極的に行動の変革を起こすことが少なかった方です。その方はたぶん、やるべきことができていなかったために現場が混乱して、忙しさを作ってしまったのかもしれません。そういえば、近況報告でも、そのような報告が多かったように思います。

いずれにしろ、この9ヶ月間の学びを通して、行動という波風が立ったことそのものに価値があります。海は、潮の満ち引きがあるからよどむことがありません。人もまた、思考と行動という満ち引きがあるからこそ、よどむことなく成長し続けることができるのです。

私たちもまた、たゆまなく正しいと思ったことを行動に移し続けていきたいものです。


No.313 相談

1000nen

2016/03/22 09:00:00

 先日、「相談に乗って欲しいと言われて相談を受けても、どう答えていいかわからないときがある」との相談を受けました。私自身もそのように感じることがあるので、これを機にと、その理由について考えてみることにしました。

結果としては、「答えようがない相談」には、3つの共通点があるとの答えに至りました。

ひとつは、「本気で解決しようとは思っていない」ことです。確かに悩んではおられるのでしょうが、本気になってその状況を打開しようと思われていない場合、まさに「暖簾に腕押し」状態で、その悩みの解決の糸口を探すためにいろいろ質問してみても、明確な答えが返って来ず、結果として何も答えられない、という状況に陥るわけです。

やっかいなのは、本人がそのことに気づいていない場合が多いことです。それは悩んでいる自分に満足してしまっていて、その先に“解決”という出口があることを忘れてしまっている状態ともいえます。

逆に言えば、本気で相談に乗って欲しいと願うのであるならば、まずは「本気になって解決しよう」とする強い意思を固めることが必要なのだと思います。

二つ目は、「すべてを他責にしている」ことです。例えば、自分の顔に汚れがついているとしましょう。それを鏡で見て、一生懸命鏡を拭いているような状態といえます。本当は自分に問題があるのに、そのことを棚に上げて、一生懸命他人を変えようとしているのです。自分が変わらなければ問題が解決しないのに、そこに目を向けようとされない方には、やはり答えを出してあげることはできません。仮にアドバイスをさせていただいても、「あなたは何もわかっていない」という結論になってしまうように思います。

最後に、「何一つ行動を起こしていない」ことです。本当に解決するつもりがあるならば、既に何らかの行動を起こしておられるものです。そのような場合は、その行動の不足する点や過ちが見えてきますから、明確なアドバイスをすることも可能になります。

「いろいろ考えていますが、何をやったらよいかわかりません。教えてください」とおっしゃる方がいますが、たぶんその方は、方法論をご教授させていただいても、行動を起こされる可能性は高くないと思います。アドバイスに従って行動を起こされる方の相談は「いろいろやっていますが、なかなか解決できません」がスタートラインになっているものです。

よって相談を有効たらしめるためには、「本気で」「自責で」「行動する」という3つの条件が必要なのだと思います。


No.314 採用

1000nen

2016/03/28 09:00:00

 先週、2017年度新卒採用向けの会社説明会を開催しました。“売り手市場”といわれる環境を反映してか、昨年に比べて空席が多かったように感じましたが、それでも参加してくれた学生さんは熱心に耳を傾けていただき、ほとんどの方が引き続き行われた一次選考会に参加してくださいました。

この会社説明会では毎年、私は3つのことを学生さんにお話しするようにしています。

第一に、「目の前の仕事に全力投球せよ」ということです。採用サイトなどをみておりますと「やりがいのある仕事を探しましょう」「自分に合った仕事を見つけましょう」などという言葉が並んでいます。そのような気持ちで就職活動をしてしまうと、入社後に「やりがいがなかった」「自分には合っていなかった」という結果が生じ、同じ会社が運営する転職サイトにお世話にならざるを得なくなってしまいます。

元々“やりがい”が保証されている仕事などありません。「これが天職、私の天職」と信じて仕事をする。そうすると自ずとその仕事に“やりがい”が感じられるようになるのです。

元々自分に合った仕事などありません。「これが天職、私の天職」と信じて仕事をする。そうすると自ずと仕事が馴染んでくる。いや、仕事に受け容れられるようになるのです。そもそも仕事は選べるものではありません。人が仕事を選ぶのではなく、仕事が人を選ぶのです。よってやりたい仕事があるならば、その仕事に選ばれる人間にならなければならないのです。

第二に、「何事にも好奇心を持て」ということです。一方で「まな板の上の鯉にはなるな」とも言っています。もちろん、上司や先輩からの指導は素直に受けなければなりません。しかし「まな板の上の鯉」では、その指導を身に着けることができないのです。

上司や先輩の言葉一つ一つに関心を持ち、疑問を持ち、「もっと知りたい」「もっと学びたい」という積極的な気持ちで上司や先輩の指導に向き合うことができなければ、どんなによい指導を受けたとしても、自分のものにはなりません。

その大前提となる仕事への姿勢が「何事にも好奇心を持て」ということなのです。好奇心こそ、成長の源泉だと思います。

第三に・・・

この話はまた来週に致しましょう。

新卒採用が本格化してきました。よい人材に出会い、縁をつなげていただくことができることをお祈り致します。


No.315 スタート

1000nen

2016/04/04 09:00:00

先週の土曜日、私が福岡に単身赴任した2011年以来のことですから、指折り数えてみれば実に5年ぶりに千年経営研究会の総会を開かせていただくことができました。設立時からのメンバー、月例会での馴染みの顔、また今回始めての参加者と、顔ぶれはさまざまでしたが、久しぶりの総会の実施により、気持ちよく8年目のスタートをきることができました。一方で、実は3回しか総会を開いていなかったということに驚きもありましたが・・・。

5年前の総会時とは異なることがいくつかありましたが、その中でも大きな違いは、多くのメンバーが社長になられたことです。設立時には、社長の肩書きを持っていたのは2名だけでした。それが当時のメンバーだけに限れば、半数近くが承継されています。

元々この会は、岡崎商工会議所の経営講座「ひとづくり塾」卒業生と、三好商工会青年部で私が講演させていただいたセミナーの参加者がベースになっています。結果として、そもそもは後継者の集まりであったといっても過言ではありません。

よって当時議論されていたのは、「どうやって後継すべきか?」といった、引き継ぐ側の問題がほとんどでした。しかし近年、そのテーマでは“昔話”にしかならなくなってしまったメンバーが増えてきていました。ところが、少しずつの変化であったため、その点を明確にした会の運営はなされていませんでした。お恥ずかしい話、まさに「ゆでがえる」状態になっていたことを否定することができません。

実は今回の総会にはもうひとつの顔がありました。本の出版記念講演会です。日本実業出版社から出された「中堅・中小企業経営者のための事業承継対策の立て方・進め方」という本で、こちらは譲る者、すなわち現経営者に読んでいただくために書かせていただいたものです。これにより、これまで譲る人向けと引継ぐ人向けの話が混在していたものが、一定の線引きをすることができました。今後の会の運営は、その違いを明確にしながら進めていくことを、総会でも承認されました。

具体的には、譲る側である現経営者を主対象とした会員限定のプレミアム講座(私が勝手に呼んでます)と、これまで同様、一般参加OKの後継者を主対象とした月例会に分けて開催することが決まりました。下記のスケジュールで行いますので、ぜひご参加ください。

スケジュールはこちら>http://1000nen.info/daily-schedule/

いずれにしましても、新しい年度を迎えました。今年もより多くの方と学んでいけることを願っています。ぜひ万障お繰り合わせの上、ご参加いただきますよう、この場をお借りして、お願い致します。


No.316 仲間

1000nen

2016/04/11 09:00:00

昨年、開業5年未満の税理士の方を対象とした経営講座「きどう塾」を開催しました。“きどう”には、開業後にスムーズな事務所運営ができるよう、“起動”“軌道”“喜働”などといった意味を込めています。
 
東京・大阪・広島・福岡の4会場でそれぞれ5回に亘って開催したのですが、最初に修了した福岡にて、先週、OB会が実施されました。残念ながら受講者10名のうち、4名しかご参加いただけなかったのですが、2時間の予定の振り返りの時間が、1時間ほど延長し、かつ懇親会の場でも熱い議論が繰り広げられました。やはり、同じことを学んだ仲間、切磋琢磨の期間を持つ仲間というものは、なにものにも替え難いものがあるようです。
 
とても嬉しく感じたのは、皆さんが塾で学んだことをきちんと実践され、実践されたからこそ感じることができる課題に真摯に向き合われ、かつ「OB会で皆の意見を聴こう!」と、事前にメモを認めてこられていたことです。手前味噌ではありますが、「よい活動をさせていただいている」と感じた次第です。
 
また具体的な実践事項の発表は、私にとっても目から鱗の話も満載で、私自身、勉強させていただくことができました。「水たらいの原則」ではありませんが、やはり“あげる”が先に立てば、水は自然と手元に寄ってくるものなのだと思います。
 
一方で、「その話は既に講座の中で話したはず」という悩みもありました。そのときにはそれほど重要だとは思わず、聴き逃されていたのでしょう。ひとつに、「前に向かって進んでいれば、課題は変わる」ということでしょう。し、一方で「何度も、何度も伝えていかないと、伝わらないことがある」ともいえるかもしれません。今回の発表を通じて、大切なことは何度も何度も、繰り返し繰り返しお伝えしていかなければならないことを改めて感じました。
 
いずれにしろ、“共通の言語”を学んだ者の重要性と、その仲間と語り合う場の大切さを痛感しました。千年経営研究会も、まさにそのような取り組みです。あまりご参加になっていない方も、これを機に足を運んでみませんか?
 


No.317 両立

1000nen

2016/04/18 09:00:00

4月14日(木)の日経新聞に、「大塚家具、社長側控訴せず~法廷の親子対決終結」という記事が掲載されました。大塚家具創業者の大塚勝久前会長が、長女の大塚久美子社長が役員を務める資産管理会社に社債の償還を求めた訴訟で、敗訴した久美子氏側が控訴せずに判決通りに17億円支払い、法廷対決を終わらせた、という内容です。
 
事業承継の最悪のケースとして心を痛め、何とか円満解決できないものかと思っておりましたので、せめて法廷闘争だけでも終結できたことは、胸をなでおろす思いです。
 
しかし現状は決して好ましい状態ではないようです。大塚家具本体の業績が悪いのです。もちろん「ビジネスモデルの転換期で、軌道に乗るまでには時間がかかる」(同社説明)のは確かでしょうが、そもそもこの転換が正しかったのか、疑問が残ります。
 
このお家騒動が明らかになってきた際、私は「両立すればよいのに」と思っていました。一部の店舗は高級店として残し、不採算店舗はブランドを変えて低・中価格帯を扱う店舗に衣替えをすればよい、と考えたのです。
 
確かに高級家具は売れなくなっていたのかもしれません。一方で、IKEAやニトリの成長に、低・中級品市場の魅力を感じられたことも、わからないではありません。しかし高級家具の売上がゼロになったわけではありませんでした。また濃厚な接客を喜ぶ顧客層もいなくなったわけではなかったのです。それを彼女は全否定してしまった。これまでお世話になったお客様を、自社生き残りのためにばっさり切り捨ててしまったのです。それを思うとき、悲しい気持ちを抑えることができません。
 
そもそもこの親子、本質的には何も違っていなかったのだと思います。「よい家具を多くの人にお届けしたい」との思いは同じだったはずです。お互いを認め合うことができれば、違った道があったに違いありません。もったいない話です。
 
今月22日、勝久氏が新たに立ち上げた家具販売会社「匠大塚」が営業を始めるのだそうです。かつての大塚家具の販売手法を踏襲したやり方で・・・。
 
私はそれほど遠くない将来、“両立”が正解であったことが証明されるものと思っています。そのとき、改めて事業承継における“事業”に対する親子の姿勢のあるべき姿が立証されることと思います。
 


No.318 偏見

1000nen

2016/04/25 09:00:00

先週の21日、今回執筆させていただいた「中堅・中小企業経営者のための事業承継対策の立て方・進め方」の出版記念セミナーを開催させていただきました。受講者数は26名と少人数でしたが、旧知の方は3名しかおられず、私どもの考えを新しい方に知っていただくよい機会となりました。
 
一方で、アンケート結果はちょっと微妙なものでした。少々自慢話になりますが、通常のセミナーでは5段階で3以下の評価を受けることはそんなにないのですが、今回は5名の方が3以下。その理由は「思っていた内容と違った」「自社の実情には合わなかった」というものでした。
 
実はこの結果、執筆時に私が感じていた苦しみの理由に近いものだと思います。本来事業承継は十社十色。もちろん基本的な考えはあるものの、具体論は各社それぞれに異なります。よってコンサルティングの現場では、基本を軸にしながらも、相談される方の実情に応じて説明の仕方も、落としどころも変えていくことになります。
 
しかし書籍となるとそうはいきません。十社十色の事例を記載するわけにはいかず、すべてのケースを説明することもできず、どこか言葉足らずであったり、「かゆいところに手が届かない」ようなモヤモヤ感が残ることになってしまうものです。今回の低評価の受講者の方においても、同様の状況であったように思うのです。
 
アンケート結果をみて落ち込んでいる私を察してか、共著のメンバーが声を掛けてくれました。彼曰く「これほど偏った内容を、それもここまで言い切っている本はどこにもない。だからこそ強く共感される方がいる。その一方で、「それは違う」と反発する人もいるでしょう。でも「違う」ことがわかるから、自ら考えようとする意思が生まれるものです。それがこの本の魅力だと思います」とのこと。
 
“偏った”との表現に、苦笑いを隠せなかったものの、「これでいいんだ」と得心できましたし、ずっと感じていたモヤモヤが、すっと晴れていくのを感じました。彼との共著で、本当によかったと思います。
 
いずれにしろ、“偏見”本が完成しました。ぜひ一度お目通しいただければと思います。また事業承継に苦しむ方々にぜひご紹介いただき、バイブルとなるか、または反面教師となるかは別として、問題解決の糸口をご提供いただければと思います。
 
またこの本の誕生により、今月から千年経営研究会が新しい取り組みをスタートさせます。ご関心のある方は、ぜひお声掛けください。お待ちしております。
 


No.319 今

1000nen

2016/05/09 09:00:00

先日、ある本を読んでいたところ、次のようなフレーズに出会いました。
 
「未来が過去を決定し、現在を生成する。過去が今を決めるのではなく、未来というものを置くことによって過去が意味づけされ、今が決まる」
 
これは、ドイツの哲学者・マルティン・ハイデッガー(1889-1976年)の言葉なのだそうです。
 
昨年10月に50歳となり、還暦までの10年をいかに過ごすべきかを考えることが多くなっていた私にとって、この言葉は衝撃的であり、かつ物事がすっきりと整理されたように感じました。
 
私のこの50年は、とても寄り道の多いものであったと思います。和菓子屋の後継者として生まれ育てられながらコンサルティング会社に就職し、いつのまにかその仕事を天職と考えるようになりました。しかし、なぜか社内の総務部門を引き受けることになり、コンサルティングの現場を離れることになります。その後は豊田支店の立ち上げ、既存部門のてこ入れ、そして福岡事務所開設をきっかけに、全国の会計事務所をお客様とする部署に異動になったりと、社内を転々としてきたのです。
 
社外においては、倫理法人会の特別講師を拝命したり、(これが私の人生で最も大きな出来事のひとつですが)この千年経営研究会を立ち上げたり・・・
                                                                              
以前、ある方から「亀井さんはいったい何屋さんですか?」といわれたことがありますが、「自分でもよくわからない」というのが正直なところだったのです。
 
しかし前出のハイデッガーの言葉と出会って、とてもすっきりすることができました。やはり私の“未来”は、「多くの企業で好ましい事業承継を実現していただく」ことにあります。その“未来”に軸を置いたとき、“過去”のことごとの優先順位が明確になり、“今”やるべきことが体系立てて整理することができたのです。
 
もちろん、これまでも同じような結論に至ったこともあったように思いますが、今回ほど明確になったことはありませんでしたし、これほど確信をもつことができたのも初めてのことであるように思います。
 
「未来をどこに置くかによって今が決まり、活かすべき過去が明らかになる」
 
皆さんも一度、このような視点で“今”を考えてみてはいかがでしょうか。
 


No.320 競合

1000nen

2016/05/16 09:00:00

先日、当社のコンサル先に、一部分において競合するシステムが導入され、その導入研修に同席させていただくことになりました。
 
導入されたのは、複数あるメニューのうち、当社にはない機能でしたが、当社システムと重複するメニューも存在するため、心中は穏やかざるものがありました。
 
しかし説明を受けてみると、その機能は大変よいもので、そのお客様のために役立つことが明らかなものでした。3時間の研修が終わった頃には、逆にその機能がきちんと定着するよう、サポートして差し上げようという気持ちになっていました。
 
そもそも私どもの経営理念は次のようなものです。
 
「私たちは“自利利他”の精神に基づき、お客様の明日への発展のために、今日一日を勝ちあるものとします」
 
“自利利他”とは、「お客様の喜びそのものが、私の喜び」という意味です。
 
そうであるならば、たとえ競合する会社やシステムであっても、そのお客様の明日への発展に資するものであれば、喜んで受け容れる、もう一歩進めて、他に同じような課題を抱えているお客様がいらっしゃれば、ご提案して差し上げる、そういう姿勢が必要なわけです。
 
もちろん、そのように喜ばれるものであるならば、自ら開発し、提供していくことも考えていかなければなりません。しかしそれには時間を要します。その間、そのシステムを利用すれば得られたはずのお客様の成長が止まってしまっては、本末転倒です。
 
今回の出来事を通じて、改めて“自利利他”の精神に立ち返り、お客様にとって最もよい選択は何かを考えて行動し、提案していこうと、強く決意することができました。
 
皆さんも、自社でできることの枠を超えて、お客様のために何かして差し上げられることはないかと考えてみられてはいかがでしょうか。
 


No.321 フォロー

1000nen

2016/05/23 09:00:00

先週は、九州へ出張に行ってきました。昨年9月に西日本統括の任を解かれ、九州の担当ではなくなったのですが、既に個々のお客様の引継ぎは終わっていたため、新規事業の準備に追われていたこともあり、正式な異動のご挨拶をせずにいました。少し時間的な余裕もできてきましたので、遅ればせながらご挨拶周りを、と思い立ったのです。
 
失礼な対応だったにも関わらず、ありがたくもどのお客様も好意的に受け止めていただき、私にとっても楽しいひとときをすごさせていただきました。
 
特に今回お伺いした先は、当社のシステムをよく使っていただいているところが多かったため、たくさんの感謝の言葉さえいただくことができました。
 
一方で、たくさんのご意見・ご要望をいただくこともできました。これは「使っていなければでてこない」内容ばかりで、とてもありがたく、改めて感謝の気持ちでいっぱいになりました。対応困難な内容も含まれていましたが、できる限りその声にお応えしていきたいと思います。
 
いただいた言葉の中で特に嬉しかったのが、「名南さんほどフォローがきちんとしているところはない」との声でした。こちらが力を入れているところを褒められるほど、嬉しいことはありませんものね。
 
また私が不義理をしていたにも関わらず、このような言葉をいただけるということは、当社社員がきちんとしたフォローを実践している証拠です。嬉しさもひとしおだったのです。
 
お客様にとって大切なことは何かを考え、会社方針を打ち出し、それを社員が徹底して実践する。そのことに価値を感じ、感謝していただける。これこそが“商い”の基本なのだと思います。そしてそのサイクルが成り立たなくなったとき、自らの“商い”を根本的に見直す時期が来ているということを自覚する必要があるのだと思うのです。
 
この半年間はお客様に甘えていましたが、これからはできるだけ時間を見つけては、以前からお世話になった方々への御礼参りをきちんとしていきたいと思います。
 
 
 


No.322 営業

1000nen

2016/05/30 09:00:00

先日、「営業実績が上がらない」という会社から相談を受け、アドバイスをさせていただくことになりました。
 
その会社は、パッケージソフトを販売している会社で、お客様などからの紹介もありますが、DMを打ったり、セミナーを開催したりして営業リストを作り、その先に対して営業マンがアプローチをする、という営業方法を取っています。
 
いろいろな視点でヒアリングをさせていただいたのですが、少々気になるところがあって、営業リストを拝見することになりました。さすがソフト販売会社だけあって、営業管理の仕組みは、大変素晴らしいものでありました。しかしその中身と使われ方は、あまり望ましいものとはいえませんでした。詳細は割愛しますが、端的に言えば“雑”な扱われ方をされていたのです。
 
この会社では、まず紹介やDM・セミナーなどによってリストを集め、エリアごとに決められた担当営業マンがアプローチし、その結果を活動した都度営業管理ソフトに入力をし、進捗状況を管理していました。
 
しかし、
 ・アプローチした履歴が残っていない。
 ・「次回提案」と書かれている先の「次回」の記載がない。
といった状況が多々見受けられたのです。ヒアリングしてみると、実際には活動しているのに入力をしていないケースと、一度アプローチしてだめだったら熱が冷め、その後の活動そのものが行われていないといったケースがありました。少し厳しい言い方をすれば、「食い散らかしている」といった状態だったのです。
 
好景気の時代にあっては、このような“狩猟型”営業も、一定の成果を挙げることができるのかもしれません。しかし現在のような環境下にあっては、「一度いただいたご縁を丁寧に扱い、育てていく」といった“農耕型”営業が大切です。
 
その会社には、次のようなアドバイスをしました。
 ・出会った縁を大切にする習慣をつける。営業管理情報は「育てていく」気持ちで、記載情報を充実させていく。
 ・成績が滞ってきたら、新たなリストを求める前に、手元のリストを洗い直す。
 ・ターゲットは、ニーズが明らかな「即決」客、提案が必要な「提案」客、制約条件が解除できなければ契約に至らない「将来」客、そしてまったく見込みがない「没」先に区分する。
 
いずれにしろ、営業リストは営業マンにとって何ものにも代え難い宝物のはずです。その取り扱いをないがしろにするようでは、営業成績が上がらなくて当たり前と認識すべきです。そして“農耕型”でお客様を育てていく、そういう営業が、真に成果をあげることができる営業といえると思います。
 
 


No.323 標準

1000nen

2016/06/06 09:00:00

以前より生産性向上のお手伝いをするようになっていることはお伝えしていると思いますが、このところ、生産性向上が進む組織とそうでない組織の違いのひとつが明確になってきましたので、皆さんにお裾分けしたいと思います。
 
まずは、生産性について確認しておきましょう。生産性とは(成果)÷(投入)によって表される指標です。現在私が取り組んでいるのは『労働生産性』であり、その指標は、(付加価値)÷(総労働時間)で表されます。付加価値とは、おおむね売上高から原価を差し引いた残りと考えていただいていいでしょう。総労働時間は、所定の労働時間などではなく、実際に組織構成員が働いた時間のトータルです。
 
よって生産性向上とは、付加価値拡大と労働時間短縮(時短)の両立を図ることを意味します。今回スポットを当てるのは、後者の部分です。
 
時短とは、平たく言えば、今まで3人でやっていた仕事を2人でできるようにしたり、10時間かかっていた仕事を6時間でやれるようにする、というように考えていただいてよいでしょう。また業務そのものをなくしてしまうという考えもあります。
 
時短を進める方法にはいろいろありますが、今回はその中でも「標準化」について考えます。要するに、標準化が進む組織とそうでない組織の違いです。
 
標準化を進める際に一番足枷になるのは、「できない理由に引っ張られてしまう」ということです。たとえば、「あのお客様は難しい」とか「あの商品は特別だ」といったような発言が、その際たるものです。結局、その“できない理由”によって、組織全体の標準化の取り組み自体が否定されてしまうことが多いのです。
 
よって標準化を進めようとする場合は、「この組織にとって最も効果的・効率的な方法は何か」すなわち理想の標準形を明らかにした上で、お客様や商品、または業務内容をランキングすることが大切です。たとえば、
 
 A:すでに標準に近いやり方になっている。
 B:少し指導・修正は必要だが、標準に移行することが可能である。
 C:将来的には移行したいが、今は大きな制約条件がある。
 D:標準に移行することが困難である。
 
といった感じです。そしていきなりすべてを標準化しようとせず、まずはAからCへと、順次移行を進めていくのです。何より大切なのは「Dは諦める」ことなのです。やっていただくとお分かりいただけると思いますが、Dは意識の中では大きな存在なのですが、数はそれほど多いものではありません。D以外を標準化できれば、相当の効果が出ます。
 
またAを確実に標準化させることによって、組織に自信が生まれ、BそしてCへとチャレンジングに改革が進んでいくようになるものなのです。
 
もし標準化がなかなか進まないということであるならば、このような視点で見直しをしてみてはいかがでしょうか?
 
 


No.324 対策

1000nen

2016/06/13 09:00:00

現在私は、先般出版した「中堅・中小企業経営者のための事業承継対策の立て方・進め方」の出版記念セミナーと銘打って、税理士事務所・公認会計士事務所(以下、会計事務所)向けに事業承継対策のお話をしています。先週、東京で講演し、今週は大阪と福岡でお話させていただきます。秋には地方行脚も行う予定です。
 
会計事務所向けにお話しする意味は2つあります。第一に、以前野村総研が行ったアンケートで、中堅・中小企業の経営者が悩みを抱えたとき誰に相談するかの問いに、実に70%以上の経営者が、会計事務所と答えている事実です。
 
第二に、事業承継対策があまり得意でない会計事務所所が多いという事実です。事業承継というステージで、税理士という税のプロフェッショナルが最も頼りにされるのは、当然相続税ということになりますが、ここに落とし穴があります。
 
国税庁が公開している平成23年度の相続税申告に関わるデータは下記の通りです。
被相続人数(死亡者数):1,253,066人
相続税の申告書の提出に係る被相続人数:51,409人
課税割合:4.1%
相続税申告が必要であった被相続人は、わずか5万人強。それに対して会計事務所は3万件強です。要するに1事務所あたり年間平均2件弱しか相続税申告の実務を経験することができないということです。
 
一方で、手前味噌ですが私ども税理士法人名南経営では、毎年100件以上の申告を行っています。このような事務所は、全国に何件もありますから、一般的な事務所では相続税に関するノウハウやスキルがたまりにくいものなのです。相続税に自信が持てないとすれば、事業承継対策に晩生になってしまうのは、理解できないことではありませんね。
 
逆に、相続税に強い会計事務所にも問題がある場合があります。事業承継対策を相続税対策に置き換えてしまう会計事務所の存在です。中堅・中小企業の事業承継においては、決して相続税対策を優先してはいけません。相続税対策は最後にすべきものなのです。その点に留意が必要です。
 
いずれにしろ、このような状況の中、中堅・中小企業における好ましい事業承継のあり方を、最大の相談相手である会計事務所の方々に学んでいただく意義は大きいと感じています。事実、先週お話させていただいた東京会場では、多くの方から「目から鱗でした」「これからは事業承継対策に積極的に取り組んでいきます」との声をいただきました。これからもこのような啓蒙活動を続けていきたいと思います。
 
そしてもし、自社の事業承継対策に疑問をお持ちの場合は、遠慮なくご連絡ください。お待ちしております。
 


No.325 採用

1000nen

2016/06/20 09:00:00

先週、大阪事務所で内定を出していた2名の学生と面談し、当社への入社の確約をもらいました。そのうちの一人からは、「ここまでしていただいて入らないのは、人間としてどうなのかと思ってしまいます」とまで言ってもらえました。自分たちがやってきたことに間違いはなかったと、一安心したところです。

採用活動は難しいものです。「この子は間違いないだろうと思っていたら、他社にいってしまった」などということは日常茶飯事であり、また逆も然りです。

その原因のひとつに、コミュニケーション上の難しさがあります。「聞き手がどのように受け止めているかがわからない」からです。

人は自分の経験と独自の価値観から「こう伝えればわかってくれるだろう」と思って話をします。ところが聞き手側には2つのフィルターがかかっています。一つは聞き間違いや聞き漏らしといった「受信機の精度」であり、もうひとつは聞き手の「価値観や捉え方」です。話し手にも独自の価値観があるのと同様、聞き手にも独自のそれがあるのです。よって「お互い、まったく違った思いを持っていた」などということは、実によくあることなのです。

これは採用に限ったことではありませんが、コミュニケーションを図る場合は、「話し手は注意深く、聞き手はより注意深く」というのが原則です。採用活動をするたびに、その原則の大切さを痛感するところです。

一方、毎年採用環境は変わりますから、過去の経験が通用しない、それどころか阻害要因になっている場合もあるかもしれません。その点において採用事情は毎年変わるものと認識し、常に最新の情報を入手する努力を怠ってはいけません。

ただ採用活動というものは、やはり人と人との関係構築活動ですから、何よりも“誠心誠意”が一番です。もちろん「採用したい」という“欲”からスタートするわけですが、目の前に座る子が採用したいほど魅力的な子であればあるほど「幸せになって欲しい」と願い、自社でその願いが叶えられると確信できたら誠心誠意に対応し、それでもだめなら、他社での活躍を希う、という姿勢が大切なのだと思います。


No.326 学び

1000nen

2016/06/27 09:00:00

先週の金・土曜日、千年経営研究会の研修旅行が、三好会メンバー主催で行われました。行き先は淡路島。おいしい料理によい温泉と、大満足の旅行となりました。三好会メンバーには、この場を借りて心より感謝します。

さて、研修旅行のメインの目的は、廃寺寸前までいっていたお寺を復活させた淡路島「八浄寺」の岩坪住職のお説法をお聴きすることと、創業140年を超える造り酒屋「千年一酒造」の工場見学でした。今回は、当会と同じ名前を持つ、千年一酒造・上野山専務に教えていただいたお話を伝えしたいと思います。

上野山専務は、元々紳士服屋さんの二代目としてお生まれになり、実際に数年前までは経営をされていたとのこと。詳細は割愛しますが、6年前にお母様のご実家である千年一酒造に入られました。七代目の金婚式のお祝いに駆けつけたところ、「継いでくれないか」とお声が掛かったのだとか。人生、本当に何があるかわかりませんね。

元々淡路島には40以上の蔵があったそうです。しかしほとんどが大手酒造メーカーの下請けで、日本酒のシェアが6.7%しかない現状においては、大手も内製化するしかなく、今では2件しか残っていないそうです。そのような厳しい経営環境、そして右も左もわからない状況の中でいろいろな取り組みをされ、その中からさまざまな学びを得られたとのこと。今回はその中の一部をご紹介します。

・押し売りは絶対にしない。リピーターつくりが大切。

・簡単なことをずっと続けられるかが勝負。

・方法はわかっていても、やらせることができなければ意味がない。できるようになるまで言い続ける。

・お客様を作っても作っても減っていく。作り続けなければならない。

・ストーリーがあると売れやすい。ことを想定してものを作ることが大切。

・何よりも一番を作っていくことが一番。新聞に載るようなことをし続ける。

・成長には、やめる勇気と新しいことをやる気力が大切。

いかがでしょうか。とても学びの多い2時間でした。詳細はまた月例会にてお伝えします。ぜひお運びください。


No.327 地元

1000nen

2016/07/04 09:00:00

先週に引き続き、千年経営研究会の研修旅行でのお話をしたいと思います。今回は八浄寺の岩坪住職のお話です。

岩坪住職は、学校を出るとすぐに高野山に登られ、その後、ハワイでの布教活動にご尽力された後、縁あって、雨漏りが絶えない貧乏寺であった八浄寺の再建を任されることになりました。

しかし八浄寺がある淡路島には主たる産業が漁業と観光しかなく、寺の復興を檀家の布施だけに頼ることは、苦しい人々をさらに苦しめることになってしまうため、何とか他の方法はないかと、頭を悩まされる日々だったとのこと。

その苦悩の中から「七福神めぐり」を想起され、他の寺院と共同で新たな観光作りを始められたのです。また、お寺さんに来ていただいた方に、島内の産業を知ってもらうと、各寺院のある地元の産業の紹介もするようにしているのだとか。ちなみに八浄寺さんでは、お布施をされた方に漏れなく、ありがたいお言葉が印刷されたオリジナルの地元産マッチをプレゼントしていただけます。ぜひ参詣してみてください。

今回の岩坪住職のお話の中で、一番印象的だった言葉は

「ものの集まらざるは恥なり、また集めたものを己のものとするも恥なり」

でした。そしてこの信念が岩坪住職を奮い立たせ、七福神の知恵と、それを独り占めにせず、みんなと一緒に盛り上げていこうとされた原動力になったとのこと。まさにその信念の実践で得られた結果であると、感服しました。

今回淡路島に伺って感じたのは、岩坪住職に限らず、千年一酒造の上野山専務にしろ、途中立ち寄らせていただいた淡路島震災記念館やうずの丘大鳴門記念館の方々にしろ、皆さんが自分たちのことだけでなく、島全体のことを考えておられる、ということです。どこに行っても感じられるこの感覚は、とても暖かく感動的で、「ぜひもう一度来てみたい」と思わざるを得ないものでした。

翻って、私たちももっと地元を大切にし、「共に生きる」という精神に基づく活動をしていなければならないと強く感じました。皆さんも、今一度地元と共に何かできることはないかと考えてみてはいかがでしょうか?


No.328 成長

1000nen

2016/07/11 09:00:00

先週の7月7日(木)、今年も岡崎商工会議所様主催の「ひとづくり塾」がスタートしました。http://www.okazakicci.or.jp/kosyu/27-10hito.pdf

今年で11期目、既に198名の卒業生を送り出しているこの塾は、お一人155,000円と、決して安くない研修ながら、今年も19名の受講生を迎えることができました。

中でも14名の方が継続的に派遣をいただいている会社からの参加者で、一定のご満足をいただいている証と嬉しく思うと共に、リピーターの存在の大きさを感じざるを得ませんでした。やはりリピーター作りこそが、商いの原点であると強く感じます。

一方、開講式での決意表明では、「成長したい」「変わりたい」との声が多く聴かれました。人間には成長意欲・変革欲求といったものが内在しているものだということを、改めて感じることができました。

そしてその中に「自分の上司がひとづくり塾に出て変わっていく姿を目の当たりにしました。その姿を見て「私も変わりたい」と強く思いました」といった発言もありました。「自らの成長が、人の成長意欲に火をつける」とは講義中にお伝えする内容ですが、それを地でいく卒業生がいてくれることを、とても頼もしく感じました。

中堅・中小企業では、経営者・経営幹部の成長が止まるということは、企業そのものの成長が止まることに他なりません。よって経営者・経営幹部は、常に自分を成長させていかなければならないのです。そのためにはまずセオリーをきちんと学び、そのセオリーに基づいて百戦錬磨の経験を積んでいかなければなりません。経営者・経営幹部は、その努力を怠ってはならないのです。

また同じセオリーを学ぶことは、企業内に共通の言語ができることを意味します。互いに分かり合える経営陣は、強い。

皆さんもぜひ、セオリーを学び、百戦錬磨の経験を積み、切磋琢磨して成長していく機会をお持ちいただければと思います。


No.329 成長

1000nen

2016/07/25 09:00:00

先週から東京で、税理士事務所の所長先生・後継者・経営幹部を対象とした「経営塾」なるものがスタートしました。当社が昭和62年から開講している「経営者大學」をベースにしながら、今年10月に50周年を迎える当社のノウハウや、他の会計事務所の成功・失敗事例などを織り交ぜて構成されたものです。

この講座は今年が始めての開催。税理士でもない私が講師を務める講座に、どのような反応があるか不安ではありましたが、何とかご満足いただいてお帰りいただけたようです。

また金曜日には千年経営研究会・豊橋会の総会・講演会が開催されました。いつものメンバー、久しぶりの顔、そして初めてご参加いただいた方々など、総勢20名の方にご参加いただくことができました。この場を借りて、改めて御礼申し上げます。

この2つのイベントを終えて改めて感じたのは、「中堅・中小企業においては、トップ自らが成長を止めたらおしまい」ということです。もちろん「トップの器に左右されない組織作り」は必要ですが、絵に描いた餅とまではいわないまでも、トップにあらゆる機能と権限が集中する中堅・中小企業では、とても難しいことであることは事実です。

それだけに、企業が持つべき経営目標の筆頭に据えられるべきは、

 「経営陣の能力向上目標」

に他なりません。そしてその目標を実現していくためにはまず、

経営のセオリーをきちんと学ぶこと

です。しかし実際にはセオリー通りいくとは限りません。否、その組織固有の問題があるがために、セオリー通りにはいかない方が多いものです。そこで大切なのは、

そのセオリーを実践の場で活用し、百戦錬磨の訓練の中から“生きた知恵”を得る

ことです。これこそが“真の学び・気付き”なのです。

トップが自らの成長を止めてしまったらおしまいです。ぜひ皆さんも自らを磨き続けていってください。そのためには「セオリーを学び、実践する」ことが欠かせません。そしてその内容を共有し、高め合う仲間をさらに増やしていっていただければと思います。

豊橋会の総会・講演会の参加者の方々には、その意味を感じていただけたことと思います。ぜひ皆さんも千年経営研究会にご参加ください。お待ちしております。


No.330 花火

1000nen

2016/08/08 09:00:00

先週の土曜日、千年経営研究会・岡崎会のメンバーからお誘いをいただき、「岡崎城下家康公夏まつり第68回花火大会に参加させていただきました。

花火大会|イベント|岡崎おでかけナビ - 岡崎市観光協会公式サイト

「花火大会」の情報は「岡崎おでかけナビ」で。 ※情報は順次更新いたします。 岡崎の花火大会は、江戸時代から情緒豊かな鉾船を浮かべた花火まつりとして広く知られて…

岡崎の花火は東海随一といわれますからこれ以上のものはない上に、打ち上げ場所に程近い升席で見させていただいたこともあり、とても言葉では表せないほど刺激的で、感動的なものでした。もう岡崎の花火なしでは生きていけない体になってしまったかもしれません(笑)。

今回見させていただいて一番感じたのは「花火も常に進化している」ということです。私が最後に花火を楽しんだのは5年前です。「5年も経っている」なのか「まだ5年しか経っていない」が正しいのかわかりませんが、確実に進化していると感じました。

伝統的なものであり、基本部分は同じなのでしょうが、その見せ方、組み合わせ、デザインなど、凄く斬新なものに触れたような感覚がありました。まさに常々お話させていただく「変わらないために、変わり続ける」ことの大切さを感じさせていただきました。花火人気は年々高まっているようですが、業界と、そこに属する企業の努力の賜物だと思います。

また、岡崎の花火といえば乙川の殿橋近くのものだけだと思っていたのですが、実は矢作川河畔でも上がっており、2箇所でひとつの企画なのだそうです。矢作川のものは、岡崎のどこからも見られるようにと、より高く、より大きな花火が打ち上げられるのだとか。

以前から岡崎は「大人な街」というイメージがありましたが、矢作川河畔の花火の話をお聴きして、その思いをより強くしました。

また、ちょうど私たちが見させていただいた場所からは、手前に乙川の豪勢な花火が、その延長線上に一定の間隔で打ち上げられる落ち着いた花火が借景の如くちょうどよいアクセントとなり、とてもよいバランスに感じられました。

そのことが“三方よし”の精神の賜物にも感じられ、とても学びの多い機会となりました。

今回は、私の両親もお呼びいただきました。二人ともとても喜んでおり、よい親孝行をさせていただきました。岡崎会メンバーには心から御礼申し上げます。


No.331 根っこ

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2016/08/22 09:00:00

先週の土曜日、当社で「未来創造ミーティング」なるイベントが開催されました。

このイベントは、「厚生活動見直しプロジェクト」という「社員自ら社員のための厚生活動のありようを根本的に再検討しよう」という主旨に賛同した10名のメンバーによって企画・運営されたものです。そして、当該プロジェクトがスタートして3年間、さまざまなテーマが検討された中でも、最も実現を望んでいたものでありました。

この企画の狙いは、「社員自ら名南コンサルティングネットワークの未来を考え、将来に亘って何をなすべきかを検討しよう」、その話し合いを通じて「更なる総合力を磨き上げよう」、そして「部門間の交流をよりいっそう深めよう」というものです。中でも3つ目のテーマに、「厚生活動の根本がある」との認識からの企画でした。

熱い思いの詰まった企画ではありましたが、250名を超える社員が一堂に会するイベントです。開催日が近づくに連れ「意見が出なかったらどうしよう」「不満の声にあふれてしまったらどうしよう」「思い通りの運営ができなかったらどうしよう」などと、ネガティブな思いが積もってきていたようです。私にも同様の不安はありました。

しかし彼らの企画の内容、運営の細やかさ、参加者への思いやりなどからイベントは大成功。ディスカッションも大変盛り上がり、多くの社員から「やってよかった」「楽しかった」「またやりたい」といった前向きな意見をもらうことができました。

ここで大切なのは、社員自身による企画であったこと、そして彼ら自身が心からやりたいと願ったことだと思います。その意味でプロジェクト活動は有効であり、そこに魂を注ぎ込むことさえできれば、その価値は計り知れないものになるのだと思います。

また今回のイベントを通じて、「人は誰しも前向きな心を持っているんだ」ということを痛感しました。正直なところ、これほど盛り上がろうとは思っていませんでした。どれほどだったかは想像にお任せしますが、笑いあり、うなずきあり、また熱い論戦ありで、それ自体がとても嬉しくて仕方がありませんでした。

「人の心の中には、元々“やる気”“前向き”“心意気”などの“キ”の根っこが備わっている」

そのことを改めて強く感じた一日でした。

また今回、素晴らしい未来創造のアイディアを提案してもらいました。私どもは今年10月に50周年を迎えます。次の10年を見据え、みんなの思いをひとつでも多く現実にできるよう、じっくりと戦略構築をしていきたい、そう強く覚悟を固めることができた一日でもありました。


No.332 会議

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2016/08/29 09:00:00

当社は9月決算ですので、今月は各部署で来期計画策定のラッシュになっています。

先週の土曜日も、ひとつの部署で経営計画の策定会議が開催され、私もオブザーバーとして参加させていただきました。

各部署によって課題が異なっているので、会議の進め方はまちまちですが、当該部署においては、まず「顧客の定義」「事業領域の明確化」を改めて行うことになりました。

午前中いっぱい掛けて検討したのですが、私が当たり前だと思っていたことが、実は思いが同じではなかったり、新たな発見があったりと、実に充実した時間となりました。

午後には、5年後を見据えた具体的な数値計画を立案しました。最初のうちは「できる範囲」の数字の積み上げになっていたのですが、徐々にチャレンジングな意見が出始め、最終的には5年後倍増という、実にダイナミックなところに落ち着き、しかも「全然行けそうだね!」と全員が前向きな姿勢をもって会議を終えることができました。

今回の取り組みを通じて、いくつか感じたことがあります。それは

 ・「当たり前」「当然」と思っていることが、実はそうともいえない。

 ・人は元々前向きかつチャレンジングな心を持っている。

 ・向かうべき道が見えたら、人はよりいっそう前向きになる。

などです。

このような会議は毎年行っていますが、その都度、新たな気付きがあります。年度計画立案に限らず、話し合いの場を持つことは、本当に大事だと思います。「わかっているだろう」で済まさず、定期的にお持ちになってはいかがでしょうか?


No.333 未来

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2016/09/12 09:00:00

先日、当社にて、「未来創造ミーティング」なるイベントが開催されました。名南経営はまもなく50周年を迎えます。その大きな節目を迎えるにあたり、「社員自らの手で、自社の未来を創造していこう!」という目的で企画されたものです。

また職員数も450名を超え、かつ多くの部署と地域にまたがっていますから、日頃はなかなか交流が図れないことが課題でもあり、この企画により、部門と場所の垣根を越えてさまざまな仲間と交流できる機会を作りたい、という思いの表れでもありました。

実はこの企画、3年前に公募された、厚生活動の見直しを目的としたプロジェクトのメンバーからの発案で実施が決定されました。企画そのものが、職員の手によるものであったのです。そして今回のイベントが、当該プロジェクトによる初の大きな運営企画となりました。

聞くところによると、土曜日での開催であったことや、“未来創造”というテーマが大きすぎたことなどから、一部では「平日に実施してほしい」「何を話してよいかわからない」などといった不満の声もあったようです。

しかしふたを開けてみれば大盛況。とても明るい雰囲気の中、活発な意見を交換することができました。実際に、

「日ごろあまり話ができない人とも交流の機会が持て、関係を深めることができた」

「こういった機会をもっと持って、会社をどんどん良くしていきたい」

「面白い意見がたくさんあって、自分の意識も変わった」

「とにかく楽しかった!」

などといった声が多く聴かれました。プロジェクトメンバーが期待し、望んでいた成果を実現することができたのです。

またその内容も実に多種多様で、ユニークなものが多々ありました。「忘年会を復活させたい」「運動会がやりたい」といった福利厚生に関わる内容や、「勤務形態の多様化を図りたい」「ジョブローテーションやFA制度を導入したい」などといった働き方に対する提言、さらには、新しい事業への取り組みやブランディング戦略への提案など、実にさまざまな意見が交換されました。中には「ガイヤの夜明けに出よう!」「映画を作りたい!」といったものまであり、頼もしさをも感じることができました。

ときに、「やる気を出させるためにはどうしたらよいでしょうか」といった質問を受けますが、私は「人は誰しももともとやる気を持っている」と思っています。もしやる気が感じられない人がいたとしたならば、それは単に、内に秘めたやる気が発揮されていないだけだと思うのです。

当初はあまり前向きでなかったメンバーからも、終わってみれば「やってよかった」「またやりたい」といった声が上がってきた今回の取り組みを通じ、改めてその思いを強くしました。

今回はミーティングという形式をとりましたが、方法はいろいろあると思います。みんなのやる気を引き出す場と取り組みを、皆さんも考えられてはいかがでしょうか。


No.334 両親

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2016/09/20 09:00:00

当社では、平成30年3月卒業予定者を対象としたインターンシップが始まりました。

私が担当する東京・大阪・福岡の各拠点では、経営コンサルタント希望者に対し、

 ・コンサルタントとはどのような仕事か?

 ・どのようなコンサルティング会社があるのか?

 ・コンサルタントに求められる資質や能力は何か?

などについて講義を行った後、グループワークを通じてコンサルティング業務を疑似体験してもらう、という内容になっています。

テーマは「破たん懸念企業を救済せよ」というもので、架空の会社を想定して、質疑応答を繰り返しながら、

 ・何を解決しなければならないか?

 ・そのために何を改善しなければならないのか?

 ・その改善のために、具体的にどのような提案をするのか?

などについて数チームに分かれて徹底的に議論し、最終的に改善提案内容をプレゼンテーションしてもらう、という企画です。

最後のプレゼンテーションは、毎年とても楽しみにしています。なぜならば、同じ企業を対象にしているにも関わらず、出てくる答えはまったく異なっていて、かつ、毎年新しい提案が飛び出してくるのです。

これは通常のコンサルティングにもいえることで、どのコンサルタントが担当するかによって答えが違ってしまうのです。この企画が終わった後は私自身、コンサルタントの責任の重さをひしひしと感じ、精進を続けなければならないと肚括りすることができています。

また今年は、自分の娘と同じ年の子たちということもあり、いつもと違った感慨深さを感じています。

一方で、“売り手市場”であることも相俟ってか、自らエントリーをしながら、こちらから連絡をしてもなしのつぶてであったり、かつ無断欠席も多く、寂しさと少しの腹立たしさとともに、「自分の娘はちゃんとした対応をしているのだろうか?」と少し心配になってしまいました。改めて子育ての大切さを感じるとともに、そんな心配をしてくれていたのであろう両親に対する感謝の気持ちを噛み締めているところです。

先日は敬老の日でもありました。みなさんも、だいぶ心配をかけたであろう親御さんに、少し思いを馳せてみてはいかがでしょうか。


No.335 アジア

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2016/09/26 09:00:00

先週に引き続き、インターンシップについてのお話をしたいと思います。

先週の金曜日は東京での開催となりましたが、今回は実に国際色豊かな会でした。といっても、東アジアだけでしたが、中国・韓国・モンゴルからの留学生が参加してくれたのです。

正直なところ、顔を見ただけではまったく分かりませんでした。話をしてみて、少し「おや?」と感じるところがあるくらいで、ほとんど違和感はありませんでした。積極性に至っては、彼らの方が完全に勝っていました。

それは多分、彼らの方がより「目的的」であったからなのだと思います。

日本の学生のほとんどがまだ「インターンシップを探していて、たまたまコンサルタントの会社が実施しているのを見つけて来ました」という感じであるのに対して、彼らは「コンサルタントになる!」という明確な目的意識をもって参加してきていたのです。

それも、最終的には母国に帰って、「母国の中堅・中小企業のお役に立ちたい!」という強い思いで参加していました。

もちろん、日本の学生が劣っているという訳ではありません。まだ大学3年生の折り返し地点なのですから、彼らのスタンスは至極当然のものです。留学生の姿勢が、より積極的で、より能動的で、より目的的であった、というだけの話です。

ただこの違いから、いくつか思うところがありました。一つはアジアの将来に向けた大いなる期待、一つは日本という国に対するアジアからの期待、そして一番強烈に感じたのは「もっと世界に誇ることができる国にしていかなければいけない」という責任です。

彼らの真剣な眼差しは、私の真剣さを試す刃のように感じられたのです。帰り際に「本当に勉強になりました!」といっていただけたので、ほっと一安心。今は、役割を果たせた安堵感に包まれているところです。

一方で、これまでもなんとなく感じてはいたことですが、「“アジア”を見据えた仕事をしていかなければならない」といった思いを強く持つことができた一日となりました。


No.336 営業①

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2016/10/03 09:00:00

ここ数年、若手営業マン育成のため、手の空いた日には彼らに同行するようにしているのですが、共通する部分と、成長スピードの速い子とそうでもない子の違いを感じています。

まず共通するのは、「自分の得意分野の話が少しでも出てきたら、飛びついてしまう」ということです。

営業とは、お客様へのヒアリングを通じて課題を探り、自社の商品やサービス(以下、商品)で解決できる課題を見つけ、その商品を利用することによって課題を解決できるイメージを先方に鮮明にもっていただけるようにしたうえで、購入できない理由を潰して、最終的にご契約いただく、という仕事です。よって営業には

 1.課題を特定するためのヒアリング力=聴く力

 2.自社の商品によって課題解決できるイメージをもっていただくための説明力・説得力

 3.購入できない理由をみつけ、ご契約までに導くための対応力・反駁力

が求められます。

しかし、経験の少ない若手営業マンは、自分の持っている商品知識が使える課題が出てくると、ここぞとばかり第2の力である説明力・説得力を発揮しようとしてしまうわけです。その課題がそのお客様にとって最も重要な課題であれば有効なのですが、ヒアリングが十分でなく、それ以外にもっと重要な課題がある場合は、空回りになってしまいます。

しかも、的外れな提案を繰り返しされると、「この人は私のことをわかってくれない(くれようとしていない)」と思われてしまい、その後、聴く耳を持ってくれなくなってしまう恐れさえがあります。これは実にもったいない話です。

営業だけに限らず、あらゆる課題解決の場面においては、何より“ヒアリング力”“聴く力”が大切です。聴いて、聴いて、聴きまくる。お互いの考えや思いがまったく同じになったと思えるまで聴く。そういう姿勢がまず必要なのです。

みなさんも、課題解決の場面において、“ヒアリング力”“聴く力”の大切さを改めて考えてみられてはいかがでしょうか?

来月は、違いについて考えてみます。


No.337 営業②

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2016/10/10 09:00:00

さて、先週に引き続き、若手営業マンとの同行から感じたことをお伝えしたいと思います。今回は、成長スピードの速い子とそうでもない子との違いです。前者をA君、後者をB君としましょう(少し極端に表現しています)。

第一に、A君は先々のアポイントを入れていきますが、B君は目先のアポイントしか入ってきません。A君はアポ入れに余裕がありますから、私を連れていくと有効なお客様を選別しています。しかしB君は、アポ入れそのものに汲々としていますから、とにかく入れられるところを無理やりにでも入れようとします。結果は、推して知るべしです。やはり先々の予定を組むことができることが大切です。

第二に、A君は訪問先の事情をきちん整理し、どのようなアプローチをしたらよいかを考え、私に事前に説明して、より有効なアドバイスを求めてきます。B君は事前の説明は何ひとつなく、説明を求めてもあやふやな回答しか出てきません。やはり事前にきちんと段取りしておくことが大切です。

第三に、A君は訪問後、今回の同行で何を学んだかをその場で報告するとともに、自分自身、何を改善すればよいかを聴いてきます。B君は「同行、ありがとうございました」で終わってしまいます。やはり自己成長意欲が高いことが求められます。

最後に、A君は報告書の提出が早い。できるだけ頭の中が鮮明な内に文章にまとめ、学びを確実なものとするとともに、学ぶべきことに漏れがないかを少しでも早く知ろうとします。B君はこちらから声をかけない限り、いつまで経ってもでてきません。これも成長意欲の表れといえるでしょう。

これらの内容は、営業に限ったことではありません。当社の創業者・佐藤澄男がよく、伸びる人間の要素として「素直さ」「勉強好き」「プラス発想」が大切だと言っていましたが、まさにその通りだと思います。

これらの点を社員育成のポイントとして考えていただければと思います。


No.338 学び

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2016/10/17 09:00:00

先日、岡崎にて千年経営研究会の月例会が行われました。その中で、一人のメンバーから、「何事にも受け身で、新しいことにチャレンジしていく風土がない。どうしたらよいか?」という質問が出てきました。それに対して、参加メンバーから意見を募ったところ、とても有意義で、参考になる話が出てきましたので、一部ご紹介させていただこうと思います。

・自分がやっていれば、いずれついてくる。

・そうはいっても全員は無理。まずは一部の気持ちが前に向いている人にやってもらって、少しずつ雰囲気を変えていく。

・1%やって欲しいことがあったら、30%の話をする。その上で「まず1%からやってみようか?」と伝える。

・「こうしたらどう?」ではなく「どうしたらいいと思う?」と聴く。

なかなかよい意見が出てきました。

また、そのメンバーは後継者。経験がないことに対して、「できない理由がわからず、どうしたらできるようになるかのアドバイスもできない」ことも悩みのひとつでした。

それに対しては、

・経験がないことを理解するのではなく、任せるしかない。

・“知らない強み”を活かして、「あなたならできるでしょう?なぜできないの?」と聴く。

・「どうなったらできるようになるの?」と教えを乞う。

などのアドバイスが・・・。これもとても参考になるものでした。

その中で印象的だったのは、ある創業者からの言葉。それは・・・

「創業者は知らないことがない。後継者は知らないことばかり。」

というもの。これは、譲る者・継ぐ者両者にとって、とても重要な認識だと思います。私自身が勉強になった一言でした。

いずれにしろ、今回もとても学びの多い会となりました。

千年経営研究会では、毎月1回、名古屋・岡崎・豊橋・三好のいずれかで月例会を開催し、中身の濃い“学び合い”をしています。皆さんもぜひご参加ください。

【開催予定】

2016年10月31日(月) 豊橋

    11月30日(水) 三好

    12月     お休み ※会員限定忘年会実施(名古屋)

2017年 1月31日(火) 岡崎

    2月28日(火) 豊橋

    3月31日(金) 三好


No.339 自業自得

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2016/10/24 09:00:00

10月16日(日)の「今日の学び」に“自業自得”というテーマで、「身に起こることは、よいことも、そうでもないことも、すべて自業自得」と書かせていただいたのを、覚えていらっしゃいますでしょうか?

この言葉は、前の日にある方から教えていただいたものです。実はその日は私の誕生日。生まれたその日に出会ったこの言葉、なぜか心の中にすっと入ってきました。そして、それまで少しもやもやしていたものが、すっと晴れていくのを感じました。

私たち名南経営の経営理念の一角を占める「改善の前提」という10か条があるのですが、その内容は次のようなものです。

・自分が変われば相手も変わる。

・常に原因は自分にないかと反省すること。

・常に相手に良い影響を与えること。

・常に相手に思いやりを持つこと。

・常に相手に迷惑をかけないようにすること。

・常に相手との信頼関係を確立すること。

・常に相手に自分の意思を伝えること。

・常に相手に感謝すること。

・常に甘えの精神を捨てること・

・常にけじめをつけること。

そしてその第一条が、「自分が変われば相手も変わる」であり、第二条が「常に自分に原因がないかと反省すること」です。まさに“自業自得”と教えてくれています。これは私たちの創業者・佐藤澄男が、私たちに残してくれた財産のひとつです。

それまでの私は、どこかに“他責”の心があったのだと思います。その過ちに気付けず悶々としていた。ちょうどそんなタイミングで、素晴らしい言葉に出会うことができたのだと思うのです。

実はその10日前の10月5日は佐藤の命日であり、すっきりとした秋晴れの中、お墓参りに行かせていただいたところでした。この言葉は、佐藤が“他責”に苛まれている私を心配して、人を介して送り届けてくれた言葉なのかもしれません。

業の深い私のこと、何かあったら“自業自得”と唱えながら、“自責”の日々を送っていきたいと思います。


No.340 メッセ

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2016/10/31 09:00:00

今年もポートメッセなごやにて、異業種交流展示会「メッセナゴヤ」が開催されました。

今年のテーマは「新たな価値を生み出す未来交流」でした。少し曖昧にも感じましたが、元々「業種や業態の枠を超え、幅広い分野・地域からの出展を募り、出展者と来場者相互の取引拡大、情報発信、異業種交流を図る」(ホームページより抜粋)ことが目的とのことですので、1,400社を超える出展者、64,794名の来場者という結果を見ますと、大成功だったといえるでしょう。

ここ数年、連続して参加されている千年経営研究会メンバーのお会社が出展されているので、私も毎年見学させていただいています。継続して参加されることはとても大変なことでしょうが、参加されているN社長の「継続するから気付けることもありますし、継続していないとわからないこともあります」との言葉が、その価値を示していると思います。

また今年初めて土曜日での参加になりましたが、ファミリーでいらっしゃっている方が多く見受けられました。参加企業の社員さんが、ご家族をお連れになって来られているのでしょうか。日頃触れることのないお父さん、お母さん(もしかすると、おじいさん、おばあさん)のお仕事をご家族が知る機会があることは、とてもよいことだと感じました。

さらにリクルートスーツに身を包む学生の姿も。こちらも内定者研修の一環としても有効なのかもしれません。

私どもも過去に一度だけ参加したことがありました。そのときはプロジェクトメンバーの結束と達成感という素晴らしい成果を出すことができました。しかし、よほど準備段階の苦労が大きかったのか、「来年も出るか!」の問い掛けに積極的な回答が得られず、継続を断念した経緯があります。しかしだいぶ間も空きましたし、来年の参加を提案してみようと思います。

メッセナゴヤ以外にも、多くの展示会が全国で催されているようです。皆さんも積極的にご参加されてはいかがでしょうか。


No.341 信念

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2016/11/07 09:00:00

先週、私が講師を務める岡崎商工会議所様主催の「ひとづくり塾」で、現役社長をお招きしての恒例の「特別講座」が開催されました。今年は運送業を営まれる愛東運輸株式会社の女性社長・村山さんにご登壇いただきました。

村山さんとは平成17年、私どもが豊田市に支店を構えたその年に設立された豊田市倫理法人会で初めて出会い、以来10年以上に亘るお付き合いをさせていただいている方です。大変小柄な方ですが、とてもパワフルで、お会いするたびにいつもパワーをいただいています。

今回は、「人生教育の最後の砦は企業」という信念に基づくお話でした。実際に村山さんは、運送業で女性社長という、それだけでとても大変なことであると容易に想像できる中で、単なる社員教育ではなく、まさに“人間教育”に努められ、高い成果を出されておられます。

皆さん、少し想像してみてください。(もしかすると既に知らない方もいるかもしれませんが)菅原文太さんや愛川欣也さん演ずるトラック野郎たちが

 ・朝礼で、大きな声で挨拶をする。

 ・毎週本を読み、感想文を書く。

 ・地域の美化活動に積極的に取り組む。

という姿を・・・。残念ながら私には思い描くことができません。

ところが村山さんは、運送業を営む会社のご子息に嫁いで以来、そうでない現状に疑問を感じ、常に「どうあるべきか」を追及されてきました。そして大変なご苦労の末に、上記のようなことが当たり前にできる会社にされてこられたのです。まさに「念ずれば花開く」ですね。

もちろん、簡単なことではなかったようです。たとえば運転手さんの出勤時間は、荷物の入出荷のタイミングによってまちまちで、みんな揃って朝礼をするなどということはできません。それに対して、「どうしても朝礼をやりたい」と、社員さんが出社してくるたびに朝礼を実施されているのだそうです。多い時には「1日に22回行うことも」。

多くの人は「できない理由」に阻まれ、「やりたいことができない」で終わってしまうことが多いものです。しかし村山さんは「やりたいことがあれば、できるようにすればよい」と、常に思考されています。そしてそれをやり遂げてしまう。そこに経営者としての信念と、社員さんに対する思いが詰まっているように思います。

「心と体を使わなければ、商いはできません」

この言葉が、村山さんの姿勢を一言で表しているように感じました。お互いに学びたいものだと思います。


No.342 右腕

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2016/11/14 09:00:00

先週、福岡と大阪にて、開業4年未満の税理士先生を対象とした「きどう塾」なる講座の最終講が開催されました。

「きどう」には、「“起動”時に必要なノウハウを学び、早期に経営を“軌道”に乗せ、先生ならびに職員さんが喜んで働く(“喜働”)ことができる事務所を創る」といった思いを込めて命名しました。われながら、よいネーミングをすることができたと自画自賛しています。

今年で2年目を迎え、1期生の皆さんは、今でも2~3月に1回は顔を合わせ、互いの成長と悩みを共有しているようです。その意味でも、よい企画になっていると思います。

この「きどう塾」では、毎講、先輩の開業税理士にご登壇いただき、開業時の苦労や失敗、または成功の秘訣や「今だったらこうする」といった内容のお話をいただいています。「きどう塾」は“業界貢献”が目的で、ほぼ無料で開催していますので、お支払するのは交通費と懇親会費のみで、講演はまったくの無料でやっていただいています。それでも当社の主旨にご賛同いただき、喜んでお話しいただいているようです。ありがたいお話です。

今回も、それぞれの会場でおひとりずつ講話をいただいたのですが、共通する内容がありました。それは「右腕と見込んだ幹部職員の退職」でした。

それも「自分が一から育てた」「なんでも分かり合える関係だと思っていた」「誰が辞めても、こいつだけはついてきてくれると思っていた」というところまでまったく同じ・・・。そのお話をされるとき、お二人とも、本当に辛そうな表情で、私も胸が締め付けられるような思いがしました(そのうちのお一人は、私もお会いしたことがある方でしたので、なおさらでした)。

そしておふたりとも、「結局のところ、私に甘えがあった。「わかっているだろう」で済ませていた。もっと相手の話を聴いてあげるべきだった」と結ばれました。たぶん、その通りなのだと思います。

「わかっているだろう」と思える相手ほど、より深く、より慎重にコミュニケーションを図ったいかなければならない、そんなことを感じたお話でした。他山の石として、私自身の戒めにしたいと思います。


No.343 組織

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2016/11/21 09:00:00

先々週、開業4年未満の税理士先生を対象とした“きどう塾”という講座を開講しており、そこに先輩税理士をお迎えして、ご自身の成功事例や失敗体験などをお話しいただいているとお伝えしました。その際、福岡・大阪と別々の先生にお話しいただいたにも関わらず、異口同音に「右腕と見込んでいたNO2の予期しない突然の退職」という内容があったことをお話ししました。実は先週、東京でも同講座を開講したのですが、やはり東京の先生も同様に辛苦を味わっておられました。

3名も連続で同じような体験をされているということは、そこに共通の要素があるはずです。今回は、お三方の話を振り返ってみての推論をお伝えしたいと思います。

組織の形成過程には、おおむね4段階あります。

第1段階「創業期」

創業者が自分の性格や考え方・方針に基づく行動を実践し、社員を強烈にリードしていく段階。

第2段階「組織化期」

 経営者の価値観がある程度定まり、その価値観を浸透させるための具体的な施策や制度が打ち出され、組織を明確に規定していく段階。

第3段階「安定期」

 経営者の価値観が徐々に浸透し、施策や制度および組織も定着していく段階。

第4段階「事業承継期」

 経営者が交替し、安定から混沌への向かう段階。前経営者と異なる性格や考え方・方針に基づく行動から、組織の再構築が行われていく段階。

3名の先生を総合すると、「NO2の突然の退職」は、第2段階で起こっているようです。それまではご自身の信念に基づき、強烈なリーダーシップで引っ張って来られた。そしてそのリーダーシップに魅力を感じ、自身の人生をかけてその思いに応えようとされていたのがNO2の方々なのだと思います。

ところが「組織化期」に入り、気持ちよりも制度・施策や組織作りが優先され、また経営者のリーダーシップがそれらに頼ったものになっていくと、“すきま風”が吹き始め、経営者がそれに頼ろうとすれば頼ろうとするほど、気持ちが離れて行ってしまう、そういう感じではないかと思うのです。

「事業承継期」に揉めるのも、後継者が自身の内面に向き合おうとせず、制度・施策や組織作りに頼ろうとする姿勢にあるように思います。

もちろん、制度・施策や組織の構築は大切です。しかしそれだけで組織を統制しようとする姿勢には問題があります。人も心身のバランスが大切なように、組織にも心と形の両面が必要です。

みなさんも今一度、組織に向き合うご自身の姿勢のありようを見詰め直してみてはいかがでしょうか?


No.344 教育

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2016/11/28 09:00:00

このところ、若手社員の教育に関する相談が増えてきました。

 「返事はいいが、やるべきことをやらない」

 「叱った後はやるが、時間が経つと元の木阿弥」

 「現状に満足し、成長意欲が感じられない」「相談がない」

などといった内容です。

これに対して、最初のうちは「まあ、いずれできるようになるだろう」と笑っていたが、あまりの変化のなさにイライラしはじめ、徐々に厳しい姿勢になり、遂には「もう、諦めるしかないか・・・」と思ってしまう、というのです。実は私も、同じように感じることが増えてきました。皆さんはそんなことありませんか。

私が心配するのは、このような状況に対して「ゆとり世代だから」の一言で片付けられてしまい、彼らの更生と成長の機会が奪われてしまうことです。

“ゆとり教育”とは、物わかりのよい大人たちが、自分たちが言うべきことを言わず、叱るべきことを叱らず、立ち向かうべきところを立ち向かわなくても済むための、自分たちが楽をするための教育システムと思えてなりません。

行動が伴わなくてもいい返事をすれば褒め、結果が出なくても頑張っている姿勢さえ見せれば褒め、日々成長していなくても言ったときに言ったことさえやっていれば褒める、大人たちが楽をして「いい人」になれる仕組みのように感じるのです。結果として、前述のような子供たちが育ってしまうのだと・・・

このような環境で育ってきた社員に対して、行動が伴わなくても、結果が出なくても、成長意欲が感じられなくても、「もう、諦めるしかないか・・・」と育てる義務を放棄してしまったら、私たちまで“ゆとり大人”たちの仲間入りをしてしまいます。これだけは何とか避けなければなりません。

そもそも教育とは、「素晴らしい人生を歩んで欲しいと心から願い、厳しく指導・叱責し、できるようになるまで忍耐強く待つ」ことです。ここでいう厳しさとは「強く言う」ことではありません。「許さない姿勢」ということです。決して諦めてはいけないのです。

先のような環境で育ってきた社員です。今、そうであることは仕方がないのかもしれません。それはそれで受け入れる。しかしそれを許してはいけない。人生80年、20歳で入社してきた社員であれば、人生の1/4しか経過していません。1日でいえばまだ午前9時です。会社によっては、やっと始業したばかりです。残りの人生を考えれば、決して諦めてはいけません。

縁あってわが社に入ってくれた彼らのこれからの人生が、もっともっと素晴らしいものになるよう、諦めることなく、辛抱強く、大いに期待して育てていきましょう。


No.345 育成

1000nen

2016/12/05 09:00:00

先週、ある企業内セミナーにて、日本女子レスリングの栄監督とダブル講師を務めてきました。前座の私はコミュニケーションについて、メインの監督は教育についてのお話でした。

やはり世界を制した面々を育て上げた方だけあって、当たり前のように語られる事々の中に、「なるほど」とうならせる内容がちりばめられていました。今日はその一部をご紹介したいと思います。

・人によって言うことを変えることはしない。信念をもって同じことを伝える。

・しかし、間違っていると思ったことは素直に謝り、訂正する。

・ただ、実際には同じことを言ってもわかる人間とわからない人間がいる。そこを補うのがコーチであり、ベテラン選手。彼らの存在がなければ成立しない。

・同じ目標を目指すのであれば、同じ思いにならないといけない。チームが同じ思いになり、それぞれの役割を果たしたとき、初めていい仕事ができるようになる。

・人を育てることにドキドキできるほど、真剣になれる。

・寝ても覚めてもレスリングのことばかりを考えている。考えようとしていなくても、自然と湧き上がってくる。自分に与えられた責任が、自分を奮い立たせている。

如何でしょうか。テレビで見る監督の人柄そのものの飾りのない語り口もあり、とても楽しいひとときを過ごさせていただきました。話の内容について、もっと詳しく知りたい方は、著書『“最強”の結果を生み出す「負けない心」の作り方』をご参照ください。

その後、リオオリンピック金メダリスト3人娘、登坂選手、土性選手、川井選手を交えてのパネルディスカッションがありました。一番印象に残ったのは、「監督を嫌いになったことは1回しかない」という話でした。正直、疑いの心を持ちましたが、少なくとも登坂選手については、その口ぶりや姿勢から、嘘ではないように思います。

殴る蹴るは当たり前。中には歯を折る選手がいるほどの勢いで殴られることもあるそうです。しかし「そのことについては何とも思わない」のだとか。一番聞きたかった1回の理由は、司会者がスルーしてしまって聴けなかったことが残念ですが、監督も「本当に1回だけ?」と真剣に疑っていらっしゃいました。

何度確認しても覆らないその答えに監督は、「彼女たちは強くなりたいという“強い思い”で志學館に入ってくる。その思いがあるからだろう」と総括されていましたが、私もその通りだと思います。

ときに「どんな教育をすれば社員を育てることができるでしょうか?」との質問を受けますが、まさにそのような“強い思い”を持たせることが何よりも重要なのだと思います。

もちろん、オリンピックを目指すような“強い思い”をもって入社してくる子は、なかなかいません。それでも“強い思い”で“強い思い”をもたせていく、そういう努力が必要なのだと思います。そしてそのためにも「人を育てることにドキドキできる」ほど、「人を育てることに対する責任をもつ」必要があるのだと思います。


No.346 縁

1000nen

2016/12/12 09:00:00

先日、FMおかざきさんの「イブニングワイド」という番組に出させていただきました。講師を務めさせていただいている岡崎商工会議所主催の「ひとづくり塾」卒業生の会社が運営されているラジオ局ということで、思いがけずお声が掛かったのです。大変緊張しましたが、パーソナリティーの小森ヒロタカさんの導きで、何とか20数分の務めを果たすことができました。

リスナーの方にとってお役に立つお話ができていたかはわかりませんが、私にとっては、岡崎との縁について振り返る貴重な時間となりました。

始まりは平成元年、当時3名いたコンサル部隊の新人のうち、なぜか私が岡崎商工会議所の担当となり、今は中小企業相談所の所長を務められているSさんにとてもかわいがっていただくようになりました。

まだ無料セミナーの講師しかしていなかった私に、会議所での講師の機会を与えてくださったのもSさんで、その後、多くの機会をいただきました。そのおかげで、多くの方との出会いもありました。

そして11年前、会議所が「ひとづくり ものづくり まちづくり」というプロジェクトを立ち上げられるにあたり、ひとづくりのメイン事業である「ひとづくり塾」の講師として声を掛けていただいたのです。

まさか11年経っても続くとは思ってもいませんでしたが、おかげさまで、同時期に始まった三好商工会・青年部とのお付き合いも相俟って、この千年経営研究会が発足することになったです。私にとっての岡崎との縁の始まりは、まさに会議所との出会いだったのです。

そのように思い至ったとき、縁の不思議さと、尊さ、そしてありがたさを改めて感じることができました。

この会議所との出会いに限らず、“今”があるのは、すべてなにがしかの“縁”があったからにほかありません。私自身これを機に、改めて目の前に起こる事々の“縁”について、振り返ってみたいと思います。

このような貴重な機会をいただいたHさんには、心より感謝します。ありがとうございました。


No.347 学ぶ

1000nen

2016/12/19 09:00:00

先週の金曜日、当社が主催する経営者・後継者・経営幹部を対象とした「経営者大學」の税理士事務所版である「経営塾」が、1泊2日全6回の講座を終え、修了式を迎えました。

修了式では、「経営塾で学んだこと」を発表していただくとともに、「実践を決意したこと」「目指す成果」について決意表明していただきました。持ち時間は一人2分だったのですが、皆さん熱弁され、式の終了時間が予定を大きくオーバーするほどでした。

学んだこととして皆さん異口同音に言われたのが、「経営の原理原則を学べた」ことでした。

常々お話しするのですが、やはりセオリー(定石)を学ぶことは大切です。ときに「頭でっかちになるだけ」と否定的に捉えられる方もいらっしゃいますが、それは「実践が伴わなければ」の場合のみです。

意思決定がトップに集中する中堅・中小企業では、経営者・後継者・経営幹部が勉強することを怠れば、それはすなわち衰退への第一歩と心得なければなりません。

一方で、ただ学んだだけでは価値がありません。実践を通じた百戦錬磨の経験から得られる知恵こそが真の学びなのです。「経営塾」でも、月1回開催される講義と講義の間の実践を重視し、毎回近況報告にてその実践内容を確かめていましたが、今回の決意表明の中で、「今後も自分自身を成長させ続けていかなければならない」と語られた方がいらっしゃいました。それ気付きこそが、実践し続けられた結果の表れなのだと思います。

またその思いは皆さんも同じだったのでしょうか、OB会の開催を提案したところ、早速来年の4月に予定されました。それほど実践報告の価値を感じていただけたのだと思います。みなさんの報告をお聴きするのが今から楽しみです。

もう一つの共通点として、「考える時間を設けることの大切さに気付いた」との話がありました。経営者には「セオリーを学ぶ」「考える時間を設ける」「実践する」ことが大切なのだと、私自身改めて気づかせていただきました。

皆さんも“学ぶ”→“考える”→“実践する”機会を意識的・計画的に設けてみてはいかがでしょうか?


No.348 縁

1000nen

2016/12/26 08:30:50

このところ、コミュニケーションの取り方についてお話しする機会が増えています。以前もご紹介した、ゆとり世代との付き合い方を含め、「どう接したらよいかわからない」といった類の質問が多くなっている印象です。

さて、コミュニケーションを取ろうとする際には、いくつかの前提があります。

まずは、生まれ持った個性や育った環境、受けてきた教育、生い立ちや経験など、まったく異なる者同士がわかり合おうというのですから、それだけでとても難しいことであることは間違いありません。

その上、人には「人の話を聴くよりも、自分の話がしたい」という特性がありますから、なおさらです。

そもそもそのような状況の中でコミュニケーションを取ろうとすること自体、並大抵のことではありません。まずはその認識が必要です。

そうなると「なんでそこまでしてコミュニケーションを取らなければならないのか?」という疑問が生まれますね。

そこには“縁”の自覚なくして語ることはできません。

人は、一人では生まれることができません。両親がいてくれてはじめて生まれることができます。その親にも親がいて、2代遡れば6人の、3代遡れば14人の人がいてくれないと、私一人、生まれることができません。33代遡ると、なんと80億人を超える人がいてくれないと、私はこの世に存在しないのです。33代といえば、およそ1000年くらいでしょうか。

一方、今の世界人口は74億人といわれています。しかし世界には、戸籍に載っていない方々も多くいらっしゃるようですから、もしかするともう80億人以上の方がこの世に存在しているかもしれません。

世界に80億人の人がいる中で、わずか1000年間で80億人の人がいないと生まれることができない“私”と“あなた”が今、目の前にいる。すごい奇跡ですよね!この奇跡を、人は“縁”と呼びます。

しかし実際に目の前にいるのは、口うるさい上司であったり、言うことをきかない部下であったり、厄介な客だったりします。「できれば出会いたくなかった」と思うこともあるでしょう。

それでも“縁”は“縁”。奇跡の出会い。

コミュニケーションを取るにあたっては、まずこの“縁”の自覚が何より必要なのです。


No.349 変革

1000nen

2017/01/10 09:00:00

新年明けましておめでとうございます。今年もどうぞ宜しくお願い致します。

さて、日本の企業が一国の次期大統領から名指しで批判を受けたり、国と国との約束事が反故にされ、何とかの像が領事館前に設置されるなど、海外情勢は年明け早々、雲行きの怪しさを漂わせています。

今年の日本経済新聞の年間を通じたキーワードは

 「変える、始める」

であるようです。そして1月1日の1面特集は

 「断絶を超えて」

“断絶”を意味する“Disruptin”の語源は、ラテン語で「粉々に砕く」なのだとか。それほどの変化が目の前に迫っていると提言しています。

その上で、

 「断絶がもたらす逆境でこそ知恵が浮かぶ。実現への技術も進化する」

とし、迫りくる第四次産業革命到来への準備の必要性を訴えています。

しかし私たちはこれまでも

 「変わらないために変わり続ける」

ことを指向してきましたから、「改めて言われるまでもない」という感はありますが、これまでは自らの意思でその難問に立ち向かわなければならなかったものが、いよいよ外圧によって「逃げることが許されなくなってきている」といえるのかもしれません。

また、今年の干支“丁酉”は、「陽気の充溢」「成熟」などを意味する一方、そこからくる「革命」もキーワードになっています(詳しくは後日解説します)。

いずれにしろ、企業を含めた社会は、「完成」と「変革」を繰り返しながら成熟していくものです。変化の時代を受け入れ、ばねにして、より一層の成長と発展を実現する年にしたいものです。

今年一年、どうぞ宜しくお願い致します。

※産業革命

 第一次:動力革命

 第二次:生産革命

 第三次:デジタル革命

 第四次:AI革命?


No.350 段取り

1000nen

2017/01/16 09:00:00

先週は、“段取り力”をテーマにお話しする機会が多くありました。今回は、その内容について、少しだけご紹介したいと思います。

メインテーマは「“段取り力”の達人6か条」で、その内容は以下の通りです。

   ①業務発生時点で段取りする。

 ②早いタイミングでスケジューリングする。

 ③漏れなく“ToDo”に落とし込む。

 ④報告書を残す。

 ⑤工夫した内容は、定型化・標準化する。

 ⑥“自分納期”を守る。

これだけだと、ちょっとわかりにくいかもしれませんね。ダメなケースを通して、その意味と価値を検証してみましょう。

Aさんは、得意先であるB社に訪問した際、2週間後に大口案件の提案をする約束を取り付けることができました。これが決まれば、今年の目標は達成です。Aさんは意気揚々と手帳に訪問日を書き込むとともに、1週間前に準備の予定を入れました。

しかし準備する予定の日は業務が立て込み、できず終い。その後も「明日やればいいか」と先延ばしを続け、結局、訪問前日まで全く手を付けることができませんでした。自分で決めた業務の納期、すなわち“自分納期”が守れなかったのです。

さらに準備を始めてみると、B社社長との話がどのような内容であったか、その詳細がなかなか思い出せません。「ああ、報告書を残しておけばよかった」と大後悔。

結局、ありていの提案しかすることができず、受注に結び付けることができませんでした。

ではどうすればよかったのでしょうか?その答えが、上記の6か条です。

まずは業務発生時点で段取りをします。今回のケースでは、B社訪問後すぐ、ということですね。その段階で、事前に「聴いておくべきこと」「伝えておくべきこと」「依頼しておくべきこと」「やっておかなければならないこと」「調査・検討すべきこと」「根回し・交渉すべきこと」を棚卸し、それらをきちんと手帳に落とし込みます。これを「“ToDo”する」といいます。

日々の業務では何が起こるかわかりませんから、“ToDo”はできるだけ早いタイミングでスケジューリングし、かつ、自分で設定した納期を必ず守るようにします。もちろんできない日もあるでしょう。そうであっても、必ずその時点でスケジューリングし直すことが肝要です。

また業務を進める中で工夫した内容は、それ以降の業務にも、また他の人にも参考になるように、定型化・標準化できれば最高ですね。

リーダーは、何事にも他者の模範にならなければなりません。“段取り力”の達人となって、仕事の進め方に対しても範を示していただきたいと思います。


No.351 イベント

1000nen

2017/01/23 09:00:00

先週の金曜日、1月生まれの社員30名を対象とした『誕生日会』を開催しました。

これは、これまでも何度かご紹介させていただいた『未来創造ミーティング』にて多く聴かれた、「社員同士の交流をもっと深めていきたい」という声に応えるために、企画されたものです。

私自身は10月生まれなのですが、1月生まれの役員不在、10月生まれが4人という状況の中で、栄えある初回の取りまとめをさせていただくことになりました。

“初回”と表現しましたが、実際にはその頭に“再開”という文字が付きます。実は創業者・佐藤澄男が以前実施していたのです。先の要望を受け、何かできることがないかと検討した結果、佐藤に開いてもらっていた『誕生日会』を懐かしく思い出し、再開することにしたのです。

12月末に実施を決定し、全社員に告知したのは1月5日の仕事始めの日という状況で、参加人数が少なくなってしまうことを危ぶんでいましたが、何とか2/3のメンバーに参加してもらうことができました。

昨年2月にJPタワー名古屋に引っ越しをさせていただき、東京・大阪・福岡以外のメンバーはほぼ全員一か所に集まることができたのですが、実際には顔を合わせる機会も少なく、また毎日挨拶し合っているメンバーでも、じっくりと話をする時間を取ることは難しいのが実情で、今回の『誕生日会』は、とても充実したコミュニケーションの場となったようです。

また、同じ月生まれということもあり、その結束力は相当高いものになったようです。私一人「蚊帳の外」という感もありましたが、参加メンバーが笑顔で、和気あいあいと話をしている姿には心温まるものがあり、私にとってもとても有意義な時間となりました。

「またこのメンバーで独自で集まろう!」という声も聴かれました。新しいコミュニケーションの核ができたことをとても嬉しく思います。

私が“お祭り男”だからなのかもしれませんが、“イベント”はとても有意義なコミュニケーション手段であり、モチベーションアップの機会だと確信しています。皆さんも“社内イベント”について、一度じっくり考えてみては如何でしょうか?


No.352 姿勢

1000nen

2017/01/30 09:00:00

先週は沖縄税理士会様に招かれ、研修会の講師を務めさせていただきました。「発足以来初めての経営に関わる研修」ということで、「どれだけ集客できるかわからない」と不安の声も聴かれていたようですが、なんとか80名超の参加をいただくことができました。

ただ、税に関わる内容だと「通常は150名程度で、ときには300名を超えることもある」とのことで、「経営に対する意識が低い」と嘆かれる研修担当の先生もいらっしゃいました。しかし私は正直、「結構来ていただけた」と感じています。過去の経験則から、きっと内地(沖縄の方がそれ以外の都道府県を指していう言葉)で開催した方が、もっと少ないと思うからです。

またその後、何件かの会員事務所に訪問させていただきましたが、その“学ぶ姿勢”に驚きました。事前のアポイントは所長先生に入れていたのですが、お伺いしてみるとほとんどの事務所で幹部職員の方が同席されました。そして滞在時間はずっと質問攻め。休むことなく繰り出される悩みや疑問は、尽きることがないのではないかと思われるほどでした。

徳川家の剣術指南を担当した柳生家の家訓に

小才は、縁に会って縁に気付かず

中才は、縁に気付いて縁を生かせず

大才は、袖触れ合う縁をも生かす

というものがあるそうです。今回出会った先生や職員さんたちは、まさに“大才”の心得えを実践されているのだと感じました。

これほど意欲のある職員さんがいらっしゃる事務所であれば、成長されることは間違いないだろうと確信しますし、そのような職員さんを育ててこられた所長先生を尊敬します。

どのようにして職員さんを育ててこられたのか、その疑問に対して、ある先生から「情報に飢えているんだと思う」との回答がありました。この声は、実はこれまでもよく沖縄の担当者から聴かされていました。

振り返って内地は本当に恵まれていると思います。しかしそのことが当たり前になってしまい、必要な情報を得ることを後回しにしてしまっているのではないでしょうか。どれだけ必要な情報に囲まれていても、それを活かすことができなければ何ともなりません。

自分たちがいかに恵まれた世界にいるかを今一度認識し、その恵みをきちんと生かして、社会に還元していくという姿勢を持ちたいものです。


No.353 誇り

1000nen

2017/02/06 09:00:00

先週、千年経営研究会メンバーのお誘いで、八丁味噌のカクキューさんの工場見学に行ってきました。(http://www.kakukyu.jp)

30分間の見学コースで、案内をしてくれた女性が開口一番「当社は代々世襲制で」と仰いました。創業家承継を推奨する私としては、その一言に少しの驚きと、大きな喜びを感じました。それも実に堂々と、かつ自慢げにお話しされたのがとても印象的でした。そこには1645年創業で「始祖より数えて十九代」続く会社で働く誇りと喜びが詰まっているのだと感じました。

また説明はとても分かりやすく、かつ伝統の味噌造りのありようを知ることができ、とても有意義な時間となりました。

中でも驚いたのは、今でも重しに河原の石が使われていることでした。「地震があっても崩れない」との説明でしたが、浅はかな私は「3tもの石をわざわざ積み上げなくても、同じ重量の一枚板をクレーンで釣ればもっと簡単なのに」と思ってしまったのです。

しかしそれは素人考えで、説明を聞けば今でも石積みを続けられている理由に大納得でした。これは現物を見ず、言葉だけで説明するのはとても難しいことですので、ぜひご自身の目と耳でお確かめください。どのような積み方をされているか、頭に映像を浮かべながらお聞きいただくと、その意味がご理解いただけると思います。

それ以外にも見所が満載で、とても楽しく、かつ、伝統を守ることの大変さを感じることができた30分間でした。最後には、「八丁味噌」と「赤だし」のお味噌汁と、こんにゃくの味噌田楽を振る舞っていただきました。ぜひ「八丁味噌」と「赤だし」の違いも感じてみてください。また味噌パウダー入りのソフトクリームもお勧めです。

今回の見学で一番印象深かったのは、冒頭にもお話しした通り、案内してくださった社員さんが、自信と誇りをもって説明していただけたことです。その方を含め、約20名の案内者がいらっしゃるそうです。「ぜひ他の者の話も聞いてみて下さい」とのことでしたので、ぜひ機会をみつけてお邪魔できればと思っています。皆さんも一度足を運ばれてはいかがでしょうか。

最後に、連れて行ってくれたメンバーと、案内をしてくださった社員さんに心から感謝しています。ありがとうございました。


No.354 共生

1000nen

2017/02/13 09:00:00

現在私は、会計事務所様向けのコンサルティング・ノウハウの構築をその役割のひとつとしています。その中で、以前では考えられなかった取り組みをしています。それは、競合他社との“共業”です。1件の事務所に対して、お互いの業(わざ)を提供し合うことで、より高い成果を求めようという取り組みです。

まだ緒についたばかりで、“共業”による具体的な成果の差異は計れていませんが、間違いなく手応えを感じており、今後、パートナーを増やしていく方向で検討しているところです。

他業界を見てみても、“共業”の動きは活発になってきているようです。

たとえば運送業界では、A社に預けた荷物がB社のドライバーによって届けられる「協力会社への中継」が当たり前になりつつありますし、片道10時間かかるルートを、中間地点で互いに運んできたトレーラーを切り離し、交換して自分の本拠地の出発点に戻って相手の荷物をお届けする、などという取り組みもされています。

このような、これまで競争相手であった企業同士が手に手を取って生き残りを賭ける“共生”の流れは、大きなうねりをもって進みつつあります。

ただしこれらは、例えば「採用難」といった外部環境によって強制された“共生”というニュアンスが強いのですが、これからはもっと能動的に、積極的に取り組んでいく価値のあることだと感じています。

もちろん人口減少からくる需要減、採用難などといった環境対応という側面もありますが、環境変化のスピードがより一層早くなっている昨今、お客様の期待に応え、よりよい製品・サービスを提供していこうとするとき、1社単独で考えるよりも、互いに異なる能力・ノウハウ・スキルを持った者同士が協力し合い、磨き合っていくことの価値が高いと感じるのです。

時代は刻々と変化しています。これまでライバルであった企業をパートナーとしてみたときに何ができるか、どんな新たな価値を提供できるか、みなさんもそんな視点で見直してみる機会を設けてみてはいかがでしょうか?


No.355 他力

1000nen

2017/02/21 09:00:00

以前もご紹介した、吉丸房江先生とお会いしてきました。お会いするたびに多くの気付きと学びをいただくことができるのですが、今回は人間の本質についてお聴きした内容を一つご紹介しましょう。

それは「人間はまず、人からしてもらうことから始まる」ということです。先生の言葉をお借りすると、次のようなお話しでした。

・動物は、独り立ちができるようにできていますが、なぜか人間だけは一人では生きていけないようにできています。動物は、生まれてすぐに立ち上がり自らお乳を求めますが、人間の子は1年も歩くことができず、母親が乳房を口元にもっていってあげなければ、お乳さえ飲むことさえできません。一人では生きていけない、支え合ってしか生きていけないから「人」と書くのです。

・人間は、まずしてもらうことから始まりますが、してもらっている間はそのことに気付かないものです。乳飲み子が「お母さん、ありがとう」と思っている訳ではないように。だから、何事も「当たり前」と思わず、してもらっていることをきちんと自覚しましょう。

・人は米一俵しか担ぐことができません。家族を食わせていくのが精いっぱい。もし仮にそれ以上の成果が出ているのであれば、それには必ず別の力が働いていると思いましょう。その力は、意外に見えていないことが多いもの。その“見えない力”とは何かを明らかにした上で、「ありがとうございます」と素直に受け取り、自分自身が役に立てると自覚できるとき、喜んでお手伝いさせていただくのです。

・素直に受け取ることができない人がいますが、それは自分がお返しをしたくない人、「人に迷惑を掛けたくありません」という人。でも迷惑を掛けあうのが人の常、迷惑を掛けあってお互いが成長し、よりよいものを生み出していくのが人間の世界です。迷惑を掛けたら、その人のために自分ができることが自覚できたとき、精一杯してあげたらいいのです。

お話をお聴きして、なんだか気持ちが楽になりました。どこかで「迷惑を掛けてはいけない」と気張っていた部分が、「掛けちゃえばいいんだ。掛けちゃったら、自分ができることでお返しすればいいんだ」という解き放たれた気持ちになったのです。

一方で、「人は米一俵しか担ぐことができない」との話に、どこかで奢っていた自分がいたように感じ、ドキッとしました。“米一俵の力”の自力を自覚し、“見えない力”の他力を常に意識して、感謝の心で日々を過ごしていきたいと思います。


No.356 変換

1000nen

2017/03/06 09:00:00

先日、あるテレビ番組で、

「人は問題の原因を、自分に非がある場合は状況に求め、他人に対しては内面に求める」

といった主旨の話がありました。

たとえば自分の行動で問題が生じた場合、「あのときはこういう状況だったから仕方がなかった」と、その原因を外に求めようとする。一方で他人の行動で問題が生じた場合、「あいつはああいう性格だからこういう問題を起こすんだ」などと、その人の内面にその原因を求める、というのです。「確かにその通りだ」と感じました。

そこでそれ以降私は、何か問題が起こったときに、その原因を求める自分の心に着目するようになりました。そしてこの理論の正しさに、改めて納得することができました。確かに「自分は外、他人は中」だったのです。

ただ、それに気づくだけでは意味がありません。このギャップは、人と人との間のトラブルの原因になっているわけですから、それを理解してトラブルを早期に解消する、ないしはもっと根源的に、トラブルを発生させないために利用しなければいけないのです。

問題が生じたとき、「自分は外、他人は中」という感情が生まれるのは自然発生的であり、これを止めることは難しいかもしれません。しかしこの理論を知り、活かそうとするならば、事態は変わります。具体的には、次のような“変換”を行うのです。

実際にトラブルが発生したとき、「俺はこういう状況だったから仕方がなかった。でもあいつがもっとこういう性格だったら、今回の問題は起こらなかった」という感情が芽生えるかもしれません。

しかしその次の瞬間に、「いや、そういう状況であったとしてもやるべきことがあったはずだ」と、常に原因は自分にないかと反省する、そして「あいつにも何かそうせざるを得なかった状況があったかもしれない」と、受容の精神を発揮するのです。要するに「自分は中、他人は外」への“変換”を実行するわけです。

私自身、この“変換”を何度か実施してみましたが、効果は結構あります。また、「自分は中」の思考が定着し、行動が伴うようになれば、トラブルそのものの発生も食い止めることができるようになると感じています。

皆さんもこの“変換”作業、実施してみてはいかがですか?


No.357 育成

1000nen

2017/03/13 09:00:00

先日、岡崎商工会議所様主催のひとづくり塾第11期生の修了式があり、18名の受講生が卒業されていきました。

その最終講で、「最後に何か質問のある方はいらっしゃいますか」との問いかけに、ある受講生が勇気をもって手を挙げてくれました。その内容は、次のようなものでした。

「この講座を通じて、部下に愛情をもって接することが大切だと学びましたが、私はどうしても部下に深い愛情を持つことができません。どうしたらよいでしょうか?」

とても素直で、真摯に取り組もうとされたがゆえの心からの叫びともいえるこの質問に私は、次のように答えました。

「稲盛和男さんの言葉に、ものごとに取り組もうとするときのあるべき心構えとして、「動機善なりや、私心なかりしか」というものがあります。本来はそうあるべきであり、その通りだと思います。」

「しかし人は欲の塊。なかなかそうはいきません。かくいう私も欲の塊。偉そうに「愛情をもって育てましょう」などといっていますが、最初からそうであったわけではありません。いや、今でもそのような純情な心で育てられているか、甚だ疑問です。」

「事実、私の本心は「こいつが早く育ってくれれば、それだけ俺が楽になる」なのだと思います。決して初めから愛情があるわけではない。でも欲塗れの動機で育てていても、部下が育ってくれれば嬉しいものですし、可愛くもなってくる。愛情が芽生えてきて、もっと育って欲しいと心から思えてくるようになるものなのです。」

「よって、最初から愛情がある必要はない。動機は善でなくてもいい。私心塗れでも構わない。でも最終的には愛情がもてるようになるまで育て上げる。そういう気持ちで育てられてはどうですか?」

最後には「気持ちが楽になりました。そういう気持ちで育てていきたいと思います」とすっきりされたようです。最後の最後にとても素晴らしい質問を、勇気をもってしてくださったYさんに心から敬意を表すと共に、感謝しています。ありがとうございました。

皆さんもこれを機に社員さんや部下の方々との向き合い方を振り返ってみてはいかがですか?


No.358 健康

1000nen

2017/03/21 09:00:00

お恥ずかしいお話しですが、先週末に体調を崩し、昨日予定していたイベントへの参加を見合わせるしかありませんでした。急な欠席で、多くの方に大変ご迷惑をおかけしてしまいました。

わずか1か月前、吉丸先生から「悟りとは、失って初めて知る大事なことを、失う前に知ること」として、「両親」「連れ合い」「友人」「師」そして「健康」の5つのことを大事にするように教えていただいていました。1か月もしないうちにその教えを守れなくなるとは・・・。悟りへの道は遠そうです。

また次のようなお話もお聴きしていました。

「わかった!」のは、忘れていたことを思い出しただけ。英語を聴いても意味がわからないように、初めて聴くことが俄かにわかるはずがない。「知っていた私って、どんなに尊いんだろう」と褒めてあげて。忘れていたことに気付いた人が凄い。

風邪はひき始めが大切で、「ちょっとおかしいかな?」と思ったらすぐに薬を飲み、水分を補給し、ゆっくり休むことが大切だということは、当然知っていました。しかしそれを思い出したのが、ことが起こった後では「わかっていなかった」「知らなかった」のと同じ。結局私は、まだまだ尊さ、凄さとはほど遠いところにいるようです。

一方で、「きちんとした食生活が健康を担保する」とも教えていただいています。ただし「食材が大切」だとも。

「物事には「見た目」「成分」「エネルギー」の3層がある。どんなに見た目がよくても、どんなに成分(栄養素)がよいとしても、エネルギーが入っていなければ意味がない」と。

天地の恵みを一身に受けた旬のものを選んで、食生活にも気をつけていこうと、改めて感じました。これを機に、健康について考えていただければ、私の風邪も報われます。ぜひ見直しをしていただければ幸いです。


No.359 心境

1000nen

2017/03/27 09:00:00

昨日、稀勢の里が横綱昇進直後の場所で、かつ大怪我に見舞われながらも、見事に優勝を果たしました。不甲斐ない取り組みを見たくなかったので、実況は見ませんでしたが、たまたま流れたつけたテレビのニュースで知り、慌ててネットで映像を貪り見ました。

決して美しい勝ち方ではなかったのですが、何としてでも優勝という結果を出そうという姿勢は、経営者が学ぶべき姿勢だと思います。経営者にとっての勝敗は、決算書によって表現されます。決算書は通信簿のようなもので、かつ損益は勝ち負けに通じます。赤字を出すのは負けと一緒で、何としてでも利益を出さなければなりません。もちろん粉飾などといった法を犯すことは断じて許されませんが、「絶対に利益を出すんだ」という姿勢は、経営者にとって欠かすことができないものです。結局のところ経営者としての優劣は、結果を出し続けることができるかどうかにかかっているとも言えます。

一方、何度も取り組みを再生した後、君が代斉唱中に稀勢の里が憚ることなく流す涙を見ながら、私の関心は、負けた照ノ富士に移っていました。「こいつは絶対に強くなる」と思ったのです。

彼も手負いの獅子でした。それもその怪我は、とうの稀勢の里戦で負ったもの。その因縁の相手との本割、優勝決定戦での二連敗。どれほど悔しかったことでしょうか。それも「怪我を押して出た」のは自分も一緒。にもかかわらず称賛はすべて因縁の相手にもっていかれてしまったのですから。

実は私は、勝敗は既に取組前の土俵下で決まっていたようにも思います。画面に映し出される二人の顔を見たときに、「原因はこれか」と思ったのです。それは心の持ちようです。「人事を尽くして天命を待つ」という言葉がありますが、まさに稀勢の里はその境地にあったと思います。一方の照ノ富士はそうではなかった。その差が、手負いの二人の決定的な違いだったと思うのです。

しかし、来場所の照ノ富士は、一皮むけてくるのではないかと感じています。怪我もしました。悔しい思いもしました。人間というものは、そういう苦難の先に本当の喜びが待っているものです。

ただし待っているだけでは手に入りません。先ほどは「人事を尽くして天命を待つ」ことをご紹介しましたが、これはとことん努力をしてきた人間の、最後の最後の花舞台の時に必要な境地であって、日常の心構えではありません。

「天命を信じて人事を尽くす」

経営者として、この心境で利益という成果を求めて日々精進していきましょう。


No.360 原点

1000nen

2017/04/03 09:00:00

先週の土曜日、千年経営研究会の年次総会を開催しました。役員選任に始まり、活動日程確認、研修旅行企画報告などの後、岡崎・三好・名古屋・豊橋の各地区会の今年度の活動方針が、各会会長より発表されました。

みなさんは、当会の『設立趣意書』はご覧になったことはありますでしょうか?ぜひ一度、ホームページで確認していただければと思います。http://1000nen.info/charter/

その中に、【会員の使命】として、次の内容が記載されています。

本会は、与えられるものではない。自ら創るものである。

・話を聴くのではない。自らの体験に基づく悩み、相談を、憚ることなく吐露すること。

・それらの悩みや相談内容について、会員同士忌憚ない 意見を戦わせ、オープンマインドと傾聴の姿勢で臨むこと。

・その場で決めた実践事項は徹底的に実践し、成果を出すこと。

・一度出された成果は徹底して挙げ続けること。

・その成果に基づき、本音を語ることができ、裏切らない、共に高めあえる朋を創ること。

当会は、2005(平成17)年に設立時のメンバーとの出会いのきっかけができ、2008(平成20)年に設立の発端となった知覧特攻平和会館への研修旅行があり、翌2009(平成21)年に発足しました。今年が9年目になります。

来年10年の節目を迎えるための準備の年ともいえる今年の総会で、“原点回帰”をテーマにお話しさせていただいたのですが、設立当初からの「本会は、与えられるものではない。自ら創るものである」との理念が、脈々と引き継がれていることが各会からの活動方針発表から伺われたことは、私にとってとても嬉しく、誇りに感じることでした。

またこの9年を振り返ることで、懐かしさと共に、会の意義を改めて認識することができ、とても良い時間となりました。

「迷ったら原点に返る。悩んだら原点から考える」

この言葉を胸に、次の10年をより素晴らしいものにできるようにしていきたいと思います。皆さんも共に邁進して参りましょう。月例会にてお待ちしております。ぜひご参加ください。


No.361 行事

1000nen

2017/04/10 09:00:00

先週は、当社行事のオンパレードの週となりました。

3日(月)は入社式で、今年も22名の新しい仲間を迎え入れることができました。

4日(火)は新卒の会社説明会&一次選考会で、私が担当する大阪会場では、13名の受験者に参加していただくことができました。25名の申し込みがあったのですが、事前連絡有のキャンセルが3名でしたので、9名が無断欠席。少し残念な気持ちがありましたが、参加してくれた13名の中から3名の合格者が出てくれて、少し安心しています。

6日(木)は、以前もご紹介させていただいた『コラボ会議』という、各部門の長が一堂に会して、お互いのビジネスのコラボレーションを検討する会議が実施されました。今回は飲み会だけの緩めの場でしたが、各テーブルで熱い議論が展開され、私自身もよい刺激を受けることができました。

9月決算の当社では3月が中間決算で、毎年4月初旬に『中間検討会』を実施していますが、今年は7日(金)に開催しました。業績目標の達成状況の確認が行われるのですが、それ以上に、“思い”の確認に重きを置いています。期初の10月には『方針発表会』を行うのですが、その“思い”を1年間継続するのは、なかなか難しいものです。もちろん毎月の会議や朝礼の場での確認をしていますが、日常の場での確認には一定の限界がありますし、マンネリ的な感覚にも陥りやすいものです。半期を終え、公式の場で“思い”が確認できる場があることは、有効であると思います。

そしてこの土日は、会社の行事ではありませんが、私にとっての1年のビックイベント、『八百津祭り』がありました。今年は私の実家のある町が当本となっているため、いつものように千年経営研究会の公式行事にはできませんでしたが、3組のご家族が応援に来て下さり、張り切って役割を担うことができました。

いずれにしろ行事というものは、1年の節目になるものであると共に、大切なものを確認するために、非常に大きな役割を担うものです。ぜひ一度、自社の行事を見直し、1年間の再構築をしてみてはいかがでしょうか?


No.362 駒

1000nen

2017/04/17 09:00:00

先週、3名の方から相談を受け、全く同じアドバイスをすることになりました。

お一人は、非オーナー企業で、その会社の年齢構成、その方の経験年数や立場など、さまざまな観点から、誰もが将来の後継者候補の最右翼と目しているにも関わらず、はっきりとした態度を示せないAさん。二人目は、社長のご子息で後継者として入社しながらも、普通の社員と変わらない立ち居振る舞いに何の疑問も感じていないBさん。そして、新規事業立ち上げの命を受けながらも躊躇しているCさんです。

お三方にお伝えしたのは、次の内容です。

「自分のやりたいことを考えたら五万とある。でも、自分を将棋の駒と見立てて、その経験・立場・役割を考えた上で、その駒をどう使うことが最も望ましいかを考えたら、答えは一つに収斂される」

私自身、初めて福岡転勤を命じられたとき、俄かには受け入れることができませんでした。当時は「また社長の思い付き」程度に思っていましたし、福岡事務所開設が現実味を増してきても、その事業に携わったことがなかったこともあって、どこか他人事のように感じてもいました。今は既に記憶の彼方ではありますが、失敗を恐れる気持ちもあったのかもしれません。

しかし、その事業に携わるある後輩から「亀井さん、福岡に行ってくれませんか?」と言われたときには、さすがに真剣に考えざるを得ませんでした。

それまでの私の視点は“私”でした。「俺は行きたくない」「なぜ俺が行かなければいけないのか」「俺は今のままがいい」などなど。しかし後輩の一言によって、その視点は“会社”に変わりました。それは「今のわが社にとって、誰が行くことがベストなのか?」という問い掛けです。そして出した結論が、「福岡に行く」だったのです。

以来私は、常に自分を将棋の駒と捉え、「今の今、自分という駒をどう使うことがベストなのか?」と考えるようになりました。もちろん、直ぐには答えを出せないことも多いのですが、物事の全体像を把握しようとする姿勢と決めた後の肚括りは、以前とは比較にならないものになったと思います。

みなさんも、「今の今、自分という駒をどう使うことがベストなのか?」と考えてみてください。きっと気持ちが楽になりますよ。


No.363 目

1000nen

2017/04/24 09:00:00

先日、“業界の風雲児”と呼ばれるある会社に訪問してきました。ライバル企業と切磋琢磨しながらその業界の最先端を突き進み、その革新性と推進力には皆を唸らせるものがあるものの、「業界を軽視している」との噂をよく耳にしていた会社です。たまたまある方からのご紹介で御縁をいただき、事業でお互いに協力し合えることはないかを探るため、期待半分、好奇心半分でお伺いしてきました。

今回の訪問でつくづく感じたのは、

「人の噂をいくらかき集めても、真実に辿り着くことはできない」

ということです。

「業界軽視」の噂については、確かにこれまで、業界というものをあまり意識してこられなかったのは事実だと感じました。しかし現在は間違いなく業界全体を俯瞰し、その中において「自社にしかできない役割」を模索しておられることがよくよく伝わってきました。その姿勢は、当社の理念である“自利利他”に通じるものがあり、精神的な繋がりを感じることができました。

一方で、

「過去の常識に囚われていては、見えないものごとがある」

ことも痛感させられました。「業界軽視」との噂のもう一つの側面は、「これまでの業界の常識から逸脱したものを受け入れられない」受信者側の問題を示唆しているものだと感じたのです。

経営には、地に足をついて今の今を多面的に見つめる“虫の目”ももちろん必要です。それを怠れば、どんなに素晴らしいものであったとしても、受け容れられることは難しいものです。しかし一方で、将来を俯瞰し、全体を俯瞰して見る“鳥の目”も欠かすことができないもの。その両方を持たなければ成長・発展していくことはできない、そんなことを感じさせていただけた訪問となりました。

皆さんもこれを機に、自分たちに必要な“虫の目”“鳥の目”とは何かを考え、その両目で自社を見詰め直してみてはいかがでしょうか?


No.364 心情

1000nen

2017/05/01 09:00:00

先日、久しぶりに夫婦水入らずで京都のお寺さん巡りに行ってきました。ほぼ思い付きの旅でしたが、ちょうど「春の特別公開」期間中ということもあり、普段はお目に掛かることがない庭園や堂内を拝見することができ、とても有意義な一日となりました。

「春の特別公開」の内容はこちら

⇒ https://kanko.city.kyoto.lg.jp/feature/harutokubetsu.php

特によかったのは「仁和寺」と「銀閣寺」でした。仁和寺では日頃は非公開の国宝の「金堂」と「阿弥陀三尊仏像」などの名宝、そして銀閣寺では足利義政公が住まわれたという国宝「東求堂」などが公開されていました。ただ私は、いずれも特別公開されているものよりも、庭園の美しさに魅了されました。

両寺共に一度は訪れたことがある先なのですが、時期がよかったのか、それとも私の心情に何らかの変化があったのか、目に映るすべてが美しく、清らかで、自分の心も洗われていくように感じました。

銀閣寺では、人の流れに逆らうことができず、ゆっくりと鑑賞することができませんでしたが、参詣者が少なかった仁和寺では、時間に縛られることなく、じっくりと拝観させていただきました。

ただただ眺めるだけの時間の中でふと、「この庭のように美しくありたい、清らかでありたい」という心情が芽生えてきました。もちろん美しく、清らかなものを見ただけで、またはそう念願しただけで、それが実現できるわけもありません。

ただその心根を持ち続ければ、そうではないものごとが一つずつ削ぎ落とされていくもののように思います。

しかし人間の心情というものは実にはかないもので、直ぐにそのような“直心”(まっすぐな心)を見失ってしまうものです。よってその心情を思い出すためにも、定期的に古き善きもの、美しく清らかなものを見させていただく機会の大切さに気付かせていただきました。

そして常に「美しくありたい」「清らかでありたい」という心根を失わないようにしたいと思います。


No.365 生産性

1000nen

2017/05/08 09:00:00

皆さんはこのゴールデンウイークをどのようにお過ごしになられましたか?今日は、気が緩みがちな連休明けに、生産性向上に関するお話をしたいと思います。

現在私は、会計事務所の生産性向上のお手伝いをさせていただいています。その中で、成果を上げていらっしゃる事務所で取り組まれている内容をご紹介しましょう。

第一に、「勤務時間を制限する」ということです。特に「退勤時間の厳守」は必須です。当社も以前は“不夜城”と呼ばれていました。そのような状態は、工夫の創出を阻み、かつ働いていることそのものに満足してしまう悪しき風土を生んでしまうとの認識が必要です。

現在当社では「21時退勤」「残業時間月42時間(繁忙期は80時間)以内」を徹底しています。この状態が実現できるようになるには3年ほど掛かりました。それほどまでに“働き方改革”というものは、一筋縄ではいかないものであると認識する必要があります。それほどの覚悟をもって取り組んでいただきたいと思います。

第二に、「品質基準を明確にする」ということです。製造業では“製品品質”が明確ですから、比較的生産性が高いものですが、特にサービス業ではそれが不明確であることが、生産性向上を阻害する最大の要因の一つであるといえます。一方で製造業でも“業務品質”については意外に手つかずであることが多いものです。

ときに“標準化”を否定する方もいらっしゃいますが、やはり標準は必要不可欠です。標準を明確にし、徹底して訓練し、その上で見直すべきは見直す、その繰り返しの中で“業務品質”は高まっていくものなのです。

最後に、「マイルストーンごとの納期を設定する」ということです。ここでいうマイルストーンとは、最終ゴールに至るまでの「同一対象者・同一タイミング」で行う一塊の業務単位と考えていただくとよいでしょう。その単位ごとに納期を定め、予実管理をするのです。最終納期を迎えて「できませんでした」では話になりません。最終納期の達成は、マイルストーンごとの納期達成の延長線上にあります。

第一に掲げた時間制限同様、納期を設定することによって、働く意識も変わっていきます。創意工夫が生まれる土壌ができるのです。

どうしても気持ちが緩みがちになる連休明けに、一度「自社の生産性を高めるためにどうしたらよいか」という課題にチャレンジされてはいかがでしょうか?


No.366 改革

1000nen

2017/05/15 08:00:00

先日、『働き方改革』に関するセミナーを受講してきました。

昨年12月26日に、厚生労働省の長時間労働削減推進本部が「過労死等ゼロ」緊急対策を発表し、違法な長時間労働を許さない取り組みの強化について、新しいガイドラインによる労働時間の適正な把握を徹底することを求められることになったそうです。

働く側についても、「長時間労働は“悪”」との認識が当たり前となってきているようです。日本生産性本部が実施した「2016年度新入社員意識調査」によれば、「残業が少なく、平日でも自分の時間を持て、趣味などに時間が使える職場」を好む新入社員の割合は、じつに81.1%に上るそうです。2014年には70%を切っていたそうですから、この2年間における意識の変化は、相当なものがあるといえるでしょう。

さらには、少子化による労働人口の減少と相俟って、これまでの仕事の仕方で、同じ量の仕事をこなすことができなくなってくることは、間違いないでしょう。まさに『働き方改革』が必要であることがよくわかりました。

一方で私はお話をお聴きしながら、「働きたくても働けない時代がやってきた」という感覚を覚えました。『働き方改革』とは、“働きたい欲求”を“働ける時間”の中で実現するために、「仕事の仕方そのものを改革すること」と感じたのです。

そしてそれはまさに“改善”レベルのものではなく、抜本的に“改革”するという意識で取り組まなければなりません。

私はコンサルティングを依頼される際、「せめて3~5%くらい改善したい」というご要望に対して、「すみません、私の力では無理です。倍(半分)にすることはできますけど・・・」とお答えします。

3~5%程度の改善とは、今の仕事の仕方の根本的な部分を変えずに行うことを前提とした要望であることが多いものです。今の仕事の仕方を変えずに3~5%改善するとは、多くの場合、労働密度の増加を意味しており、相当ストレスフルな状態になる可能性が高いものです。

しかし倍、ないしは半分にしようとすれば、今の仕事の仕方では到底無理で、抜本的な改革が求められることになります。『働き方改革』においても、まさにこのような考え方が必要です。

このセミナーをお聴きして、『働き方改革』が待ったなしの時代になったことを痛感しました。皆さんもこれを機に、仕事の仕方そのものを見直されては如何でしょうか?


No.367 師

1000nen

2017/05/22 09:00:00

先週、「管理者研修」なるものを受講してきました。同テーマの研修は久しぶりで、少し初々しい気分になりました。

また

 ・人間は、無意識の内に相手に合せるもの。フレンドリーに接すれば、フレンドリーな関係が築ける。

・「どう思われて死にたいか」を明確にすれば、どう生きるべきかがおのずと見えてくる。

・「できること」と「したいこと」と「求められていること」、人によって重要視するものは異なる。

・脳は空白を埋めようとする。だから人は目標を掲げれば、現状とのギャップを埋めようと動き出す。

・理想と現状のギャップを埋めるためには、自分のできることに制約されず、あらゆる資源を検討する。

など、多くの気付きを得ることができました。やはり学ぶことは、いくつになっても必要なことだと、改めて感じました。

中堅・中小企業では、たとえば新入社員の育成を多少怠ろうとも、会社が傾いたり、倒産の憂き目にあうようなことに直結することはありません。しかし、意思決定がトップに集中していますから、トップが自己成長の機会を設けなければ、それは最悪のシナリオが訪れるのを座して待つようなものです。またそのトップを支える経営幹部も同様です。よって中堅・中小企業では、

「トップならびに経営幹部は不断に学び続ける必要がある」

と認識しなければなりません。

また、ときどきに行われる研修や勉強会に参加することも大事ですが、それ以上に大切なのが、“師”をもつことです。

ありがたいことに私は、社内においても「この人のおかげで今の私がある」と思える方が3人います。その中の一人、創業者の佐藤澄男は既に亡くなってはいますが、今でも何かに迷い悩んだとき、その判断基準を心の中の佐藤に問い掛け、教えを乞います。その答えに従っている限り、私は私で居続けることができるのです。

さらに社外にも、今の私を創ってくださった方がいらっしゃいます。もしかするとその方たちは私のことを弟子だとは思っていないのかもしれません。しかし自分自身のこの“師”の認識こそが大切で、そういう方を持つことは、常に意思決定をし続けていかなければならない経営者ならびに経営幹部には何より必要なものなのです。

是非皆さんも“師”を求めてください。一人である必要はありません。逆に、それぞれに専門がありますから、多くの“師”を求められることをお勧めします。“師”の存在は、何よりの心の安寧をもたらすと共に、正しい意思決定への道標となるのです。


No.368 らしさ

1000nen

2017/05/29 09:00:00

皆さんには今、「したいけど、できない」というようなことはありませんか?先週は、そのような悩みを抱えていらっしゃる方に多く出会いました。

「したいけど、できない」理由には、大きくは3つの理由があります。それは「したい」ことが固まっていない、または「したい」ことを実行に移すだけの意思が固まっていない、そして「できない」理由を潰しきっていないことです。

「できない」理由には、概ね8つあります。「人がいない」「時間がない」「金がない」「ノウハウ・技術がない」「設備がない」「情報がない」「協力者がいない」「前例がない」です。どうでしょう。皆さんもこのような理由で、「できない」と思っておられることはありせんか?

しかしこれらはいずれも、「解除できるできない理由」です。人がいなければ採るか、育てればいい。時間がなければ作ればいい。金がなければ作るか、借りてこればいい。ノウハウ・技術や設備がなければ買えばいい。情報がなければ取りに行けばいい。協力者がいなければ頭を下げればいい。前例がなければ新たに作ればいい。

「それができれば苦労はしない」といった声が聞こえてきそうですが、その「できない理由」も、必ず解除できるものです。「それができない」のは、結局のところ「したい」ことに対する思いが、「できない理由」を潰すほど強いものではないだけです。それが、「実行に移すだけの意思が固まっていない」ということです。

さて「したい」ことが固まっていないのは、どうしてでしょうか。その理由もいくつかありますが、何よりも大事なのは“自分らしさ”ではないかと思います。世の中にはさまざまな“常識”があります。いろいろとアドバイスしてくれる方々がいらっしゃいます。しかしそれは、あくまでも“外”の世界です。しかし「したい」のは私の“中”の世界。このギャップが、「したいけど、できない」を生んでいるのだと思います。

よって現状を打破するためには、“自分らしさ”を見出すことが必要です。そのために、ぜひやっていただきたいことが2つあります。

まずは、“内観”です。自分自身のこれまでの人生を振り返り、どんなときに“幸せ”や“自分らしさ”を感じたか、深く、深く心の中を探っていくのです。具体的にはカードやメモを使って、書き出していかれるとよいでしょう。

しかし、自分の顔が見えないように、自分という存在を見詰めることは、なかなか難しいものです。そこで必要なのが“鏡”です。ぜひ身近な人の声に耳を傾けてみてください。アドバイスを受けるのではありません。アドバイスは、あくまでもその方の個性や経験・生い立ちから見出された、その方の考えです。そうではなく、自分がどう見えているかを素直に聴くのです。意外な自分を発見できるかもしれませんし、内観の結果得られた“自分らしさ”に、確証がもてることもあるでしょう。いずれにしろ、人の目というものは、意外に精密なものです。

“内観”と“傾聴”。迷った時にはぜひ実施していただければと思います。


No.369 約束

1000nen

2017/06/05 09:00:00

先週「段取り力の達人」というテーマでお話しする機会がありました。今日はその内容について、少しお話しさせていただきたいと思います。

このセミナーでは、私がこれまで出会ってきた段取り力の高い人に共通する習慣を、“段取り力の達人6か条”と銘打って、紹介しました。その内容は、以下の通りです。

一.業務発生段階で段取りする。

二.準備業務は、できるだけ早いタイミングでスケジューリングする。

三.漏れなく“ToDo”に落とし込む。

四.報告書を記載する。

五.定型化・標準化する。

六.“自分納期”を守る。

お話ししたすべての内容をお伝えするには紙面が足りませんので、今回は「六.“自分納期”を守る」について解説します。それ以外の内容については、6月22日にみよし会主催で開催される、千年経営研究会の月例会で詳しくお話しします。ぜひご参加ください。

人は、他人との約束は何とか守ろうとするものです。一方で、人との約束さえも守らないようでは、まともな仕事などできるはずがありません。

問題なのは、自分との約束、即ち「自ら決めたことを必ずやりきる」ことにあります。

自分との約束を守ることは、本当に難しいものです。何よりも口にしていなければ、誰も知らない訳ですから、人から見れば、約束そのものが存在しません。また、守らなくても、誰も文句を言いませんし、誰に迷惑を掛けるわけでもありません。仮に自分との約束を守らなかったことで問題が生じたとしても、それは自分の責任であり、自分で何とかすれば済むこととも言えます。

しかし、その約束を自分と交わしたということは、そこに何らかの理由があったはずです。その理由となっていることが未遂に終わる訳ですから、実施していたら得られたはずのものが得られず、または何らかの損失が生じていることになります。

何よりも「自分を裏切った」その罪悪感は、徐々に自分に対する信頼を失わせ、さらに自分との約束を破ることに何の抵抗も躊躇いも感じない人間になっていってしまいます。とても恐ろしいことなのです。

“自分納期”を守る。

とても難しいことですが、「まあいいか?」と感じたときに「いやいや、ダメだ!」と心奮い立たせる習慣を身につけたいものです。


No.370 鏡

1000nen

2017/06/12 09:00:00

先日、1年ほど前に社長が急逝され、親族に後継者がいらっしゃらなかったため、思いがけず会社を承継された方にお会いしました。

突然の承継であったためにかなり苦労され、お話をお聴きすればするほど、早い事業承継対策の必要性を改めて感じさせていただきました。

承継のご苦労話を一通りお聴かせいただいたのち、今後の課題に話が移ったところで、少し雲行きが怪しくなりました。将来構想に関わる話はほとんどなく、その話の大半が、既存社員への不平不満だったのです。

そもそも亡くなった先代はワンマン気質で、「俺についてこい」タイプ。その上、人の話に耳を傾けることが苦手だったようで、結果として、社員の不平不満の対象となり、変な話ですが、それが社員の団結力をもたらしていたのだとか。

ところがその“敵”がいなくなった途端、「その矛先が自分に向いてきた」と言われるのです。そして、その後は、延々と自分の不遇と社員の至らなさを語られることになりました。

しかしよくよく話を聴いてみると、どうも原因はその新社長にあるようでした。先代のリーダーシップしか知らない彼は、いつの間にか先代と同じ言動を繰り返すようになっていたのです。先代と同じ仕打ちを受けるのは、ある意味、仕方がないことだと思えてきました。

そこで彼には、「先代に対して、どんな言動を求めていましたか?」と、「これ以上ありません」と言われるまでお聴きしました。その内容をメモに取り、「ご自身でできていることに○をつけてください」とお願いしました。

最初は、「全部できてます!」と強弁されていましたが、「ひとつずつお願いします」と促すと、ペンは止まり、みるみる顔が赤く染まっていきました。

「今できていないことは仕方がありません。だって見本がいなかったんですからね。でも、だから今のままでいいということにはなりません。今あなたは理想の社長像を描くことができました。だったらあなたが見本を創っていきましょう。承継問題は多くの人が絡みますから、多くの苦労があったのだと思います。でもこれは自分だけでできることです。あなたなら必ず乗り越えられますよ。」

「やってみます」と言われるその言葉には、戸惑いながらも「やらなければいけない」という決意が伺われました。

人は鏡です。相手に映る不平不満は、自省に活かさなければなりません。その上で理想を明らかにし、自らが鏡となってその理想を映し出す。そういう取り組みの繰り返しが必要なのだと思います。


No.371 質問

1000nen

2017/06/19 09:00:00

人は、問題であるとはわかっていて、かつどうすればよいかも薄々気付いてはいるものの、行動に移すことができずにいる、ということが往々にしてあるものです。先日も、そんな社長とお会いしました。

私は、そういう方に出会った時に、ある質問法を頭に浮かべながらお話をするようにしています。それは『SPIN話法』というものです。具体的には、次のような質問ステップを踏んでいきます。

○状況質問(Situation question)

・まずは近況などをお聴きする。

○問題質問(Problem question)

・近況の中から、現在どのような問題を抱えていらっしゃるのかの仮説を立て、その仮説を立証するための質問をする。

○示唆質問(Implication question)

・特定された問題が引き起こす影響について質問する。その問題を放置することで、どれだけの影響を及ぼすかに気付いてもらう。

○解決質問(Need-payoff question)

・どうすればその問題が解決できるかを質問する。答えは既に相手の頭の中にあるもの。それを引き出し、解決に向けての動機づけをする。

特に大事なのが、3つ目の『示唆質問』です。結局、「気付いているのに、何も行動を起こさない」のは、その問題を放置することの影響にまで想像が至っていない、ないしは想像することから逃げている状態であることが多いものなのです。

一方で、「問題だ」「何とかしなくてはいけない」と口にされるものの、『示唆質問』に対して、それほどの危機感が伝わってこない場合もあります。その場合私は、話をすることを断念します。詰まるところ、本人に解決する意思がないからです。これはお互いにとって、時間の無駄と言えるでしょう。

逆に、問題放置の影響を明確にイメージできた瞬間、物事が動き出すということは多いものです。今回の社長もそのケースで、わずか30分の面談の後、直ぐに幹部の方に問題解決に向けた指示を出されました。まさに『示唆質問』の成果であったと思います。

皆さんの周りで、問題解決に向けてくすぶっておられるような方がいらっしゃったら、ぜひ『SPIN話法』を頭に思い浮かべながらお話ししてみてください。もしかすると長いトンネルを抜けるきっかけになるかもしれません。ご自身の問題も含めて・・・


No.372 承継

1000nen

2017/06/27 14:54:56

先週、ある会社から事業承継に関わるご相談を受けました。詳細は控えさせていただきますが、親子間の事業承継において、それぞれが大切にしなければならないことについて、改めて考えさせられました。

譲る側はまず、「いつまでもその舞台に立ち続けることはできない」ことを自覚した上で、「自分とは異なる個性と能力を持つ者を認め、受け容れる」ことを強く意識する必要があります。

今回のご相談においても、創業者であるお父様は、自分の思い通り動いてくれないことを嘆き、二言目には「あんな奴には譲れない」と憤られるばかり。

そんなお父様の愚痴ボヤキをお気の済むまでお話しいただいた上で、私からは「まずは、生まれてきてくれた時の喜びを思い出してください。その上で、これまで一緒に暮らしてきた中で感じるよいところを100個挙げてみて下さい。足りないところを挙げたら、切りがありませんよ」とお伝えしました。

一方で譲り受ける側は、「継ぐことができるものを残してくれた」ことに心から感謝した上で、「まずは創業以来の歴史と、これまで大切にしてこられたものを知り、守るべきものは守る」こと意識しなければなりません。

後日、ご来社になった後継者の方も、お父様の考え方の古さをことさらにあげつらえ、時代錯誤を嘆くばかりで、預かったものへの感謝の気持ちが感じられませんでした。

そこで彼には、「反論する前に、まず「はい」と返事をすること。その上で、なぜそう考えるのかを冷静に聴くこと」と諭した上で、ご家族と一緒に年表つくりをすることをお勧めしました。創業社長の場合、それ以前からの経緯を知っているお母様と一緒に作られる価値は大きいものです。

そしてその年表つくりの中から、今預かろうとするものが、どれほどの苦労の上に成り立っているのかを知ることで“感謝”の心を、その歴史の中で「これがあったから当社が今あるのだ」と思えるものを知ることで“信用”の礎を感じることができるようになるものです。

いずれにしろ事業承継での揉め事は、どちらか一方に責任があるということはありません。譲る者、譲られる者の双方が、自らの問題に目を向けることから問題解決が始まります。

特に揉めてはいない方も、今回の話を参考に、今一度事業承継のありようを見直してみてはいかがでしょうか。


No.373 評価

1000nen

2017/07/03 09:00:00

先日お伺いした会社で、「評価制度を導入したけど、逆効果だった」というお話をお聴きしました。「社員のやる気を鼓舞するために導入したのに、逆にやる気を失わせ、会社の雰囲気も悪化してしまった」のだとか。

そこで、その背景をお聴きしたのですが、確かにいくつかの問題点がありました。

第一に、大企業並みの素晴らしい“見栄え”の制度だったのですが、残念ながら一人一人の社員の顔が見える中小企業に、大企業的な評価制度を導入すると失敗することが多いものです。具体的には、「評価項目に応じて点数化する。しかしその点数には納得できない。だから鉛筆なめなめで修正するも、もうその時点で説明がつかなくなってしまう」という結果に陥りやすいのです。

そこで中堅・中小企業には、“認定方式”の方が馴染むものです。評価項目で点数化する前に、「実はもう決めている」のではないですか?だったらその腹づもりを起点としたアプローチが必要です。「なぜその点数なのか」「なぜそう思えるのか」を追求するのです。そしてその内容から彼、彼女に期待することは何かを明らかにしてきちんと伝える。そういうスタイルの方が、中堅・中小企業には明らかにマッチしています。

第二に、説明力を高めるための“見える化”ができていないこと。男気のあるその社長は、「頑張った」「よくやった」という超主観ワードで評価する傾向にありました。これは明らかにNGで、期待を数値や行動で客観的に評価できる環境を整える必要があります。

そして何より、この会社における最大の問題は、「評価を楽にするために導入した」点にありました。

本来は評価などしなくても、「働くことそのものが喜びである」ことが理想です。しかしその“喜び”の山に登ったことがない者に「登頂の喜びを感じろ」というのは無理な注文です。だから、「当社は何を以って社会に貢献しようとするのか?」「その貢献に対して、社員にどのような役割と成果を求めるのか?」「結果として社員にどのような喜びを感じてもらおうとしているのか?」などを明確にし、その登頂ルートを示し、現在地点を的確に指摘する、それが人事制度の根幹でなければいけません。

いずれにしろ評価制度は、評価することそのものには価値はありません。社員の人生が素晴らしいものになって欲しいと心から願い、成長を期待し、どうすればより一層の成長が実現するのか、その方向性を指し示すことにこそ、意義があります。

既に評価制度を持たれている会社は、そのような視点で制度の見直しを、またまだない会社では、そのような視点での制度設計をお勧めします。


No.374 節目

1000nen

2017/07/10 09:00:00

先週の土曜日、ある会社の「創立45周年記念感謝祭」にお誘いいただき、参列させていただきました。

「今、当社があるのは、パートナー企業様のおかげ」と、ご招待されたのはお客様ではなく、仕入先様や協力会社様、または金融機関様など、ビジネス上でお世話になっている方々だけでした。そこにこの会社の姿勢が表れているように思います。

またその内容も「すべて社員さんの手作り」とのこと。司会進行はもちろん、ご接待していただいたのも社員さん、そして途中放映された社員さんのご紹介ビデオも、入社3年以内の新入社員の方々の手作りのものでした。

その制作に関わったという最年少の社員さんが「大変だったけど、楽しかったです」と、短い期間での制作の苦労以上の喜びを感じておられたようでした。

また社員さんが紹介されるたびに、お付き合いのあるパートナー企業の方々から優しい微笑みと温かい言葉が掛かり、とても素晴らしい時間を共有させていただくことができました。

実はその会、5代目社長の就任披露を兼ねており、千年経営研究会のメンバーでもある新社長が就任挨拶をされました。

真面目な方なので、事前準備に怠りはないと確信していましたが、真摯な姿勢と心の籠った挨拶で、とても安心しました。彼自身、噛み締めながら口にする一言一言に責任の重さを感じると共に、素晴らしい会社にする覚悟を持つことができたように思います。

またそれを支える社員さんの存在を改めて自覚し、勇気をいただいたと同時に、そこに参加する社員さん自身の結束力も高まったように感じました。9月には、社員さんだけのお祝いの会が開かれるのだそうです。その結束力は、さらに高まることでしょう。

今回の会に参加させていただいて、人生にしろ会社経営にしろ節目のイベントというものは、そこに集う者たちの“覚悟”と“勇気”と“結束”をもたらすものであると改めて痛感しました。


No.375 変化

1000nen

2017/07/18 09:00:00

先日、ある相談を受けました。具体的な内容は差し控えますが、要約すれば「明らかにグレーな内容を、どうしたらホワイトに見せることができるか?」といったようなものでした。

何か怪しい相談のようですが、意外に少なくないものです。なぜならその「明らかにグレーな内容」とは、ほんの数年前まで業界の常識だったものが、法律が変わった、ないしはその運用が厳格化されたことによって、俄かにグレーになった、といった類の内容だからです。

企業側からすれば、「今まで善しとされてきたことが、いきなりダメだと言われても困る」と感じるのは、致し方がないことだと思います。

しかし法律は法律です。ときに「法律が間違っている」などと勝手な解釈をして、平気で法令違反をする人がいます。これは就業規則や社内ルールなどにおいても同じです。

私はそのような人に対して、「嫌なら変えろ。変えるまでは守れ」とお伝えします。そのような人に限って、文句を言うばかりで自ら変える努力をしようとはしませんから、結局は守るしかなくなるのですが、、、

話を戻して、先の相談において先方は、グレーな内容をベースにしてどう法的な根拠を持たせるかを探っておられ、そのアドバイスを求められたのです。

それに対して私は、「まずは法律をベースに考え直す必要がある」とお伝えしました。グレーをホワイトにするのではなく、ホワイトを前提に、どこまでグレーが許されるかを検討した方がよい、という訳です。

結果的には同じゴールに辿り着くのかもしれませんが、前者のアプローチの場合は、どうしても心のどこかに後ろめたさが残るものですし、嘘に嘘を重ねる結果にもなりかねません。逆に後者の場合は、法的な根拠をきちんと示しながら、毅然とした態度を保持することができるでしょう。

仮に指摘を受け、改善を求められても、法的根拠を前提として構成している以上、どう変更するかも明確です。前者の場合は、その都度、根本的な見直しをしなければなりません。後日のことを考えても、後者の方がよいものなのです。

そもそも業界の常識というものは、世の中の非常識であることが意外に多いものです。法律のみならず、世の中の風潮などによって、その非常識を問われることもあるでしょう。その際は、「ホワイトから考える」ようにしていただくとよいと思います。


No.376 周年

1000nen

2017/07/24 09:00:00

先週の土曜日、当社OBで、千年経営研究会のメンバーでもある税理士事務所の「10周年感謝の集い」に招かれ、参加してきました。

7年前、別の同僚の結婚式で偶然に会った際、ちょうど丸3年を迎えたという話を聴いて、お客様やお世話になった方への感謝の気持ちを伝える場を作るようにお勧めして以来、形を変えながらも毎年続けてきたとのこと。

ここ数年は、中期経営計画の発表会と組み合わせていたとのことですが、今年は10周年の節目ということもあり、純粋に感謝伝達の場にされたのだとか。

残念ながら、冒頭の先生の話は聴けなかったのですが、参加されている方々の笑顔を見るにつけ、その気持ちは十分に伝わっているものと感じました。

またいただいた資料の中に、先生のメッセージがありました。少しご紹介させていただこうと思います。

「何の才能も持たない私が10年間事業を継続することができたのも、お客様、社員、取引先等たくさんの方々との出会いに恵まれ、そして支えていただいているからです。本当にありがとうございます。」

「創業当時を振り返ってみると、お金なし、コネなし、実績なし、社員もいなければお客様もいない。ないない尽くしからの創業でした。しかし今となっては、それがよかったのだと思います。何もないからこそ、あることに有難みを感じることができるし、工夫するようになるからです。」

その通りなのだと思います。創業者の方は、間違いなく共感されることでしょう。

一方で、後継者の方々にもぜひ聴いてもらいたい話でもあります。実感はなくとも、創業者の苦労の一端を知ることができれば、預かっているものの価値を少しでも感じることができると思うからです。

いずれにしろこのような周年行事は、主催する側のみならず、参加者にも大きな気付きを得る大切な機会なのだと思います。そしてその機会を作り出すことが、御恩返しにもつながっていくものなのです。ぜひ皆さんも、このような機会を大切にしていただければと思います。

参加させていただいたお礼という訳ではありませんが、彼の初著書となる本をご紹介します。よろしければご購読ください。

「起業して3年以内に絶対つぶれない会社のつくり方」(伊藤圭太著・セルバ出版)


No.377 変革

1000nen

2017/07/31 09:00:00

このところ、「仕事量は増えてきているものの、それに見合う採用ができない」との話をよく耳にするようになりました。皆さんの会社は如何でしょうか?

そのようなお悩みをお持ちの方に私は、次のようなアドバイスをさせてもらっています。もし参考になるようでしたら幸いです。

まずはこれを機に、業務そのものを見直すことです。実は現状、やらなくても済んでしまうことを、過去の延長で習慣的に継続していたり、もっと簡便なやり方があるのに、見直されることなく漫然と行っていることが、意外と多いものだからです。

次に、採用人材の見直しを行うことです。もちろん将来を担う正社員を継続的に採用することは大切ですし、パートさんでもできればフルで働いてもらえる方に越したことはないのですが、この層が取れなくなってきているから、そうも言っていられません。

そこで、着目していただきたいのが、業界未経験・出勤不定期の時短パートさんです。要するに、まだ子供に手が掛かって時間が制限され、さらに子どもが病気になれば、出勤予定であっても休まざるを得ない方たちです。実はこの方々の中に逸材が眠っています。

もちろんこのような方々に頑張ってもらうためには条件があります。それは『教育しなくても即日できるようになってもらえる仕組み』があることです。具体的には作業指示書とマニュアルが必要となります。マニュアルは、できれば映像化されているとよいでしょう。いずれにしろ『教育を必要としない』レベルのものが必要です。そうでなければ、出勤の都度、教育だけで終わってしまう、という結果になりかねません。

一方で、そのような視点で作られた指示書やマニュアルは、間違いなく正社員やフルパートさんの教育の時間短縮にも通じます。「これを機に、教育体制そのものを見直す」という視点を以て検討していただくとよいでしょう。

また、IT活用も検討の必要があります。業界内外を眺めて、IT活用で成果を挙げておられる事例を研究されることをお勧めします。

最後に検討すべきは、アウトソーシングです。自社の基幹業務でなければ、それを得意としている会社に頑張ってもらうのです。WIN-WINの関係といってもいいでしょう。この取り組みを通じて、自社の強みにより経営資源を集中させることができるかもしれません。

いずれにしろ「時代が変わる」ことは「会社を変える」チャンスです。企業は“環境適応業”と言われます。この時代の変化を、ぜひ自社の変革の機会としてみてください。


No.378 ES

1000nen

2017/08/07 09:00:00

先日、ある方から「面白いミーティングをしている会社がある」とご紹介をいただきました。その名は「株式会社 ら・さんたランド」。年2回の全体ミーティングを公開しておられるのだとか。http://lasanta.jp/seminar

「パンの訪問販売で幸せを運ぶ」をコンセプトにしたその会社が行うミーティングは、企業理念を達成するために、お互い進むべき方向を確認し、理解する共有の場を設けることで、よりよい仕事をしていくことを目的として、元々スタッフだけが参加するものだったそうです。しかし取引メーカーも参加してもらったところ評判を呼び、徐々にその参加者の枠を広げてこられたそうで、これまでに39回開催、延1300名の方が聴講されているそうです。

時間は10:00~17:00で、参加費用は参加セミナーの内容や宿泊希望の有無により、8,000~24,000円。資料一式もいただけるとのことですので、決して高いものではないと感じます。

その中でも、ご紹介いただいた方が「感動した」と言われるのが、表彰式だったそうで、その内容を教えてくださいました。

賞の名前は「ベストサポート賞」。表彰されたのはいわき営業所のベテラン社員Aさん。社員と言っても、歩合制の個人事業者のようなもので、売上高に比例して給与が決まります。元々福島営業所勤務だったAさん。東日本大震災で大きな被害を受けたいわき営業所にいた新人のBさんを気遣い、自ら担当営業所の変更を志願されたのだとか。自らの給与が減ることが目に見えているにも関わらず、です。更には休みの日はすべてボランティアで復興支援をされていた。それが評価されての表彰でした。

賞金はわずか3,000円×6か月。それでもAさんはとても嬉しそうで、誇らしそうでもあったとのこと。「まさに社員の命が躍動している」と感じられたそうです。

私は常々「イキイキ・ワクワク・ドキドキ仕事をする人だけが、お客様に本当のご満足を提供することができる」とお伝えしています。また、「CSよりESが先」とも言われます。「顧客満足よりも従業員満足の方が先」という意味です。ら・さんたランドは、まさにそれらを地で行く会社であると感じました。

「自社の社員は、心からイキイキ・ワクワク・ドキドキ働くことができているだろうか?」

この問いを自ら投げ掛け、常に改善していく努力を怠らないようにしたいものです。


No.379 家系

1000nen

2017/08/22 09:00:00

先週の13~15日、例年通り、家族でお墓参りをしてきました。そして実家でゆっくり過ごし、1日1㎏の増量に成功して帰ってきました。皆さんはお盆休み、どのようにお過ごしになりましたか?

お墓参りは例年通りでしたが、今年はいつもとは違う場所に行ってきました。それは町役場です。戸籍謄本を取ることが目的です。

私が名南経営に入社して以来、創業者・佐藤澄男の御縁で、ずっとお世話になっている天明茂先生という公認会計士の方がいらっしゃいます。年に何度もお会いしながら全く存じ上げなかったのですが、平成27年に本をお出しになっていらっしゃいました。その本に偶然出会い、感銘を受け、この8月から先生が主催する研修に参加させていただくことになりました。その本の名前は

「なぜ、うまくいっている会社の経営者はご先祖を大切にするのか」(致知出版社)

そして参加した研修で宿題に出されたのが『家系分析』で、まずは父母、両家の祖父母と曾祖父母の三代に亘って遡り、家系図を明らかにすることになったのです。

今回、父方の実家にしか帰省できなかったので、取り敢えずそのルーツを探ってきました。町役場に行き、「家系図を作りたいので、あるだけの戸籍謄本が欲しい」と伝えたら、職員の方も慣れたもので、嘉永元(1848)年生まれの高祖父母(曾祖父母の親)の戸籍謄本まで出してくれました。

自分自身の戸籍も含め合計7部の謄本を渡されたとき、「いのちの重み」を手にした気持になり、同時に「ありがたさ」がじわっと湧いてきました。そしてこれが、子→孫→曾孫と続いて行くのかと思ったら、それこそ「責任の重さ」を感じました。それだけでも、「やってよかった!」と思います。

『家系分析』では、父母・祖父母・曾祖父母の生きざまを調査し、その徳を明らかにしていくのだそうです。まだまだ父方の戸籍謄本を手に入れただけですので道のりは随分遠いのですが、まずは母方、祖母方の役場にも赴き、より一層の「いのちの重み」と「ありがたさ」を手にして帰ってきたいと思います。

皆さんもぜひ、実践してみて下さい。そして次回お会いした時に、その喜びを共に語り合いましょう。


No.380 議論

1000nen

2017/08/28 09:00:00

先週の日曜日と月曜日の2日間、私が所属する事業部の経営計画策定合宿が行われました。30代のリーダーから60代の顧問までの総勢11名で、10年後の60周年に向けた経営課題を明らかにすると共に、来期の計画への落とし込みまでを行いました。

毎月1回、2時間ほどの会議は行っていますが、やはり月々に発生する諸問題への対処が中心となり、将来に向けた話ができる時間を確保することは難しいものです。本当はもっと時間が取れればいいのですが、特に現場を抱えるリーダーたちにとっては、逆に月2時間の時間を捻出することも、そんなに簡単なことではありません。

そこでじっくりと話し合える時間を確保しようと、内外からの問い合わせから解放される日曜日を含めた2日間での合宿を、昨年より始めました。今年もとても充実した時間を過ごすことができました。

特に、役割の違うメンバーからの話を聴くことは、私にとっても貴重なものでした。各自がそれぞれの役割を担い、その実践からさまざまな情報を得、体験をし、知恵を身につけていきますが、それはあくまでも自らの役割の中から得られるものに限られます。役割が違えば、情報も、体験も、知恵も異なってくるもの。その自らは体験できない実践の中から得られるものを、疑似体験とはいえども触れることができることは、自らの器を広げていくためには欠かさざるべきことだと思います。

この合宿では、2つのルールがあります。そのひとつが「否定禁止」です。もちろん、最終的な実践事項を決定する際には、出された案に対して肯定・否定の考えを余すことなく出し合って決定するのですが、特にアイデアを出す段階では、一切の否定を禁止しています。その代り、人の意見に乗っかったり、アレンジしたり、膨らませたりするのは大歓迎。結果として充実した議論が実現するのです。

二つ目が、特に役職・年齢の上の者が対象となるのですが、「決め付け禁止」です。どうしても経験が上回る年長者は、若手社員を前にすると、決め付けたものの言い方をしてしまうものです。しかしそれは、若手の隠された素晴らしい意見を封じ込めてしまうことになりかねません。厳に戒める必要があります。

このようなルールに従って進められた今年の合宿も、実に充実したものでした。とはいうものの、「本当はもっと時間が欲しかった」というのが本当のところです。ただ検討すべきことの骨格は明確になりましたので、後は日々の業務の中で個々に話し合いながら、より一層深い議論をしていこうと思います。

未来への投資時間として、このような時間を設けることは、とても大切なことだと思います。まだ実践されていない方には、強くお勧めします。


No.381 真実

1000nen

2017/09/11 09:00:00

先週、千年経営研究会で年1回実施している、研修旅行に行ってきました。今年、企業訪問でお邪魔したのは、東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受けた岩手県陸前高田市で、文化4(1807)年から続く老舗の醤油製造業を営む「株式会社 八木澤商店」さんでした。

工場も、杉桶も、生産設備もすべて失い、まさにゼロからのスタート。そして被災から約6年半、「完全復活までには、未だ7合目」と言われる状況の中、「岩手と熊本以外では講演しない」という昭和48年生まれの若き9代目社長・河野通洋さんが自ら時間を取り、何もかも包み隠さずお話しいただきました。

再生の物語は、「奇跡の醬(ひしお)」(竹内早希子著・祥伝社)に詳しく記載されています。興味がある方は、ぜひご購読ください。

今回、お聴きできたのは、まさに「本には書けない」お話しでした。父親との関係、ベテラン社員との確執、奥様の助け、厳しくも頼もしい仲間の存在・・・。いずれも、これまで千年経営研究会のメンバーが悩み、もがき、苦しみながら辿り着いた、“事業承継の要諦”がすべて盛り込まれた内容だったのです。改めて、メンバーの実体験の中から生まれた著書「事業承継対策の立て方・進め方」の確からしさが証明されたように感じました。

もう一つ感じたのは、「自分の耳で聞き、目で見、肌で感じなければ、真実を把握することはできない」ということです。今回、河野社長のお話を聴き、陸前高田から仙台まで海岸沿いを走ってこの目で見、車を降りて現地の人たちに直接触れてみて、公的機関から発表されるデータやマスコミなどからもたらさせる情報は、確かに事実ではあるもののその一部分でしかなく、またその立場によって加工(中にはねつ造)されたものであり、決してその本質を知ることはできない、ということを痛感しました。

最後に、今回のお話の中で一番しびれた言葉をご紹介します。それは河野社長が近所で和菓子屋を営む88歳のおばあさんから掛けられた

「また同じ場所で商売やろうね」

という言葉でした。この思いが、商売の原点なのだと思います。そして、震災したその日の夜、河野社長が思われたという

  「いつまでも泣いてる訳にはいかない」

という決意が、被災地で商売を続けておられる方々の共通の思いであり、苦境にある中堅・中小企業の経営者が持つべき共通の覚悟なのだと思います。

いずれにしろ、今回も多くの気付きを得ることができました。詳しくは月例会にてお話し致します。ぜひご参加ください。

また、今回の素晴らしい旅行を企画してくださった名古屋会のメンバー、そして2日間を通じて運転してくださったMさん、本当にありがとうございました。この場を借りて、心から御礼申し上げます。ありがとうございました。


No.382 強み

1000nen

2017/09/19 09:00:00

先月22日の「家系」の項でご紹介した、天明先生の第2回目の研修に参加してきました。今回のテーマは、「人生の中間決算」で、主に2つのテーマに取り組みました。

一つは「自分の誰にも負けない強みを明らかにする」です。これまで作ってきた成果・徳を明らかにし、自分自身のアイデンティティとは何かを、自分自身で言葉にするのです。

正直なところ、これは少し照れ臭いものがありました。欠点であればいくつも上がるのですが、長所となるとなかなか上げることができないものです。

日頃私は、「自分のいいところを100個挙げなさい」との宿題を出すことがあります。“長所伸展”の原則から、まずは自分自身の良いところを明らかにすることの大切さを知っていただくためです。私自身も過去に何度かトライしたことがあります。

しかし、今回はそれを「端的に表現する」ことが課題でした。列挙することはできても、端的に表現することは、なかなか難しいものです。それは「言い切らなければならない」からです。「そうはいっても、完璧とは言えないし、できていないときもある・・・」などと考え始めると、ペンが止まってしまいます。

それでも勇気をもって書き切ったとき、なんだか爽やかな気持ちになると共に、勇気と覚悟が生まれてきました。自分の生きる道がサッと開けたような気がしたのです。これは私にとってとても大切な財産になりました。

「自分の強みを断言する」これは皆さんにもお勧めします。

そして二つ目のテーマは、「後半人生に残された課題を明確にする」でした。宿題となっていた家系分析によって明確にしたご先祖様が積んできていただいた徳を相続し、これまで自分自身が作ってきた徳・不徳を整理した上で、これからの人生をどう生きていくかを明確にするのです。

この点については、私自身が宿題の家系分析に十分な時間が取れず、ご先祖様の徳の調査が進んでいないこともあって、未完成で終了してしまいました。次回までに考察を進めていきたいと思います。

偶然出会った研修でしたが、私にとってとても大切な時間をいただいていると感じています。もしかするとご先祖様に導かれたのかもしれません。残り2回ですが、一所懸命に受講したいと思います。


No.383 社会見学

1000nen

2017/09/25 09:00:00

先日、家内と二人で「徳川美術館」に行ってきました。

実は先月、福岡事務所のお客様が当社の本社見学に来られた際、“初名古屋”という方がほとんどであったため、たまたま前日が日曜日だったこともあり、私がエスコートして“名古屋見物”をすることになりました。ところが、私自身が名古屋観光には全くの無頓着で、どこにお連れしていいかわからず、ガイドブックとにらめっこして次の旅程を組んでみました。

昼食「山本屋本店」→「トヨタ産業技術博物館」→「名古屋城」→「名古屋市役所&愛知県庁」→「テレビ塔」→夕食「風来坊」

※移動は観光ルートバス「メーグル」。1日乗車券で、各施設の入場料の割引あり!

翌日の「熱田神宮」→「七里の渡し」→昼食「蓬莱軒」も相俟って、このコースは大変喜ばれました。もしよろしければ、皆さんも利用してみて下さい。

さてここで問題になったのは「トヨタ産業技術博物館」。ネット上では高い評価をされているものの、私自身は行ったことがなく、日が近づくに連れ、不安が募ってきていたのです。

そこで、家族サービスを兼ねて事前調査に行くことになったのですが、とても素晴らしい施設で、「名古屋にもこんなに充実した施設があるのか!」と驚くと共に、意外に喜んでくれた家族を連れて名古屋の隠れた名所を訪ねてみたいと思い始め、第2弾として今回の“社会見学”となったのです(実際には私が行ったことがなかっただけなのですが・・・)。

今回も、実に良いものを見させていただき、目の肥やしとなりました。特に“道具もの”の細工の精緻さには目を見張るものがあり、改めて日本の技術力の高さを実感させられました。そして、このような素晴らしい伝統技術をきちんと伝承していかなければならないと、痛感しました。改めて自分自身、何ができるかを考えていきたいと思います。

たまたま開催されていた、「天璋院と和宮展」により、これまで知らなかった幕末の歴史を垣間見ることができたのも幸いでした。

いずれにしろ、自分が住む街の素晴らしさ、日本文化の素晴らしさを実感できる“社会見学”。今後も続けていきたいと思います。


No.384 標準化

1000nen

2017/10/02 09:00:00

今、とある業務の標準化を進めています。プロジェクトメンバーが集い、その業務のやり方について、会社としてのあるべき姿を明確にしよう、という取り組みです。

その第一歩として、『業務の終わりの姿とその構成』を明確にしました。要するに「何ができたら仕事が終わったといえるのか?」を明らかにすることです。「えっ、そんなのわかりきったことで、今更何を明らかにするの?」という声が聞こえそうですね。本当にその通りだと思います。しかし実際には、「人によって異なる」ことは少なくありません。

もちろんモノづくりにおいては、あり得ない話です。しかし製造業においても、例えば経理や総務、営業や設計といった職種においては、意外に『業務の終わりの姿とその構成』が人によって異なっていることが多いものです。実際に本プロジェクトにおいても、お互いのやり方を披露するたびに、「えっ?」という顔や声が何度も出ました。

次に『業務手順』を明らかにしました。『業務手順』とは、その名の通り、最終ゴールに至るまでの業務を進める順番です。これも『業務の終わりの姿とその構成』と同様、「えっ?」のオンパレード。

最初は「みんな間違ってる!」と自分を信じて自信をもって発言していたメンバーも、途中からは「本当は何が正しんだろう?」と、疑心暗鬼になってきたようです。「30分もあればできるでしょう」と言っていたメンバーもいましたが、この2つの明確化をするだけで3時間。実に想定の6倍の時間が掛かってしまいました。それほど隠れた“認識の違い”と“思い込み”の罪は重いのです。

もちろん誰が悪いという訳ではありません。その状態を放置してきた会社が悪いのです。我々経営陣には、そういう認識が必要です。

さて、「えっ?」に満ち溢れたミーティングでしたが、最後には、

「ギャップが明らかになってよかった!このギャップを知らずに業務をしていくことを想像したらぞっとする」

「実は自分の仕事の仕方に不安を感じていた。すっきりした!」

「これで今までよりも楽に仕事ができそう!」

という声が聴かれ、実施して本当に良かったと感じています。

この先、『作業マニュアル』『チェックリスト』『進捗管理』など、標準化すべきことは山積みですが、このプロジェクトを通して、より効果的・効率的な業務が実現できると確信しています。

世にいう『働き方改革』とは、換言すれば『働けなくなる改革』です。仕事をより正確に、より短時間に行う方法を不断に追及していかなければなりません。そのことを全体で認識し、具体的な取り組みを実践されることをお勧めします。


No.385 危機感

1000nen

2017/10/10 09:00:00

先週の金曜日、当社の方針発表会が開催されました。私ども名南経営は昨年、ありがたいことに50周年を迎えさせていただきました。今期は新たな10年の最初の年で、当ネットワークの強みである“ワンストップサービス”“総合力”をさらに強化・展開する方針が発表されました。その具体的な内容については、またお会いした時にお伝えしたいと思います。

また翌日には、ある部署の方針発表会が執り行われ、部門方針だけではなく、メンバー一人ひとりの個人目標も発表されました。

その部門はここ数年、売上高ベースで毎年10%成長を続けており、当ネットワーク内においても稼ぎ頭のひとつとなっています。また個々人も年間目標もほぼ全員達成できており、発表会の場も、とてもよい雰囲気で、活気のあるものでした。

しかし、個々人の発表で一番多く出てきたキーワードは『危機感』でした。

初めのうちは多少違和感があったのですが、繰り返し出てくるその言葉に、その目標達成が相当の努力の上に成り立っているものであり、さらなる成長を実現していこうとするとき、「今のままではいけない」という強烈な“問題意識”と“使命感”をもっていてくれることがわかってきました。そしてそのことが、とても嬉しく、かつ頼もしく感じました。

ときに、危機感を無暗に煽るリーダーがいますが、これは決して好ましいことではありません。そういうリーダーに限って「じゃあ、どうすればいいんですか?」の問いに答えられないものです。要するに自分の感じている不安を口にしているに過ぎないのです。厳に戒めなければなりません。

少なくとも、リーダーの率先垂範の行動を通じ、メンバーがその背中を見て危機感が醸成されていくことが求められます。ただしそこに、悲壮感が伴っていてはいけません。

優れたリーダーとは、自らの言動を通じて、どのような危機的状況に際しても、明るく、前向きに、喜んで対処・行動ができる組織を創ることができる人です。リーダーは、そのような資質を身につけるために、不断の努力をしていかなければなりません。

自らの組織が「明るい危機感」「前向きな危機感」をもち、喜んで、進んでその危機に立ち向かっていくことができるよう、明るく、前向きに自らを成長させ、対処していきましょう。


No.386 人間力

1000nen

2017/10/16 09:00:00

先日、『人間力診断』なるものを受けてきました。

“人間力”とは、“「あなたじゃなきゃだめ」と言われるほどの絶対的信頼性”と定義付けられ、今回の診断は、そのような信頼を得られるだけの行動ができているかを確認するためのものでした。

「基本行動」「価値観」「人間関係」「家庭生活」「指導性」「社会貢献」「健康」の7つの観点から合計35の評価項目からなり、項目ごとに5段階で自己評価をします。

5段階評価については通常、「非常に良い」「よい」「ふつう」「悪い」「非常に悪い」などといった表現をされることが多いのですが、今回の診断では、項目ごとにより具体的な表現がされていました。

たとえば“挨拶”という評価項目では、

・明るい大きな声での挨拶は自分のトレードマークになっていて、誰からも認められている。

・いつでも相手の顔を見て、大きく明るい挨拶を交わしている。

・人並みの挨拶はしている。

・自分はちゃんとやっているのだけど、相手に気付かれないことがある。

・挨拶が苦手で、できないこともある。

といった感じです。特徴的なのは、最上位の評価に対して、必ず“結果”ないしは“他者評価”が伴っているという点です。

今回の診断を受けて、大きく2つのことを感じました。

ひとつは「意識はしていても、徹底できていないことが多い」ということです。たとえば、先の“挨拶”では、もし通常の5段階評価の仕方であれば、私は躊躇なく「非常に良い」を付けたと思います。ところが、「誰からも認められている」かと問われたとき、「誰に対しても同じように挨拶できていただろうか?」との疑念が首をもたげたのです。残念ながら自信をもって「Yes」と言えない自分がいました。結局は徹底できていなかったということなのです。

もうひとつは「ぜひ他の人に評価してもらいたい」ということです。自分はできているつもりであっても、周りがそれを認めてくれていなければ、できていないのと同じです。特に今回の診断では、“他者評価”を伴っていますから、ぜひその評価を知りたいと思いました。今日早速、仲間にお願いをしてみようと思います。

いずれにしろ、今回の診断を通じて改めて実践事項を洗い出し、徹底していきたいと思います。皆さんも「意識はしていても、徹底できていないこと」の棚卸を行い、改めて実践の決意を誓ってみてはいかがでしょうか?


No.387 CSV

1000nen

2017/10/23 09:00:00

皆さんは、『CSV』という経営用語をご存知ですか?恥ずかしながら私は、先日初めて耳にしました。

『CSV』とは Creating Shared Value の略で、「共有価値の創造」と訳され、企業が生み出した価値を企業と社会で共有し合うことを目的とし、企業が本業として社会的価値に取り組むことを目指すことを意味するそうです。

私はこれまで、企業は『社会の公器』であると位置づけ、「わが社は何を以てこの社会に貢献しようとするのか?」(以下、社会性の責任)を明確にする必要があると述べてきました。その点において、CSV発想に近いものがあると思いますが、アプローチ方法が異なっていました。

私は社会性の責任を果たすために、まずトップ自身の「好きなこと」「得意なこと」「できること」にスポットライトを当て、その長所と、これまでの人生の中で幸せを感じたことからアプローチする手法を用いてきました。

その点についてはCSVを学んだ後もブレはないのですが、実際には「よくわからない」と言われるケースもあったことは事実です。自分自身の内面を見詰める(内観する)ことは、確かに難しいものです。

一方CSVでは、次のようなアプローチをするのだそうです。

1.解決すべき社会的課題をターゲットにする。

  →生み出すのはどんな社会的価値か?

2.当社が取り組まなければならない理由を明確にする。

  →事業や会社のDNAとの必然性はあるか?

3.パートナーを決めて連携する。

  →取引先や関係機関との相乗効果はあるか?

4.市民に知ってもらい、支援してもらう工夫をする。

  →オピニオンリーダーが生まれるか?

5.売上・利益につながる仕組みを創造する。

  →それは結果的に経営力強化に貢献するか?

最大の違いは、まず解決すべき社会的課題からアプローチする点です。人は外のことはよく見えるものです。内観によるアプローチが難しい場合は、外部環境からアプローチすることは、確かに有効であると感じました。

またこれまでの私の発想には、『市民』という観点はありませんでした。これは実に目から鱗の視点でした。『社会性の責任』を果たすために、内外両面からアプローチする手法と合わせ、今後のコンサルティングに取り入れていきたいと思います。


No.388 場

1000nen

2017/10/30 09:00:00

先日、一般社団法人 日本チームビルディング協会の方とお会いする機会を得ました。

日本チームビルディング協会 -JTBA-

定例講座開催情報 成果の上がらない組織、メンタルヘルス、離職などの問題にお悩みの皆様に向けた説明会を開催してい

当協会では、チームビルディングを「人材が成長し、高い組織力を発揮するための手法と取り組み」と定義付け、さまざまな取り組みをされているとのこと。そしてそのゴールを、お聴きした話に基づいて、私なりに解釈すると、次のようにまとめられます。

「組織構成員が目的・目標を共有し、それぞれの役割を果たしつつ、かつそれぞれの役割を補完し合って、個々の力の積み上げ以上の成果を上げることができる組織」

この点については、私どもも“理想の組織”として常々お話ししてきている内容とあまり変わりはなかったのですが、アプローチの仕方が少し違っているように感じました。

私どもでは、そのような組織づくりをしていく際、どちらかというとリーダーの役割に重きを置いています。一方、当協会では、「組織構成員一人ひとりのチーム意識の醸成」を前提とした、ボトムアップ式のアプローチに重きが置かれているようでした。

その中でも一番印象に残ったのは、何でも言い合える“安全な場”が何より必要であり、そのような場とは、「柔らかい雪を敷き詰めたゆりかごの中で、雪の玉を転がす」ような場との説明でした。そして雪の玉は、ゆりかごが揺れるたびに大きくなってくのだと・・・。

一方でそうでない場とは、「針のむしろを敷いたゆりかごの中で、雪の玉を転がす」ような場なのだとか。転がるたびに雪の玉は削られ、そしてなくなってしまう。その針とは、批判、非難、否定、罵倒などなど・・・。

今回の話の中では、「チームを変えたいと思う一人ひとりがリーダー」として、組織構成員個々人の意識改革の必要性に重きが置かれていますが、やはり我々経営者・経営陣は、自分たちの役割の重要さを再認識する必要があると思います。

私自身、この話を聴いた際、「自分は“安全な場”を提供できているだろうか?」と、改めて自省してみました。そして、より一層“安全な場”を作っていかなければならないと、強く思いました。

この紙面では、あまり多くのことをお伝えできませんが、今回もまた、多くの学びと気づきをいただくことができました。そして本当に“生涯勉強”なのだと、改めて感じました。


No.389 時間予算

1000nen

2017/11/06 09:00:00

先週は、何かにつけて『時間予算』のお話しをする機会が多くありました。人に唯一平等に与えられた『時間』という財産をどのように使うか?まさに人生の善し悪しを決定付けるともいえることですが、意外に『予算』という概念を持たずに時間を使っている人が多いようです。

そもそも時間の使い方は、概ね次のように区分されます。

A.今、成果を生んでいる時間

B.将来の成果の種となる時間   

C.自分を成長させるための時間               

D.過去の成果を処理する時間   

E.何の成果も生まない時間       

特に大事なのは、「B」と「C」の時間です。この2つを合わせて『未来投資時間』といいます。そして、この時間の使い方の“質”と“量”が大切なのです。

ところが、多くの人がこの時間を十分に使えていません。「A」の時間に拘束されて、「やろうと思っていたけど、できなかった」となることが実に多いものなのです。これは「今日の飯には困らないが、明日はどうなるかわからない」状態といえます。決してよい時間の使い方とはいえません。

では、どうしたらよいのでしょうか?貯金が溜まる人とそうでない人の違いをみれば、その改善の方向性がみえてきます。貯金が溜まる人は、たとえば「手取りの10%を必ず貯金して、残ったお金で生活する」という人です。「お金が余ったら貯金する」という人は、いつまでたっても溜まらない・・・

時間の使い方も同じで、たとえば月200時間働いている人であれば、できればその20%の40時間、少なくとも10%の20時間を『未来投資時間』として、きっちり『予算』を組んで使い切る、という姿勢が必要です。まずは“質”は問わず、何でもいいから『予算』をこなすことが大切です。『予算』を使う習慣がついてくれば、今度はその時間を「有効に使いたい」という気持ちが生じるものです。“量”が満たされれば、“質”はいずれついてくるものなのです。

今、『働き方改革』が叫ばれていますが、裏を返せば「働けなくなる改革」といえます。労働時間が制約され、自由に時間を使うことができなくなる時代がやってくるのです。その意味において、時間の使い方がますます重要になってきます。

皆さんには、『未来投資時間予算』をきっちり組んで、素晴らしい未来を構築していっていただきたいと思います。


No.390 伴走

1000nen

2017/11/13 18:05:51

先日、中堅・中小企業を対象としたコンサルティング会社の成果発表会に、コメンテーターとして参加してきました。4組の発表を拝聴したのですが、どの発表も素晴らしく甲乙付け難いもので、コンサルティングの現場から遠ざかっている私のコンサル魂に火を灯されました。

今回はすべて業績不振企業の再生コンサルティングがテーマだったのですが、どの発表においても、お客様に寄り添い、「どんなことがあっても助ける!」という熱い意思と意欲に満ち溢れていた点に、感動さえ覚えました。

企業再生はただでさえ大変なコンサルティングである上に、今回の事例は「人の話を聴かないワンマン社長」「資金繰りのことなど頭にない技術屋社長」「極めて仲の悪い家族経営」といった、正直私でも敬遠したくなるような、一癖も二癖もあるような先ばかり。「そんなんだから経営が悪化するんだ」と見放してしまっても、誰も文句は言わなかったのではないかとさえ思われました。

しかしそんな先に対しても、「どうやったらわかってもらえるか?」「何かほかに方法はないか?」と、まさに不屈の精神で寄り添い、実際に改善の成果を上がられていたのです。今回の発表会はとても楽しみにはしていたのですが、ここまでの話が聴けるとは思わず、とても有意義な時間を過ごさせていただきました。

社員に対して私は、「愛されるコンサルタントにはなるな」と言っています。愛されようとすると、知識を身に付けたり、情報を仕入れたり、誰も考えたことがないような提案や企画を考えたりと、「相手のため」というより、自分がよく見られようとするための時間を多く取ろうとしてしまいます。もちろん知識や情報を仕入れたり、提案や企画を考えることは大切です。しかしその目的がより大切なのです。「自分がよくみられたい」という欲求からでは、本物は生まれない・・・

だから私は、「お客様を愛することができるコンサルタントになりなさい」と伝えています。愛することができれば、心から「相手のことをわかりたい」「お役に立ちたい」「成果を出してあげたい」と思えてくるものです。

その意味において、今回発表された4組の方たちは、まさに「お客様を愛することができる」人たちだったのだろうと思います。

翻って、この視点は、何もコンサルタントだけに当てはまるものではありません。どの業種であっても必要な視点ですし、その対象もお客様に限ったものではありません。

「〇〇を愛することができる□□」

あなたにとって、この空欄を埋める“相手”と“立場”を明確にし、その人にしっかりと寄り添い、伴走しながら、具体的な成果を実現していく。そういう視点をお持ちいただくことも大切ではないかと思います。


No.391 後悔

1000nen

2017/11/20 09:00:00

毎年1回お伺いする料理屋さんがあります。今年で12年目になります。先週の金曜日に行ってきたのですが、悲しいお知らせをお聴きする場となってしまいました。ご主人が亡くなられていたのです。

ご主人は舞台俳優さんでもあり、杉良太郎さんや坂東玉三郎さんとも懇意で、年に数回、舞台に立たれていました。舞台俳優さんであるためか、声も大きく、笑いも豪快な方で、女将さんとの「そんなに大きな声を出さなくても聴こえてますよ」との掛け合いが、今でも耳に残っています。

そのご主人が病に倒れられたのは3年前。そのとき薄っすらと感じた後悔の思いが、今回確定してしまいました。

私がまだ福岡にいた3年前の春、「夏に熊本でやるから、来てよ」とご主人から舞台のお誘いを受けました。もう何年ものお付き合いになるのに、誘われたのは初めてでした。しかし、思い出せないほど大したことのなかったであろう用事を理由に、結局足を運ぶことはありませんでした。ご主人が倒れられたのはその年の秋で、結局その舞台が、最後の晴れ姿となってしまわれました。

お見舞いをとお願いしたのですが、「こんな恥ずかしい姿は見せられない。元気になって戻るから、待っててもらうように」とのことで、結局観劇のお誘いを受けたその日が、最後の日となってしまいました。

「何があっても、行っておけばよかった・・・」

「後悔先に立たず」といいますが、まさしくそれを痛感する出来事でした。

後悔には「やっちゃった」後悔と、「やっておけばよかった」後悔があると思います。前者はどちらかというと偶発的なケースが多く、おっちょこちょいな私としては、減らすことはできても、完全になくすことはできないだろうと思います。しかし後者は、意思決定の機会と時間があることが多いものです。要するに、ちゃんと深く考えて行えば、このような後悔はしなくても済む、ということです。

もちろん「やっちゃった」原因を明確にし、減らす努力もしていきますが、今回の出来事を受け、「やっておけばよかった」後悔だけはしないよう、確固たる意思に基づく行動を心掛けていきたいと思います。


No.392 覚悟

1000nen

2017/11/27 09:00:00

以前から何度かお伝えしている、4回シリーズの家系分析の研修の最終講に参加してきました。

私自身、たくさんの気付きと学びをいただきましたが、それ以上に、参加された同期生の皆さんの発表に、「まだまだ頑張らなくてはいけない」という、勇気と励ましをいただきました。

その中でも、20代後半で原因不明の半身不随になった方のお話しは、私のこれからの人生において、何らかの苦難に遭遇した時の叱咤激励の言葉となると思える内容でした。

具体的な内容は割愛しますが、その方がおっしゃった言葉がとても印象的でした。それは

「ないものを探そうとするから暗くなる、悲しくなる、死にたくなる。でも、私は話ができない訳ではない。耳が聞こえない訳ではない。目が見えない訳でもない。手が動かせない訳でもない。ましてや、考えることができない訳でもない。できることを探せば、こんなにたくさんある。ああ、なんてありがたいのだろう。そのことに気付いたら、病気は自然に快方に向かいました。病を作っていたのは私の心でした。」

4日間すごく大人しく、ずっと陰に隠れているような印象であったその方の、「拾った命を世の中のために捧げたい」と語る言葉の奥に秘められた覚悟に、感動を覚えざるを得ませんでした。

一方私は、4日間の研修を通じて、「やはり私の人生のテーマは“事業承継”しかない」と確信を得ることができました。

たまたま前日、ご自身も親族から経営を引き継がれた50歳以上の後継社長を対象にした会合で、次代への事業承継をテーマとしたお話をさせていただきました。その後の懇親会で、久しぶりに千年経営研究会メンバー以外の後継者の方々とお話しする機会を得ることができたのですが、「まだまだお伝えしていかなければならないことがある」と感じていましたので、なおさらでした。

改めて、事業承継に関わる活動、特に千年経営研究会活動に力を入れていきたいと思います。


No.393 変革

1000nen

2017/12/11 09:00:00

先週、私の新入社員時代からお付き合いのある会社の、第45期方針発表会に参加させていただきました。その際、「50周年に向けたヒントになるような話をして欲しい」との依頼をいただき、少しお話をさせていただいたので、少しお裾分けさせていただきます。

まずは、「企業50年の軌跡」についてお話ししました、企業の50年を端的に振り返ると、概ね次のような段階とテーマがあります。

〇創業期(~ 5年):とにかく生き残る!

〇成長期(~10年):専業でトコトン儲け、次の事業展開資金を蓄積する

〇発展期(~20年):第2・第3の柱を創る

〇成熟期(~30年):後回しにされた課題を整理し、安定を求める

〇第2創業期(~50年):事業領域の抜本的見直しを図る

企業が生き残るのは、5年で10%と言われます。それだけ創業期を耐え忍ぶことは難しいことです。新しい事業を始める際にも同様ですが、3年で単年度黒字、5年で累積損失解消を実現することが何より大切になります。

幸いにして生き残ることができれば、企業は成長期に入ります。ただこの時期に、複数の事業に取り組むのは得策ではありません。経営資源の最も乏しい中で手を広げ過ぎれば力の分散となり、非効率な経営を余儀なくされることになります。ここはじっと我慢して、次の展開に十分な資金が投入できるまで、専業特化することが大切です。そうすれば、充実した発展期を迎えることができるでしょう。

成熟期においては、成長・発展のアクセルを少し緩めてでも、積み残された課題を解決し、安定かつ充実した会社つくりに励むことになります。この取り組みがないまま走り続ければ、それは成長ではなく膨張といえるものになってしまうでしょう。

さて、この成熟期を無事に過ごされた後が大切です。多くの企業で見受けられる悪しき状態は、安定の安堵の中で、変革の意思と意欲を失ってしまうことです。このころになると、若くして創業された方であっても、還暦が近くなってきています。特に、会社経営に専念するあまり、後継者選定や育成を疎かにされてきた経営者ほど、陥り易い過ちです。

そうなれば本来「第2の創業」をしなければならないにもかかわらず、「現状維持」に埋没し、いつの間にか衰退企業の仲間入りをしてしまうことになります。そんな魅力のない企業の後継者になる殊勝な人は少ないでしょうし、「後継者がいないからM&Aでも」と思っても、買い手がつくのは難しいでしょう。

そうならないためにも、“安定”の次には必ず“変革”が必要なのです。その時期に後継者が頭角を現してくる年齢になるのも、必然です。

いずれにしろ経営は、“安定”と“変革”を振り子のように繰り返しながら成長・発展していくものです。これを機に、今はどちらに注力すべきか、振り替えられては如何でしょうか。

「事業領域の抜本的見直し」については、来週お話し致します。


No.394 事業

1000nen

2017/12/18 09:00:00

「企業50年の軌跡」の続きとして、“第二創業期”に行うべき『事業領域の抜本的見直し』についてお話しします。

前回お伝えしたように、創業以降、とにかく「成長・発展のためなら何でもやる」という姿勢で突っ走ってきた企業(創業者)も、20年くらい経ってきますと、目をつむってきたいろいろな問題が積み上がり、放置できない状態になってきます。そこで、いったん成長を止めてでも、それらの問題に対して、腰を据えて解決しようという気持ちが芽生えてきます。

このころになれば、創業者も落ち着きが出てくる年齢になってくることも、その要因の一つかもしれません。一方で、その年齢が少々問題になることがあります。過去の問題解決に注力するあまり、未来に向けた“変革意欲”が減退してくる可能性を秘めているのです。この点が前回のメインテーマであり、またこの時期に「後継者が頭角を現してくる年齢になるのも必然」という話に繋がるものです。

ここに新たな問題が生じます。過去を守ろうとする先代と、新たな時代を切り開こうとする後継者との確執です。だからこそ、この時期に『事業領域の抜本的見直し』が求められることになります。

「SONY」という会社があります。前身は「東京通信工業」といいます。即ち、通信機器のメーカーだったわけです。それが「SONY」に社名変更しました。「SONY」とは、“音”を意味する「Sonic」と息子を意味する「Sonny」を足したもの、要するにその意味は、「音楽坊や」というところでしょうか。そしてそのときから「SONY」は、通信機器製造業から「音と映像を記録する業」へと脱皮していくことになります。

「SONY」は、一般的産業分類では「家庭電化製品製造業」となりますが、洗濯機や冷蔵庫などの白物家電は作りません。なぜならば「音と映像を記録する業」だからです。一方で、映画会社を買収したり、テレビゲーム制作会社を作ったりします。なぜならば「音と映像を記録する業」だからです。

このように“事業領域”とは、「誰に」「何を」「どんな方法で」提供するかを明らかにするものであり、自社が生存していく領域を明らかにしたものでもあります。

先代と後継者、多くの場合「やりたいこと」「できること」「好きなこと」が異なるものです。また生きてきた時代背景の違いから、大事に思うものも違っていて当然でしょう。これをいがみ合いの種としてしまうか、自社の“第二の創業”の礎にするか、企業経営における大きな分岐点といってよいでしょう。

「Aでなければいけない」「これからはBの時代だ」などと、不毛な論争は厳に戒め、これを機会に、AとBを包含する、新たなより魅力的な“事業領域”を見出すよい機会にしていただければと思います。


No.395 指摘

1000nen

2017/12/25 09:00:00

先日、ある会計事務所に5年ぶりに伺う機会がありました。その面談は、先生からの「いやぁ~、亀井さんの言うことをちゃんと聞いておけばよかったぁ~」の一言から始まりました。

5年前、既に私たちのシステムのユーザーであったその先生に、私からある提案をしていました。その事務所が抱える課題を解決できるという思いがあり、結構しつこく提案していたことを覚えています。しかし先生は、頑として受け入れてくださいませんでした。「名南さんは大きいから簡単にできるかもしれないけど、うちのような零細ではなかなか思うようにはいかないんですよ」が、実施されない理由でした。

ところが、その先生が半年前にある事務所へ見学に行かれてから、事態は大きく変わっていくことになります。その事務所は、先生同士が仲良く、事務所の規模もほぼ同じで、雰囲気もよく似ている事務所で、1年前にその先生の紹介で当社システムを導入してくださいました。そして導入と同時に、先の事務所で提案させていただいていた取り組みを実施され始めていたのです。

それからわずか半年、「うちのような規模ではできない」と言われていたことを実に見事に実現された仲間を見て、5年前の私の提案を聴いておけばよかったとの反省(後悔?)に繋がったのです。

人には“我”というものがあります。この“我”が、自己の成長や革新を阻害するものです。ときには人間関係も悪化あせることさえあります。一方で、この“我”を取り除くことは実に難しい。神社の御神体である「かがみ」は、それにわが身を映し、真ん中の“が”を取れば、「かみ」になれる、との言い伝えもありますが、自らこれを取り除くことは、至難の業と言っても過言ではないでしょう。

そこで必要となるのが、人からの指摘やアドバイスです。仮にその時点では理解できなくとも、いつか「そういえば、あの時そういわれたことがある」と振り返ることができるものです(もちろん、その指摘やアドバイスによって自己変革できれば最高ですが)。人からの指摘やアドバイスというものは、それほど的確なものだということでしょう。

このところ、私の指摘や指導が甘くなってきたとの指摘を受けることが増えてきました。ある意味、自覚症状があることですので、甘んじて受けてきましたが、今回の出来事を通じて、やはり「言うべきは言う」という姿勢が大切であると気付かされました。そこには5年前、「もう少し、強く推しておけばよかった」という思いが、少なからずあったからです。

疎まれようが、嫌われようが、言うべきは言う。

この姿勢を、改めて肝に銘じていきたいと思います。


No.396 干支

1000nen

2018/01/09 09:00:00

みなさん、新年明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。

さて本日は、毎年恒例の干支の解説をさせていただきます。今年の干支は「戊戌(つちのえ・いぬ)」です。

安岡正篤氏の『干支の活学』では、下記のように説明されています。

【戊】

茂に同じ。陰陽繁雑する意。(中略)樹木が茂ると、風通しや日当たりが悪くなって、虫がついたり、梢枯れしたり、根上がりしたりして、樹がいたむ、悪くすると枯れる。そこで思いきって剪定をしなければならぬ、というのが戊の意味であります。

【戌】

戌の戊は茂に同じく、一は陽気を意味し、草木茂る中に陽気を蔵するもので、また裁成の意がある。(中略)思い切ってこれを刈り込んで、剪定をして、風通し・日当たりをよくし、根固めをするわけです。そうして初めて木が生きる。これはまだ木にそれだけの生気が残っておるからで、中の「一」はその陽気を表している。それを生かしてゆけばまだまだ続くということです。

要するに、“戊”も“戌”も“茂”に通じていて、善いものも悪いものも茂ってくるため、まずは“悪”を思い切って剪定することが何よりも大切な年となりそうです。そうすれば“善”だけが残り、更に“善”が茂っていくことになるでしょう。

更に“戌”の中の“一”は陽気を表しているとのことは、既に“陽”なるものが宿っているということですから、これを見つけ、活かしていくことが大切だということでしょう。

いずれにしろ、自分自身の目の前に現れるさまざまな諸現象に対し、陰陽を見極め、陰は剪定、陽を活かす。そういう姿勢で経営に臨むことが肝要なようです。

今年だけに限ったことではないとも思えますが、特に今年は意識して日々を過ごしていきたいと思います。


No.397 新規事業

1000nen

2018/01/15 09:00:00

当社では先週から、全社員を対象とした「新規事業アイディア募集」が始まりました。

もちろん、日常的に新規事業の検討は行っていますが、既存部門による既存事業の延長線上で検討されることが多いものです。また、既存部門による検討は実現可能性が重視される傾向にあり、「思いもよらなかった事業」というものは出難いものでもあります。

一方、新規事業のアイディアを社員さんに考えてもらうことは、「事業家意識」を高めるために、有効な手段でもあります。

いつもお伝えしている通り、事業とは「誰に」「何を」「どんな方法で」提供するのかを明確にしたものです。「新規事業を考える」ということは

・既存のお客様ではない方々に商品やサービスを提供する

・これまで扱ってこなかった商品やサービスを提供する

・これまでとは違った方法で商品やサービスを提供する

ことを考えることです。この検討は、大きく2つの効用をもたらします。

人は一つの仕事を与えられると、その仕事の質を高めようと努力をします。「今のお客様にもっとご満足をいただくためにはどうしたらよいだろうか?」「今の商品をもっといいものにするためにはどうしたらよいだろうか?」「もっと効果的・効率的なお届けの仕方ができないだろうか?」と考えて仕事をしてくれます。これはとても素晴らしいことです。

ところが、これが行き過ぎると、“自己満足”“外部否定”に繋がりかねません。ともすると“引き籠り”状態に陥ってしまうことすらあるのです。常に新規事業を考える習慣がつくと、この2つの弊害を排除することができます。

新規事業検討の前提は、「今のお客様に、今の商品・サービスを、今の方法で売っていて、本当に将来が保証されるのだろうか?」という疑問から生じます。まずはその疑問を持ってもらうことそのもの、すなわち“現状安住”の精神に警笛を鳴らすことに価値があります。

そして新規事業の検討を通じて、“外を見る目”を作ることができます。新規事業を検討しようと思えば、これまで以上に外部の情報をどん欲に求めなければなりません。自社を取り巻く環境がどのように変化していくのかに興味・関心を持たざるを得なくなるのです。この意識こそが“事業家意識”の第一段階と言ってよいものです。この“事業家意識”の高い社員の育成は、まさに『一枚岩の経営』の実現に大きな力となるものなのです。

社員さん一人ひとりが、常に新規事業を考える習慣を持っている、そういう会社にするためにどうしたらよいのか、常に考えていきたいものです。


No.398 聴く力

1000nen

2018/01/22 08:21:18

先週から、平成31(2019)年3月度卒業生を対象とした、当社最後のインターンシップが始まりました。私が担当するのは、東京・大阪・福岡の3会場で、「コンサルタントとはどのような仕事か?」を解説した後、事例企業に対するコンサルティングの疑似体験をするという内容です。

インターンシップは私が採用担当者となってから実施していますので、既に10年以上取り組んでいますが、残念ながら、年々参加者が減少しているのが実情です。以前は各会場20名以上の参加があり、事例研究の中で行われるグループディスカッションは、非常に活気に満ちたものでした。

参加してくれた学生によると、原因は「インターンシップの実施企業が増えてきているからではないか」とのこと。確かに募集期間が短くなった結果、学生との接触頻度が下がる中で、できる限り接点を増やしたいという企業が増えていることは、想像に難くありません。それもあってか、「実際は会社説明会であったり、選考の場になっている企業もある」とのことで、学生にとってもその見極めは、とても重要になってきているのだとか。

さて、毎年同じ内容で行っていることもあって、参加学生の変化を感じやすい状況にありますが、ここ数年の学生には、次のような特徴があるように感じます。

まず良い点としては、とてもまじめで素直であるということ。とにかく話をよく聴きますし、メモをよく取ります。また、プレゼンテーション能力もとても高い。自己表現が上手になってきたことを感じます。

一方で、残念ながら“聴く力”が落ちてきているように感じます。私がクライアント企業の社長になって質問を受ける場があるのですが、「もう少し突っ込んで聴いて!」と感じることが多くなってきています。表面的な内容に満足し、そこから課題構築・改善提案を導き出して、「後はどうプレゼンテーションをうまくやるか」に重きが置かれているように感じます。

ここでいう“聴く力”とは、「相手のことを知りたい、知り尽くしたい」という思いの量によるものであると感じています。発信力は高まっているのですが、受信力は下がっているように思います。これもSNS時代の特徴といえるのかもしれません。

いずれにしろ、このような長所・短所をきちんと理解し、受け容れて、その上で活かすことは活かし、育てるところは育てる、そういう姿勢が必要です。

改めて“対人感受性”“聴く力”というテーマを意識した社員教育をしていきたいと感じているところです。


No.399 後継

1000nen

2018/01/29 09:00:00

先日、石坂産業 株式会社の石坂典子社長の講演をお聴きしてきました。

会社のホームページはこちら → https://ishizaka-group.co.jp/

石坂産業は埼玉の産業廃棄物中間業者で、壮絶な歴史をお持ちの会社です。みなさんはテレビ朝日の誤報に端を発するダイオキシン騒動を覚えていらっしゃるでしょうか。その騒動の中、何の根拠もなく、ただ地域で一番大きな産廃処理業者であるという理由だけで、その犯人捜しのターゲットにされたのが石坂産業だったのだそうです。

存続そのものが危ぶまれる状況で、創業者であるお父様の「会社を続けたい」「子供に継いでもらえる会社にしたい」との本音を聴かれた、当時事務職として入社されていた典子社長が、「私に社長をやらせて」と懇願。当初は「女にはできない」と言われたそうですが、最後には「試しにやらせてやる」と許可が下り、仮免許の社長職(代表権なし)に就かれたとのこと。

その後の社長のご活躍は、ぜひホームページでご確認ください。

私が今回の講演で心に響いたことは、次の内容です。

〇会社は興すより、続けることが難しい。

〇後継者がやりやすい会社を創るのが、社長の役割。

〇地域・社会から受け入れられなければ、会社は存続することができない。

〇会社は、目に見えないブランドがなければ生き残れない。

〇改革するのは社長の仕事。改善するのは社員の仕事。社員が自ら考えて改善を進められるような場と機会を与える。

特に「後継者がやりやすい会社を創るのが、社長の役割」という点について、改めて我々千年経営研究会のメンバーが意識しなければならないことだと感じました。ここでいう「やりやすい」というのは、もちろん「楽してできる」ということではありません。それこそ、

〇地域・社会から認められ、受け容れられ、尊敬される会社

〇社員がイキイキ・ワクワク・ドキドキ働き、自ら改善していくことを喜びとする会社

にすることを意味しています。現社長はもちろん、後継者や経営幹部の皆さんも、このような視点に立って経営していくことが大切です。

年間3万人が来場される会社見学を受け入れられているようです。ぜひ皆さんと一緒に見学に行きたいと思います。


No.400 カルテ

1000nen

2018/02/05 09:00:00

今当社で税理士事務所様の生産性向上のお手伝いをさせていただいていることは、これまでも何度かお話しさせていただいていると思います。今日はその中でも、『顧客カルテ』に関する取り組みをご紹介させていただこうと思います。

労働集約型の事業における生産性向上のためには、『顧客カルテ』の整備は欠かせません。お客様に関わる必要な情報を、必要な人が、必要な時に、必要に応じて入手できなければ、そこにどれほど無駄な時間を要するかは、想像に難くないと思います。

しかし、意外に『顧客カルテ』が整っていない企業や事務所が多いようです。具体的には、次のような状態になってしまっていることが見受けられます。

□必要な情報ではなく、ある情報の羅列になってしまっている。

□登録項目が全社で統一されておらず、各社ばらばらな内容になっている。

□担当者の手元にしか情報がない。

□更新がされず、古い情報がそのままになってしまっている。

□同じような内容ばかりで、各社の特性が明確でない。

これではとても、必要な情報が、必要な時に、必要に応じて入手できるとはいえません。みなさんの会社も、このような状態に陥ってはいませんか?

さらに問題なのは、その状況に問題意識を感じていない人が多いことです。その最大の理由は、顧客情報が、担当者の個人的財産、ないしは特権のようになってしまっていることにあるように思います。それは組織にとっては大きな損害といえると思います。

そこで、少なくとも次の取り組みをすることをお勧めします。

□どのタイミグで、どのような情報が必要になるかを明確にする。

□その上で、知っておいた方がよいお客様情報には何があるかを明らかにする。

□その情報を、必要な人が、必要な時に見ることができる保管場所を明確にする。

□閲覧・追加・更新のルール(誰が、どのタイミングで、どういう方法で)を明確にする。

□情報の追加・更新をする者を評価する仕組みを作る。

これらの整備は、一日早く実施すれば、一日早く成果を感じることができるようになるものです。実際に、今取り組んでいる事務所では、業績向上に直結する、具体的な成果を上げつつあります。みなさんもぜひ取り組んでみて下さい。