No.679 後継
2023.10.30 Monday09:00
先日、社内昇格による事業承継の予定だった会社から、「白紙に戻った」との連絡をいただきました。
社長75歳、後継予定者48歳。それでも遅いこのケースで、どうして白紙に戻ってしまったのか。その理由は、「いつまで経っても譲る気がない」社長に嫌気がさして、後継予定者が独立することになったのだとか。
創業者である社長曰く、「もうちょっと社長として頑張りたい」とのこと。自分が創った会社への執着は、常識を超えるものがあるようです。
後継予定者が指名されたのは8年前。「40歳になるまでに独立したい」という彼を引き留めるため、という側面はあったようですが、「後を譲る気持ちに嘘はなかった」と言います。ただ、75歳を超えて「そのときはまだ決められない」のだとか。
そういう意味では、後継予定者もよく8年近く耐えられたと思います。
彼以外に身内にも社内にも後継候補者はおらず、この会社の出口は、外部招聘か、M&Aか、廃業の三択ということになります。
しかし、本人も自覚があるようですが、外部招聘しても、結局、今回と同じ理由で頓挫することは明白です。
また、これまで仲介会社から何度かアプローチを受けておられたようで、「最後はM&Aかな?」と言われるものの、まともな意思決定ができるうちに交渉の場につけるかどうか、甚だ疑問です。
残される10数名の社員の方々を思うとき、不憫でなりません。
私が最後にお会いしたのは、「やっとうちにも後継者ができました」と笑顔で語られた8年前。当時、既に67歳になっておられましたから、もうとっくに譲られているものと思っていたものですから、まさに“晴天の霹靂”の連絡でした。
皆さんの周りに、後継者がいるにも関わらず、65歳を過ぎてなお、事業承継の準備さえしておられないような会社はありませんか?あるようでしたら、ぜひその非を伝えてあげてください。
経営者の我欲・執着のために、後継者や社員さんを不幸にさせてはならないと思います。
みなさんもそのときになって同じ轍を踏まないよう、自らの出口を明確にしておかれることを、改めておすすめ致します。