No.682 合議

2023.11.20 Monday 09:00

先日、同族承継の可能性がない創業社長からの相談を受けました。

元々は、「自分の代で終わるつもりだった」「というより、そもそも事業承継のことなど、あまり考えてこなかった」のだそうです。しかし、社員数が40名を超え、社員全員採用から携わってきたその一人ひとりの顔を見渡した時、「無責任になくすわけにはいかない」との思いが沸々と湧いてきたのだそうです。

一方で、「自分に代わるような人材はいない」のがお悩みで、「どうすればよいか?」というご相談でした。

その場に居合わせた方が2名いらっしゃいました。営業と製造のそれぞれの責任者で、いずれも社長と同じ年。意思決定は社長一人に集中しているものの、“三位一体”、まさに三者が心を合わせて一つになって経営をされています。

2時間ほどの面談でしたが、「これで喧嘩にならないのが不思議」なくらい、お互いに「歯に衣着せぬ」物言いで、喧々諤々の意見が交わされるものの、最終的には一つの解に収束していく。そんな関係を作られていることがよくわかる時間でした。そして、これがこの会社の成長の理由であるのだと感じました。

その姿を見て私は、「代表者一人を指名するのではなく、皆さんそれぞれの職務における後継者を育成して、理念によって候補者の人格能力と結束力を高めつつ、みなさんのように合議制で経営できる体制をつくられてはいかがですか?」とお伝えしました。

もちろん、最終的には一人の意思決定権者に委ねなければならないこともあるでしょう。しかし、そのような内容は、実はそれほど多くはないものです。もし多いということであれば、それは、他の役員の責任意識の欠如であり、役員会の機能不全と思っておいてよいでしょう。

一方で、オーナー経営であったとしても、合議制を導入することは、とても価値あることだと思いますし、実現できれば、これほど心強いことはないでしょう。

しかし現実には、「何も決めることができない」経営者の責任放棄になってしまっていることが多いように思います。オーナー経営者が合議制を導入する場合は、その点に留意する必要があります。

閑話休題

最初の内は、合議制のイメージが湧かなかったようですが、更に喧々諤々の議論の結果、「やっぱりそれしかないね!」と、具体的に検討されることになりました。

その姿を見て、きっと素晴らしい合議制経営ができるに違いないと感じました。

特に、非同族企業における次代の経営陣の育成において、少しでも参考になれば幸いです。