No.791 調整
先日、ある会社の創業者と後継者であるご子息との三者面談をしてきました。
社長は一代で100億円を超える規模の会社に育てられた方で、話をすればするほど、創業者の凄さを感じざるを得ない方でした。
社長のお話はまず、幹部社員に対する不満からスタートしました。息子に継がせる時期が近づいていることを意識せざるを得なくなってきた昨今、幹部社員の受け身の姿勢が目に付いてきたとのこと。「各自が責任をもって部門経営をしていってもらわないといけないのにうちの幹部は・・・」とお話になるたびに語気が強くなっていく。その姿に私は、ご子息に対する深い愛情を感じていました。
しかし、そのような幹部が育つのは、強烈なワンマンシップで引っ張ってきたからであり、短期間での規模拡大の代償といっても過言ではないと思います。黙って指示を全うしてくれたからこそ今がある。幹部からすれば、「今更自分たちで考えろと言われても」というのが本音ではないかと思います。
そこで私は、「ご子息のためを思うなら」という前提で、次のようなお話をさせていただきました。
「もちろん、自責で成果を挙げられる幹部の育成は重要です。しかし、これまで社長の指示を100%実現することを使命としてきた彼らにとって、どうやったら成果を挙げられるかを自ら考える訓練がされていません。」
「よってまず、社長の思考パターンを明確にすることから始めてはいかがでしょうか。社長が常日頃考えられている成果実現のプロセスの見える化をするのです。話を伺っていると、ご子息もそれを望んでいらっしゃると思います。」
「そしてそのプロセスに従ってご子息が幹部と一緒に考え、実行に移していく。社長はワンマンシップによって社員さんを引っ張って来られた。しかしご子息には今、そのカリスマ性はない。社長と同じ手法では、反発されることは目に見えている。しかし、後継者が一緒に考えてくれるとすれば、そこに信頼という報酬も付いてくる。まさにWIN-WINと取り組みだと思いますよ。」
話を聴き終えた社長は、少々不満気でした。私が幹部社員を厳しく指導してくれるという期待が裏切られた、という感じだったのだと思います。
しかし、後継者の目には希望の光が見て取れました。「父と同じにはできない」と思い悩んでいたところに、具体的な方法を伴って自分のなすべきことが見えた安堵と、その後に待っている幹部社員との良好な関係を想像することができたからでしょう。
最後には、「社長、亀井さんの言う通りやってみましょう。私が責任を持ちますから」と力強く宣言していただくに至りました。
後継者には、言いたくても言えないことがある。また伝えたくても伝える言葉が見つからないことがある。そんなときにそれぞれの思いを言語化し、調整し、互いの理想を統一させていく、そんな存在の必要性を感じさせていただけた面談でした。
まずは私自身の使命を全うしていきたいと思います。そして、千年経営研究会が、そんな場になっていくことを期待しています。

