No.705 承継

去る4月26日、株式会社東京商工リサーチ(以下、TSR)より、2023年度の後継者不足に起因する「後継者難」倒産件数が公表されました。

その数は456件(前年度比10.6%増)で、2017年度(249件)を底に6年連続で前年度を上回り、当該年度は調査開始の2013年度以降で過去最多を記録したとのこと。

これは、負債1,000万円以上の「倒産」ですから、負債なしの「廃業」を含めれば、後継者難による「退場」の数は、かなりの数に上ることは想像に難くありません。

またその内訳は、代表者「死亡」が最多の217件、次いで「体調不良」が160件で、この2要因で実に82.6%を占めているとのこと。

TSRによれば、「少子高齢化が加速しているが、後進の育成や事業承継の準備が遅れた中小企業では、事業を仕切る代表者に不測の事態が起きると、事業継続に重大な障害になることを示している」とまとめています。

私自身、「中堅・中小企業の最大のリスクは“トップの突然の死”」(事業承継対策の立て方・進め方P21より)と言い続けていますが、残念ながら、それが数字で証明されてしまったようです。

興味深かったのは、「産業別」のデータ。最多が飲食業(38件)を含むサービス業他の121件、次いで建設業の106件、この2産業で約50%を占めています。TSRも指摘していますが、他産業に比べて人材不足の悩みが深いこの2産業において後継者難が顕著である点に、事業繁栄と事業承継とは、切っても切れない関係にあることがわかります。

やはり、円滑な事業承継を実現しようとすれば、まず今の経営をよりよくしていくことが何より重要であることを表しているのだと思います。

千年経営研究会では、素晴らしい事業承継を実現するために、「できるだけ早い時期から」「確かで間違いのない」承継対策の研究・検証・啓蒙をしていくことに重きを置いていますが、その前提として、今の経営が健全かつ魅力的でなければなりません。

そこで、各地域会で実施している月例会では、主として「今の経営のあるべき姿」について、会員同士が喧々諤々議論を戦わせています。

ぜひ皆さんも足を運んでいただき、今回提示したデータの意味を噛みしめつつ、よりよい経営の実現をしていってください。それが好ましい事業承継の前提となるのです。