No.795 価値

今、3年後の事業承継を目指して、懸念事項の洗い出しとその解決に向けた計画立案のお手伝いをしている会社があります。

社長はChatGPTをかなり使いこなし、「チャッピー」(ChatGPTの愛称)とのやり取りによってご自身の考えをまとめられ、「私は本当に必要なのか?」と思えるほど活用されています。

また、3時間ほどの打合せの内容も、AIの議事録作成機能によってほんの10分程度でかなり高い精度で作成されます。「質問を受けてそれに答え、報告書にまとめて提供する」といったスタイルのコンサルタントが淘汰されていく未来を見させていただいています。

そんな社長がなぜ私を求めるのか。そこにはいくつかの理由があると思います。

第一に、AIは平気で嘘をつきます。例えば、AIが断言した内容について、「根拠・出典を示せ」と指示すると、「明確な根拠はありません」と返ってくることがあります。要するに、「今はまだ」全幅の信頼を寄せることができないということです。

第二に、質問に答えることはできても、質問することはできません。もちろん「この目的に対して検討すべき疑問点を列挙せよ」と指示を出せば、それなりの回答を返してきます。しかし、あくまでも目的が明確であることが前提です。「今はまだ」目的そのものを明確にすることは難しいのです。

そもそも自分でも気づいていないことはやり取りのしようがありません。その点において、コンサルタントの経験知・暗黙知がある方が安心できるのです。

最後に、人を見ての判断ができない点です。人には「自分が知っている自分」と「周りが知っている自分」との間にギャップがあるものです。そして、「周りが知っている自分」の方がその人の本質を突いている場合があります。しかし、「今はまだ」AIに人となりを的確に見抜く機能はありません。

特に事業承継の場合、後継者が譲る者の本質を見抜いていても、その自覚がない相手にはっきりと言えないケースは多いものです。それをきちんとお伝えする。これができなければ、コンサルタント不要論はさらに勢いを増すことになるでしょう。

いずれにしろ、AIを徹底的に活用されるこの社長との出会いによって、コンサルタントの“本質的価値”を見出させていただいたように思います。

しかし、「今はまだ」できないことも、いずれできるようになってくるでしょう。その時にはまた、私どもに求められる本質的価値は変わってきます。

今売れている商品、求められるサービスは、お客様が望む本質的価値を内在しているからに他なりません。そしてその価値は、時代と共に変化していくのです。

自社が取り扱っている商品・サービスの、今の時代における“本質的価値”、皆さんも一度見直してみられてはいかがでしょうか。