No.773 理念

先日、当社が主催する経営者・後継者・経営幹部を対象とした『経営者大學』という研修の修了式にオブザーバー参加しました。

毎月1回、1泊2日、全12回の研修で、昭和62年に開講以来、今回で64期生となります。

修了式では、自ら「七人の侍」と名付けた7名の受講生それぞれが、15分間の持ち時間の中で、社員向けに話をする予行練習として、12か月間で作成した『戦略的中期経営計画書』を発表します。

受講生それぞれの個性が表れ、かつ来賓もおられる緊張した空間の中での発表は、私自身、毎回ワクワクさせられる、とても楽しみな時間です。

今回、指名により、ある方の発表に対するコメントをさせていただきました。

その方の話は、理念に対する思いが溢れ、かつその内容も素晴らしいものでしたが、残念な点が2つほどありました。

一つは、その理念を明確にしようと思った動機でした。それは「父や兄弟の会社では理念がない。そのためによい経営ができているとは思えない。だから私はまず理念を明確にしようと思った」という内容でした。

それは事実なのでしょうが、これを聴いた社員さんはどう思うでしょうか。

「ネガティブ」の「否定」は、確かにマイナス×マイナスでプラスにはなりますが、前向きには感じられません。特にすべての活動の源泉となる理念の動機がこのような消去法的プラスは、モチベーションを上げるに相応しいとは言えないでしょう。

理念に関わる動機や目的、主旨などについては、ぜひとも「ポジティブ」の「肯定」、即ちプラス×プラス発想で作成、浸透させていきたいものです。

また、この動機に関わるネガティブな話が、15分間中の4分強を占めていました。「どんな理想が聴けるだろうか」と期待に満ち溢れた社員さんが、この話をどんな思いで聴くのだろうかと思う時、少し寂しい気持ちになりました。

講師からも「ちょっと前のめりになるところがある」との人物評がありましたが、せっかくのモチベーションアップの機会であるにも関わらず、「社員さんが聴きたいこと」よりも「自分が話したいこと」が先行してしまったのでしょう。

気持ちはわからなくはなりませんが、経営者として、組織のトップとして、自らの言動の見直すべき点のひとつと言えると思います。

コメントでもこの2点の指摘をさせていただきましたが、理念の内容そのものはとても素晴らしいものでした。

ぜひその思いを、常に「ポジティブの肯定」と「話したいことより聴きたいこと」という視点で熱く語り続け、全社一丸となって理念経営を実現していっていただきたいと思います。