No.786 承継
先日、とても嬉しいことがありました。
以前、日本実業出版社発行の月刊誌「ニュートップリーダー」で連載していた『事業承継の王道』の第3回にて登場いただいた創業社長の娘さんとそのご子息が訪ねてきてくれたのです。
2010年のものですから、今から15年前のこと、当時70歳だった創業社長Aさんからの相談に基づく原稿の内容は、おおむね以下のようなものでした。
・後継者として育ててきた生え抜き社員のBさんが辞めてしまった。
・実は長男がいて、7年前までは会社にいた。しかし、ワンマン創業者と性格のよく似た長男は事あるごとに社長とぶつかり、7年間の苦闘の末、「この関係は変わらない。5歳と違わないBさんに継がせると言っている以上、社長になれる保証はない」と悲観して辞めてしまっていた。Bさんを後継者と決めていたAさんは、引き止めなかった。
・私からその過ちを指摘されたAさんが家族に相談したところ、「みんな長男が継ぐべきだと思っていた。わかってなかったのは自分一人だった」と知ったAさんは、「頑固な倅を呼び戻すには苦労すると思いますが、家族一丸で迎える体制をつくっていきます」と覚悟を決められた。
結局、ご長男さんは戻ることなく、当時経理をしていた娘さんが継がれました。しかし、その次が見当たらず、「最後はM&Aしかないか」と思われていたそうです。事実、Aさんが何度か当社のM&A部門に問い合わせをしていたことは聴いていました。
ところが、社長を継がれた娘さんのご長男が「僕が継ぎたい」と言い出したというのです。青天の霹靂な宣言に、当初、母親である二代目社長は、あまり乗り気ではなかったそうです。
ご子息はまだ27歳。そもそも後継者として育てられたわけでもなく、事業そのものに関わったこともない。ワンマン社長の先代が築かれた独特の社風を、若い息子が束ねることができるのか・・・その不安と疑念に、とても前向きになることができなかったと言います。
しかし、気難しい先代も孫とはうまくやっている。継ぎたいという息子の気持ちを喜んでくれてもいる。何より本人の継ぐ決心は揺らがないようだ。「覚悟を決めてやらせてみるか」
そのときに思い出していただいたのが私だったそうです。「雲の上の人」的に感じ、声を掛けることに躊躇されていたそうですが、共通の知人からの後押しがあり、「勇気をもって」連絡をいただき、とても嬉しい面談となりました。
「人間は一生のうち逢うべき人には必ず逢える。しかも一瞬早すぎず、一瞬遅すぎない時に」(森信三翁)
お二人とお話をする中で、紆余曲折はあったものの、これが正しい結論だったのだろうと確信しました。
社長も、面談の中で改めてご子息の覚悟を確認され、私に紹介できたことで安心を得ていただけたようです。
「幸福同族承継」を標榜して開業したばかりの今、親子三代に亘る事業承継のお手伝いをさせていただくことにとても幸せを感じています。期待を裏切ることなく、精一杯お手伝いをさせていただこうと思います。
千年経営研究会にも来ていただくことになりましたので、皆さんよろしくお願い致します。

